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637話 『無限に蘇る魔獣』

「……行っちゃったわね」


 ロゼは先程までの恐怖が嘘のように晴れ上がってしまったことに呆然としていた。


「僕たちの勝ちと言われてもどうも素直に喜べないよね」


「ああ、肝心の‶第一幹部〟と‶魔獣王〟を倒せていないからな」


 トムと敦はそう話をしながら辺り一帯に散らばっている‶魔獣軍〟の残骸を見渡す。するとその魔獣たちの死体を一つ残らず地面から伸びてきた巨大な根がからめとり、地面に持ち帰っていく。恐らく‶万物の世界樹(ユグドラシル)〟が自身の養分にするために回収したのだろう。


「これが‶魔獣界〟の自然の摂理ってやつか……」


 敦は頭を掻きながらこの世界の過酷さを改めて痛感する。


「それよりも静香たちは無事に帰って来られるのか?」


 リーナは‶魔龍城〟へ潜入していった静香たちの無事を祈る。




 ――その頃、‶最果ての魔龍城〟では、‶魔獣軍〟の幹部と侵入者による壮絶な戦いが繰り広げられていた。

 最上階では‶剣豪・スラッシュバイツ〟が‶第二幹部〟のドログリフィンとスカルヴィカウントと、その下の階では‶第一幹部〟のレオパルドと‶ゴールドランク冒険者〟のヘーボンが交戦していた。


「全く参っちまうな~。斬っても斬ってもドロドロと再生しやがって!」


「仕方があるまい、俺の体は溶鉄でできてんだからよぉ!」


 ドロドロの金属の体を持つグリフォン、ドログリフィンはポタポタ爪先から溶鉄を垂らしながら高笑いする。そしてその後ろでは斬られた骨を接合するスカルヴィカウントがいた。


「ガァーーーー‼‼‼‼ クソほどイライラするぜ! 君たちの気色悪い体にはよぉ!」


 スラッシュバイツは何度斬られてもすぐに修復してしまうドログリフィンとスカルヴィカウントにしびれを切らして発狂する。しかし当の本人は敵の反撃を一発も貰うこともなくかれこれ丸一日戦い続けていた。


「真っ二つにしたり、千切りにしたりといろいろ試してきたが、ドログリフィンに関しては一ミリもダメージが入ってないようだな……やはりどこかに核みたいなのがあるのか?」

 スラッシュバイツは宝物庫から取り返した愛刀‶天刹那(あませつな)〟の刀身を触りながらドログリフィンの体の構造を分析する。


「体の核なら俺にもついてるが何故俺のには攻撃をしない?」


 スカルヴィカウントは分かりやすく額に指を当てて挑発するのだが、スラッシュバイツはその額に見向きもしない。


(スカルヴィカウントは何日か前にあの核を破壊して確実に殺したつもりだったが、何故か各段に実力を上げて戻ってきやがった。恐らくあの核を壊したら進化して再生してくるのかもしれねぇようだな)


 スラッシュバイツはスカルヴィカウントの戦力をデバイスで確認する。その画面に表示されていた数値は390万。スカルバロンのときよりも30万も数字が上昇していた。


「とにかく最初にあのグリフォンをぶちのめす方が得策のようだな! 奴の体に必ず角はあるはずだ!」


 スラッシュバイツはそう言いドログリフィンの心臓部に剣を向け、力強く突く。


「‶突神(とっしん)〟‼‼‼‼」


「突きを飛ばしただと!?」


 ドログリフィンはスラッシュバイツの突きによって生じた衝撃波がクロスボウのように勢いよく自身のところまで突き進んできたことに驚愕する。そして……


 ズキューーーーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼‼‼


 突きの衝撃波はドログリフィンの心臓部を貫き‶魔獣界〟の彼方へと消え失せる。そこに急所があったのか、ドログリフィンはピクリとも動かず地面に落下していく。しかし、


「チッ! やっぱそこが弱点ってわけでもなかったか?」


 スラッシュバイツは魔力が一切減っていないことに舌打ちをする。彼の言った通り、ドログリフィンにはダメージは一切入っておらず、風穴があいた胸部も液体の体と共に塞がっていく。


