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【俺様フェンリル】の飼い主になりました。異世界の命運は私は次第!?~悪を成敗!頭を垂れて我につくばえ~  作者: 酒本アズサ


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15/109

15.視察 [side サミュエル]

本来の12話が抜けていたので追加してあります。(9/19)

「ご報告いたします! モヨリーの町の方から、これまでにない魔力反応があったと魔塔の魔導師長より連絡がありました! 魔導師長(みずか)らモヨリ―へ向かうと準備を始めているそうです!」



 陛下(父上)の執務室で兄上と共に手伝いをしていると、宰相の部下が息を乱しながら報告した。

 報告を聞い陛下は、兄上と私を順番に見て、私で視線を止めた。



「第二王子サミュエル、そなたが魔導師長と共にモヨリ―へ向かうように。すぐに準備をせよ」



「はい」



 平静を装って返事をしたものの、心臓はバクバクとうるさく騒いでいる。

 子供の頃から教育係から聞いた伝説のフェンリルの存在、伝承の通りならば私達が生きている間に顕現(けんげん)するのではと教わった時は、好奇心と恐怖に襲われた。


 

 強大な力を持つフェンリルが(よこしま)な者達の手に渡る前に、我々が保護しなくてはならない。

 すでに結婚もしていて皇太子である兄上に何かあっては問題なため、その時が来れば私が行く事になるとは覚悟していたが……。



 侍従と侍女が手際よく荷物をまとめているのを横目に、私も持って行くべき私物を準備していると、魔導師長が姿を見せた。

 (よわい)百歳とも百五十歳とも噂されているが、確かに記憶する彼の姿はずっと老人だ。



「サミュエル様、習ったでしょうが、顕現したてのフェンリルは幼体のはずです。最初から知能は高いようですし、少しでもフェンリルの警戒を緩めるためにこの薬を飲んでいただきたい」



 そう言って差し出されたのは紫色の液体が入った小瓶だった。



「それは……?」



「これはひと月ほどの間十五歳若返る薬です。サミュエル様は今二十三歳ですから、八歳の姿になりますね」



 若返りの薬と聞いた瞬間、侍女達の目つきが変わったのは見なかった事にしよう。



「副作用とかないだろうな?」



「ほっほっほっ、大丈夫ですよ。あるとしたら一度使った者には効果がないというくらいです。今から飲んでいただいて、持って行く服のサイズを変更する事を提案しておきましょう」



「わかった。このまま飲み干せばよいのだな?」



 小瓶を受け取り飲み干す。

 とろりとした妙に甘い液体が喉を通ると、全身が熱くなって思わず小瓶を取り落とした。



「く……っ、本当に他に副作用はないんだろうな」



 そう言って小瓶を拾おうとした手と、自分が発した声が普段のものとは違った。

 侍女だけなく、幼い頃からの私付きの侍従までがキラキラした目で見ている。



「ほっほっほっ、そういえばこの頃のサミュエル様はこんなに愛らしい姿でしたなぁ。さぁて、目の保養をしたところで私も準備を急がねば。では失礼」



 魔導師長は老齢とは思えぬ足取りで部屋を出て行く。

 部屋の姿見を覗けば、そこには成長の遅かった八歳当時の私が映っていた。

 その後、侍女長を筆頭に喜々として幼少時の服が準備され、滞りなく準備がなされて翌日には出発となった。



 五日間ほどの移動でモヨリ―の町に到着した。

 今の私はお忍びの男爵家の次男という事になっている。



 こんな田舎に貴族が来る事自体珍しいせいか、緊張した面持ちの門番や衛兵が出迎えてくれたが、にわかに守衛所が騒がしくなった。

 どうやら通報があった事が原因らしい。

 守衛所の所長への挨拶が済むと、内密に情報を集めるために町を散策する事にした。



 離れて護衛している王家の影に、さっき衛兵が向かった場所を教えてもらって見に行く。

 途中で甘い香りのするカフェの前を通った。

 意外に美味しい店が多いのかもしれない、時間に余裕があるなら来てみよう。



 視線を前に戻すと、衛兵が路地へと入って行くのが見えた。

 先ほどまで衛兵と一緒にいたと(おぼ)しき数人の中に、フェンリルの眷属(けんぞく)と言われている狼獣人の姿もあった。



 声をかけるべきかと迷っていると、狼獣人共にいた少女が振り返る。

 一瞬目が合った気がしたが、すぐに少女は前を向いてそのまま歩いて行ってしまった。



 印象に残る切れ長の黒い瞳に、無意識に服の胸元を握りしめていた。

 妙に心臓が騒がしいのは、きっと少女の容姿が見慣れないものだったからに違いない。

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