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646話 『反撃のチャンス』

「でも一体どうすればいい? 仮に奴に飛び乗ることができてもあの巨体で激しく体を捻って来られたら、取り返しのつかないところまでぶっ飛ばされてしまうぞ」


 トムはジャグバドスの巨体に直面し、頭を悩ませる。するとその話を聞いていたソースイウルフが雀臨の背中から飛び降りる。


「ジャグバドスに掴める取っ手のようなものが欲しいんだな」


 ソースイウルフはそう言うと、地上で神力の出力を最大限にまで引き上げる。すると彼の背中の体毛が勢いよく逆立ち、その毛一本一本に凄まじい神力が集中していく。


「奴の鱗が今までより脆弱なら俺のこの一撃が通るかもしれねぇ!」


 ソースイウルフの逆立った毛先がさらに伸び、そしてさらに鋭く尖る。


「‶狼毛軍力(ウル・フォース)〟‼‼‼‼‼」


 ズドドドドドドォォォォーーーーーーーン‼‼‼‼‼‼


 数百万本もの体毛が数十発ずつ連続で発射され、上空の彼方まで打ち上げられる。やがて上空に打ち上げられた体毛は赤い光を放ちながら槍のように鋭い針となって地面に降ってくる。その体毛でできた針は岩石なんぞ容易く粉砕し、上空を舞うジャグバドスの鱗にキレイに突き刺さっていく。


「っ!? 一体何が?」


 ジャグバドスにとっては雨にでも打たれたような感覚程度であるため、自分の身に何が起こったのか理解できていなかった。


「すごい、あのジャグバドスの鱗に毛が突き刺さってる! あんなの地上に振らされていたらどんな軍隊でも一瞬で全滅だ!」


 リーナは降り注ぐ針の雨を見ながら驚愕する。それもそうだ。たった1本の毛針で岩石を砕くほどの脅威を持っているから、それが数百万本もあれば、逃げ場なんぞどこにもありはしない。


「チィィー! 小賢しいやつめぇ!」


 ジャグバドスは体をくねらせながら少しずつ刺さった毛を抜こうとするのだが、


「止めとくんだな! 俺の毛はあんたの体に無数に突き刺さってる。そんなことに時間を割いてたらこいつらが容赦なくお前に攻撃してくるぞ!」


 ソースイウルフは不敵な笑みを浮かべながら長い爪でジャグバドスを指す。するとジャグバドスよりも高いところからリーナたちが飛び降りてくる。そして巨龍の背に乗ると、突き刺さったソースイウルフの毛を手すり代わりにしてしがみつく。


「こいつらだと? まとめて吹き飛ばしてやる! っておい! どこへ消えやがった?」


 ジャグバドスは慌てて辺りを見回すのだが、そこにはリーナたちの姿はなかった。


「今更焦ってももう遅い!」


 リーナはそう叫びながら‶魔導神装〟をし、(いかずち)をまとったサーベルでジャグバドスの龍鱗を切り裂いていく。


「集団で狩りをする動物の共通点は獲物にまとわりついて身動きを取らないようにすること。こうやって弱者と強者がバランスを保って自然ができてるんだ!」


 フリックは蟻を例えに使って説明すると、光の手裏剣を大量に生成する。


 ズドドドドドドォォォーーーーーン‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎


 激しい爆発と共に、光の手裏剣が炸裂し、龍鱗に少し傷が入る。


(脆弱になったとはいえ、この硬さか……)


 フリックはあまりの力なさに少し気落ちしていると、


「一撃で壊れるほど甘くはないさ! 体力が続く限り撃ち続けろ!」


「ふん! 青二才が偉そうなこと言うんじゃない!」


 敦に煽られたことで少しムキになったフリックは続け様に光弾を連射する。


(まぁ、かと言う俺もそんなに大したダメージは与えられてはいねぇんだけどな)


 敦は破れたグローブを見つめると、再びひたすら巨大な鱗を殴り続ける。

 鱗には拳の跡をはっきりとつけられるのだが、これ以上破壊することはできなかった。


「力の差か……俺はいつもいつも見せつけられてきたよ! あいつによぉ!」


 敦は自分の横を通り過ぎていく颯太を横目で見る。颯太は自身での高速飛行が可能であり、風の斬撃を連続で放つことによってジャグバドスの鱗を勢い良く削っていく。


「だがだからと言ってあいつを化け物と一括りにするわけにはいかねぇ! あいつを一人にさせた結果が今回の事件のきっかけなんだ! 誰か一人でもいい、あいつの隣に立つやつが必ず……いなきゃいけねぇんだ!」


 敦はそう熱く叫びながら炎をまとった素手で鱗をどんどんと殴り壊していく。拳の皮膚がボロボロに破れていくのも覚悟のうえで。


「敦……」


 颯太が思わず敦の方へ顔を向けると、そこにリーナが割って入って来た。


「敦ばっかりにいい恰好はさせられないな! 颯太の横に並び立つのはこの私だ! いやむしろ私が追い抜いてやる!」


 リーナはそう宣言すると、神力をまとったサーベルで勢いよく鱗に突き刺す。そして、


「‶最強の雷撃(トップサンダーボルト)〟‼‼‼‼」


 バキバキバキーーーーーーーー‼‼‼‼‼‼‼‼


 サーベルから放たれる雷撃のショックによってジャグバドスの鱗が一枚木端微塵に砕け散っていく。


「何ィ!?」


 これにはさすがのジャグバドスも驚愕する。そして初めて露わとなった‶魔獣王〟の生身にリーナは容赦なくサーベルを突き刺す。


「これで終わりだ! ‶雷神の衝動(トール・ギガショック)〟‼‼‼‼」


 ドォォォォォォォォォーーーーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼


 ‶魔獣界〟全体に大太鼓を叩いたような爆音が響き渡る。音だけでも一部の雑魚魔獣は失神するほどだ。


 サーベルから流れる(いかずち)の衝撃波は雷速で全身に伝わり、数十キロメートルもあるジャグバドスの巨体を感電させる。


「アガガガァァァーーーーー‼‼‼‼‼」


 しかしジャグバドスは白目をむくことはなく、長いひげでリーナを完全に拘束する。


「確かに今の攻撃は幹部連中を発狂させるほどに強力だ! だがはっきりと言ってやろう。俺はこの姿になれば大抵の攻撃はかすり傷にすらなりやしねぇ。鱗が脆弱になる代わりに俺自身の耐久力は底上げされるんだからよぉ!」


 ジャグバドスは高笑いしながら口を大きく開く。するとその喉元から漆黒の炎がメラメラと燃え滾り、口の中から溢れ出そうとする。


「そして俺の攻撃も巨体に比例し、より一層強くなる!」


 ジャグバドスは大量に空気を吸い込んで漆黒の炎をさらに巨大化させる。


「見せてやろう! これが世界を焼き払う‶魔龍咆哮(ジャグブレス)〟だ‼‼‼‼」


「くっ! 体が……動かない!」


 リーナは力の限り抵抗しようとするのだが、龍の髭はむしろきつく締め上げるばかりだった。


 ボォォォォォォォーーーーーーーーーーー‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼


 ジャグバドスの巨大な口から至近距離で漆黒の火炎が勢いよく放たれる。

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