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【俺様フェンリル】の飼い主になりました。異世界の命運は私は次第!?~悪を成敗!頭を垂れて我につくばえ~  作者: 酒本アズサ


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24.初めての料理

 色々話をしていたら、サミュエルは男爵家の次男だから家事が未経験だとわかった。

 そんな状態で森で保護者とはぐれただなんて、野垂れ死んでもおかしくない。



「というわけで、サミュエルのお料理体験~! はい、拍手~!」



 強制的に拍手を求めると、一緒に料理を作る双子とサミュエルがパラパラと拍手をしたので調理を開始する。

 サミュエルがこの家に来てから三日、体調も完全復活したので快気祝いを兼ねてごちそうを作る事にした。

 初心者も簡単に手伝えて、お肉大好き狼獣人達も満足する物……という事でハンバーグだ。



 今日は猩猩(オランウータン)獣人の二人も招待する事になっている。

 なお、オーギュストの奥さんは研究馬鹿な父子に愛想を尽かして数年前に出て行ったらしい。



「じゃあ、いっぱいおかわりできるように、ミンチを二キロ取り出します。多過ぎると練る時に大変だから、これを適当に三等分ボウルに分けて~、最初に塩を少々かけて練ります。ユーゴは最初見ててね、たぶんサミュエルが最初に疲れちゃうと思うから交代してあげて」



「わかった」



「そんな事はないっ! 私は交代なんてしなくて大丈夫だ!」



「お、やる気満々だねぇ~サミュエル」



 その気概(きがい)がいつまで続くか見ものだ、料理は結構体力勝負だからね。

 しかし、実際始めてみるとそれ以前の問題だった。



「あ、こぼれた……」



「リアム、台はちゃんと綺麗にしてあるから、台の上に落ちたのなら戻していいよ」



 リアムの混ぜるボウルからこぼれたミンチをヒョイヒョイとボウルに戻すユーゴ。



「戻すのか!?」



「はいはい、サミュエルはしっかり練ろうね。お肉の(かたまり)を作ってるだけで、全然練れてないよ。こうだよ、こう」



 手を開いてミンチを掴み、手の中からミンチがなくなるように手を握るのを繰り返す私。



「うう……肉が指の間を通る感触が気持ち悪いんだ……」



「手早くしないと手の温度で肉の脂が溶けてきちゃうよ。交代なんてしないんじゃなかった~? それともユーゴと交代する? あ、ユーゴ、今の内に塩胡椒とナツメグ皆のボウルに追加して」



「わかった」



「うぐぐ……、これしきの事……っ、問題無いっ」



 どうやらサミュエルはやり続けるらしい。



「ミンチに(ねば)りが出たら(ほぐ)した卵を入れまーす。ユーゴ、お願い」



 練り係の私達は手がベトベトなので、材料の追加はユーゴにお願いする。



「ほらほら、サミュエル、卵を入れて練ったら、次は牛乳にひたしたおからを入れて練って、少しのとろろ芋入れて練って、みじん切り玉ねぎ入れて練るんだからね。それでもひき肉が固いなら氷水を少しずつ足して練るんだよ」



「な……っ、そんなに何度も練るのか!?」



「美味しい料理には手間がかかるんです。手間をかけずに美味しい物が食べたいなら、素材をそのまま食べて美味しい物を準備するんだね」



「練るだけならオイラでも簡単にできるな! サキに教えてもらったら、オイラでも料理が作れるようになるかも!」



 やる気満々のリアムだが、さっきからユーゴにフォローされまくっている事に気付いてないようだ。

 だけどやる気を削ぐのも可哀想なので笑顔で誤魔化しておく。

 そうやって、どうにかこうにかハンバーグ種を作り終えた。



「じゃあ、今からハンバーグの形を作っていくね。ひとつ分のお肉を手に取ったら、形を作る前に左右の手でキャッチボールするみたいにして空気を抜かないと破裂しちゃうから絶対やるんだよ」



「「「キャッチボール?」」」



 あれ? そういえばこっちの世界でボールを見た事ないかも。



「えっと、投げた物を受け止める事をそういうの。こんな感じで……。ここからはユーゴも一緒にできるよ」



 ペチペチとリズミカルに空気抜きをするのを見て、三人は目を輝かせた。

 そして競うように空気抜きを始める。



「見て見て! サキ、オイラ上手でしょ!?」



「僕の方が上手」



「見よ! 私の方が早くて上手だぞ!」



 力いっぱい投げては受け止めるサミュエル。

 数回の(のち)、コントロールを失ったミンチの塊が着地したのは、玄関を開けた直後のマティスの顔だった。

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