26.質問した意図
人に質問する時って、自分が知りたい事を教えてもらう時がほとんどだけど、そうでない時がある。
アルフォンスの態度はそれを雄弁に物語っていた。
「そういうアルフォンスの名前の意味は何なの?」
そう聞いた途端、アルフォンスは胸を張った。
どうやら同じ質問をして欲しいから、私達に質問をしたという事で間違いないようだ。
「俺の名前には高貴という意味があるんだ。納得の名前だろう?」
流し目をしつつ、ファサッと前髪を掻き上げる。
そんなアルフォンスもすごく可愛いけど、高貴かどうかと聞かれたらちょっと頷けない。
シンと静まり返った食卓に、オーギュストのため息がやけに大きく聞こえた。
「はぁ……、前にも言ったが、諸説ある内の一つだろう。どうしてお前はこう自己肯定感が強いんだ。悪い事ではないが、それが過ぎるとよくないぞ」
「しかし、それだけ自分に自信が持てるのは、ちょっと羨ましいぞ。常に人の目に晒されていると、どうしても色々言われているのが自分の耳にも入ってくるからな」
サミュエルがアルフォンスを眩しそうに見た。
「貴族って色々大変そうだなぁ。男爵家の次男でそんなのだったら、サキがお妃様になりたくないって言うのもわかるかも。オイラ達には関係ないからいいんだけどさ」
「ん、サミュエルはここにいる間だけはゆっくりすればいい」
「ユーゴ……、ありがとう」
どうやらハンバーグ作りを通して、三人に友情が生まれたらしい。
明らかに昨日までと比べて、態度が軟化している。
こうして食事会が終わり、変化がわかる出来事が更にあった。
その日までは世話係がいて一人でお風呂に入った事がないとサミュエルがいうので、私が身体を洗ってあげていたが、双子達と一緒にお風呂に入るようになった。
そうして次第に集落の狼獣人達とも仲良くなり、すっかりこの家にも馴染んだ頃、モヨリ―に滞在していた商人のおじいさんがやってきた。
「お久しぶりですな。おお、サミュエル様は以前より健康になられたようだ、随分ここの生活が楽しいようで何より。そろそろ移動する予定を立てなければなりませんから、少々お時間いただけますかな?」
「…………わかった」
きっとここを離れがたいのだろう、家に帰れば常に人の目があるって言ってたし。
双子達も弟ができたみたいに可愛がっていたから、サミュエルがいなくなったら寂しがるんだろうなぁ。
「夕方にはまた連れて来ますが、一旦サミュエル様を連れてモヨリ―に戻ります」
「わかりました。お気をつけて」
そうして見送り、夕方にサミュエルが戻ってきた時には、なぜか白い服を着た人達を大勢連れていた。




