12.報酬
私がこの世界に来て三か月近く過ぎた頃、私はアーサーを使役するテイマーとして冒険者ギルドに出入りしていた。
最初は周りの冒険者に笑われたり、マティスの獲物を分けてもらってるとか言われていたけど、森で討伐してくる獲物の数と質にいつしか誰も何も言わなくなった。
アーサーは自分で世界最強というだけあって、色々な魔法を駆使して森で魔物を仕留めている。
まぁ、あの短い足と小さい口じゃあ攻撃には向かないよね。
私もアーサーに教わりながら少しずつ魔法が使えるようになってきたし、新人冒険者としてなら一人でもやっていけるくらいには成長した。
最近は私の成長のために、あえて双子だけと行動する事が増えた。
今は馬車に黒猪を乗せてギルド前まではマティスがついてきてくれたけど、アーサーは家でお留守番をしてくれている。
さすがに黒猪を一人で運ぶ事はできないので、ギルドの前で双子と共に馬車を降り、ギルド内へ双子と力を合わせて運び込む。
「マティス、ありがとう。帰りは三人で帰れるから、先に帰ってていいよ。買い物をしたら夕食までには帰るから」
「わかった、大丈夫だとは思うが気を付けて帰ってこいよ」
「「「はーい」」」
恐らく二百キロはある黒猪を、双子はダイニングテーブルを運ぶかのように余裕な顔で運んでいる。
獣人だから膂力がすごいらしいけど、こうやって目の当たりにすると何度見ても驚いてしまう。
小柄な私達が大きな黒猪を運んでいても、他の冒険者達が驚かない程度には顔も売れてきた。
何人かは好意的になったが、それでもマティスがいないと不躾な視線を向けてくる人もいる。
もしかしたら受付をしてくれている美人なギルド職員と仲良くしているのが気に入らないというのも、原因のひとつなのかもしれない。
解体場へ運び込んでカウンターで報酬を受け取る。
「お待たせしました、ではこちらが報酬になります」
「ありがとうございます!」
黒猪のお肉は高値で取引されるらしく、受け取った報酬の重みに思わず頬が緩んだ。
この報酬でユーゴおすすめのお菓子を、アーサーとマティスへのお土産にしようと決めている。
ギルドを出て、三人で大通りから一本入った商店街を歩く。
大通りから外れると、結構道が複雑らしくて絶対離れないようにと言われている。
「確かに裏に入ると路地が複雑そうだねぇ」
「でしょ、道によっては袋小路になってたり、貧民街に繋がってたりするからね。あっ、ユーゴ、お菓子が美味しいのってあの店でしょ!?」
リアムが目的の店を見つけて走り出した。
「リアム待って」
ユーゴも本当は走りたいのか、少し早足になってリアムを追いかける。
二人共尻尾を振っているから喜んでいるのがバレバレだ。
微笑ましく思いながら歩く速度を上げようとした瞬間、大きな手が私の口を覆い、細い路地へと引き込まれた。




