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【俺様フェンリル】の飼い主になりました。異世界の命運は私は次第!?~悪を成敗!頭を垂れて我につくばえ~  作者: 酒本アズサ


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100/109

100.装備の価値

 昨日も来た応接室に入ると、ギルドマスターはギラギラした目で振り返った。



「ハァハァ……頼む……っ、その装備を! 見せてくれ!! できれば触りたい……、少しでいいんだ、手触りを確かめさせてくれ! はぁはぁ」



 完全にヤバい人と化しているギルドマスターに、マティスが私にアイコンタクトで許可を求めてきた。

 このままでは危険と判断したので頷くと、マティスは自分の防具とロングソードを外してテーブルの上に置く。



 次の瞬間には、先ほど見た瞬発力を見せてソファに座り、防具を手に撫で回すギルドマスター。

 何やらブツブツ言いながら、時々目に涙を浮かべているように見える。



「ギルドマスター?」



 いつまで続くんだろうかと不安になり声をかけると、満面の笑みで顔を上げた。



「おいおい、ワシとお前さん達の仲でギルドマスターだなんて呼び方、水くさいってもんだ! ジョセフって呼んでくれ! 話方も気楽にな!」



 そう言って自分を親指で差すギルドマスター。

 ワシとお前さん達の仲って……、どんな仲だというのだ。



「ギルドマスター」



「ジョセフ」



「ギル」「ジョセフ」



「…………ジョセフ」



「なんだ!? 何でも言ってくれ! ワシらの仲だからな!」



「そのマティスの装備、そろそろ返してもらっていい?」



 そう告げた瞬間、ジョセフはまるで一気におじいさんになったみたいに、目に見えてしおしおになってしまった。



「ヒィッ!?」



「そんな……、もう少し……もう少しだけこの神話級の防具を見せてくれ……、この通りだ……」



「神話級!?」



「なんだ、知らなかったのか? この防具の色、魔銀(ミスリル)だけじゃなく神の金属と言われる緋緋色金(ヒヒイロカネ)も使われてないと出ない色合いなんだ。ワシらドワーフの間でも、この合金を扱うのは至難の(わざ)というものだ。なんなら国宝になっていてもおかしくない代物(しろもの)だぞ」



 思ったよりすごかったぁぁぁぁ!!

 え? だって、まだ結構な数倉庫にあったよ!?



「あ、もしかして、あの妙に横幅は大きいのに短い防具って、ドワーフ用だったのかな?」



 倉庫の中を思い出し、ポロリと出た言葉にジョセフがピクリと動きを止めた。

 しまった、そう思った時にはもう遅く、三度目の見事な瞬発力を見る事になって壁際に追い詰められた。



「い、い、今言った事は……ハァ~、本当か……? ハァ~、ハァ~、そ、それがもし……ハァ~、譲ってもらえるなら……ハァ~……、全財産出す!! 王都の一等地にでかい屋敷が数件買えるくらいはあるぞ!! 頼む! この通りだ!!」



「キャー!!」



 興奮を抑えようとしてるみたいだけど、呼吸音が余計に怖い!

 最終的に足に抱き着かれて思わず悲鳴を上げた。



『やはりドワーフはドワーフだな、そやつなら与えても問題はあるまい。だが、出所だけは内密にするように約束させるのを忘れぬようにな。でないと他のドワーフが押し寄せてくるかもしれんぞ』



「う、うん。でもジョセフが着れるサイズかはわからないよ? それでもよければ依頼が終わってから」「本当か! 着られれば最高だが、着れなくてもいい! 依頼が終わってからだな!? 引き止めて悪かった、気を付けて行ってこいよ!」



 追い出すように応接室を出された私達だったが、部屋を出た時には常設依頼以外はいい依頼が残っていなかった。

 おのれジョセフ……!

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