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665話 『限界が生む絶望』

 破壊した無人島の残骸が少し遅れて落水していく。残骸が全て海に落ちるのを確認したジルジオンは全身の力が抜けたのか、ゆっくりと地面に落下する。同時に‶ダイハードの邪神力〟も消え去っていく。


「ハァ……ハァ……やったのか?」


 ジルジオンは邪神力の使い過ぎでかなり呼吸が乱れており、思わず膝に手を突く。


「へへっ! 悪いな颯太ぁ……どうやら俺が倒しちまったようだ」


 ジルジオンは頭上を見上げ清々しい笑顔を見せて歓喜する。喜ぶのも当然と言ったら当然だろう。世界最強の魔獣を討伐できたのだから。


 ただ、討伐されたという決定的な証拠は見つかっていない。


 ズゥゥゥゥーーーーーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼‼


 遠方の海面から凄まじい邪神力のオーラが解き放たれる。そのオーラが海水を一切寄せ付けず、海面に巨大な空洞が出来上がる。


「な……なんだあの邪神力は!?」


 ジルジオンはその海面の空洞が徐々に近づいてくるのに背筋が凍る。


「傷をつけただけでも、大したものだ」


 空洞の中から聞こえる悍ましい声に一瞬気を取られたその瞬間、海岸まで海面に通り道が切り開かれ、その強風にジルジオンの白髪が後ろに逆立つ。そして……


 ズドォォォォォーーーーーーン‼‼‼‼‼‼


 高速で接近してきた龍人の膝蹴りがジルジオンの腹部に直撃し、体が後ろへ引っ張られる。そのとき、その龍人の額の鱗が抉られていることに気が付く。


 バキバキバキバキバキーーーーーーー‼‼‼‼‼‼‼


 何十、何百本も木々を薙ぎ倒しながら吹き飛ばされ、岩壁にめり込むことでやっと勢いが収まる。


 何十キロ吹っ飛ばされたのだろうか。数えきれないくらいだろうか。


 そんな距離まで飛ばされたジルジオンに龍人は一瞬で追いつく。


「そ、そいつが高速で移動できる形態なのか?」


「そうだ。だから通常形態の俺の速度に匹敵する程度でいい気になっていたお前の顔は笑いもんだったぜ」


 人の姿をしたジャグバドスは焦るジルジオンの顔を見て鼻で笑う。ジルジオンはそんなジャグバドスの顔が頭にきたのか、力づくで岩壁を粉砕して脱出し、手のひらから漆黒の光線を撃ち放つ。


 ジャグバドスはその光線を予備動作もなく簡単にかわされる。ジルジオンはその後も‶漆黒の魔獣砲〟を連射するのだが、全てジャグバドスの体にかすりもしなかった。


「ハハッ! どうした? よけてばっかだなぁ! そんなに俺の‶魔獣砲〟くらうのが怖いんかぁ?」


 ‶魔獣砲〟をかわしてばかりいるジャグバドスをジルジオンは強気になって煽る。その言葉にムキになったのか、ジャグバドスは元の位置に戻り、一歩も動かなくなった。


「挑発に乗ったのか? 馬鹿めぇ! なら遠慮なく打たせてもらうぜ!」


 ジルジオンは無抵抗のジャグバドスに本気の‶魔獣砲〟を撃つ。


 ズドォォォォォーーーーーーン‼‼‼‼‼‼


 ‶ダイハードの邪神力〟はなくなれど、凄まじい威力だ。こんな攻撃耐えられる人間が果たしているのかというレベルだろう。


 しかしジャグバドスは耐える。‶魔獣王〟に常識など通じはしない。


「この俺の鱗の質量は変わらない。つまり体が人間サイズまで縮まったことによって鱗の密度は最大限まで高まる。だからお前がいくらやみくもに攻撃しようと、俺の鱗に傷はつきやしない」


 ジャグバドスは‶魔獣砲〟を受け続けながら冷静に説明し、徐々に近づいていく。ジルジオンはさらに出力を上げるも、ジャグバドスの歩く足は止まらない。


 そして目の前まで接近すると、焦ったジルジオンは黒刀に邪神力をまとい、やけくそになって斬りかかる。


「ウオォォォォ‼‼‼‼ ‶黒嵐太刀(こくらんたち)〟‼‼‼‼」


 ジルジオンは漆黒の旋風を斬撃に変えてジャグバドスに斬りつける。


 ズバァァァァァァーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼‼


 凄まじい斬撃が大地に深い切込みを加える。しかし……


「やはり白くないお前なんか相手にするだけ時間の無駄だな」


 至近距離にいたのにもかかわらず、黒風の斬撃を素手で受け止めたジャグバドスはもう片方の手でジルジオンの腹部に手を添える。


「お返しだ」


 ズドォォォォォーーーーーーン‼‼‼‼‼‼


 自分の何倍も威力がある‶漆黒の魔獣砲〟を受け、ジルジオンは口から煙を吐きながら宙に舞う。

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