「まさか心臓を全身何処にでも動かすことができるとか言わねぇよな!」


 スラッシュバイツは疑いの目を持ちながら何度も附きの衝撃波を撃ち続ける。しかし腕、足、翼、頭とそれらしき部位に穴をあけ続けたが急所らしきものは一切見当たらなかった。


「弱点の無い生物なんて存在しない! 必ずどこかにあるはずだ!」


「懲りないねぇ……後ろに最強の骸骨がいることも忘れて……」


「っ!?」


 ズドォォォォォーーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼‼


 スラッシュバイツは背後から襲い掛かる斬撃に気付くのが遅れ、肩にかすり傷を負う。


「チッ! 何しやがる!」


 スラッシュバイツは即座に反撃の一振りでスカルヴィカウントの首を刎ねる。


「やめてくれよ~ドログリフィン。せっかくいいチャンスだったのにさぁ~」


「別にいいじゃねぇか! どうせ長期戦になれば勝機は俺たちの方に回るんだからよぉ!」


 頭蓋骨を落とされたスカルヴィカウントは頭上のドログリフィンに文句を言い、ドログリフィンは笑って流す。両者共にもかなり余裕なのだろう。

 スラッシュバイツはそんな2体の魔獣に‶剣豪〟としてのプライドを踏みにじったことに怒りが爆発し、


「いいぜ、そこまで時間稼ぎがしてぇんなら命がけで稼いでみやがれぇ!」


 スラッシュバイツはそう叫ぶと全身から溢れんばかりの神力を解き放つ。


「‶鋼筋武装〟・‶超神武装〟・神剣武装〟」


 スラッシュバイツは持てる武装魔法を全て発動させ、自身の筋力と武器を最大限まで強化させる。


「眼で追えるなら追ってみろ! 俺の神速の斬撃を!」


 そしてスラッシュバイツは超強化された‶天刹那(あませつな)〟を抜き、


「‶五月雨(さみだれ)無限裂(むげんれつ)〟‼‼‼‼」


 ……ヒュン‼‼‼‼‼‼‼


 風が吹くように一振りの音が静かに聞こえ、スラッシュバイツは静かに剣を収める。すると彼のいる空間上には、斬撃が通ったと思われる太刀筋が何千本もつけられており、彼のいる部屋ごと2体の魔獣を木端微塵に斬り裂いてしまった。


「ハァ……ハァ……そう言えば下の階でデカい神力がぶつかってたな! おそらく一つはあの冒険者の小僧だろう。加勢に行かねぇとな!」


 スラッシュバイツはそう言って崩れた床から下の階へ降りようとしたその時……


 ガチャガチャガチャ………


 彼の背後から崩れた欠片が自動でつなぎ合わさっていく音が聞こえる。そして完成しきった骸骨の目穴から紅い光が輝く。


「しまった……うっかり核まで壊しちまったか……」


「そうだ……そのおかげで俺はまたさらに進化することができた。名前はスカルアール。戦力はさらに30万上昇して420万!」


 進化した骸骨剣士はそう言いさらに鋭く光る剣を抜いて構える。


「確かアールってのは伯爵って意味だったよな? その前が子爵(ヴィカウント)男爵(バロン)と来てたから少なくとも……」


「その通り! この骸骨は後2回殺しても進化して復活するこの意味が分かるよな?」


 バラバラに切り裂かれた金属からドログリフィンの声が聞こえる。するとその金属は熱でドロドロに溶け始め、その液体金属が集合して再びドログリフィンの体を作り直す。


「何だよ、君まで復活しやがったのか……めんどくせぇなぁ……」


「根を上げたか? まぁ無理もない。なんせ敵を切ることしかできないお前とは相性最悪の敵なんだからなぁ~!」


「だが俺は君たちから一撃も攻撃を貰ってなんかないぜ! 相性は最悪だが、力の差は歴然だとは思わねぇか?」


 ドログリフィンの挑発にスラッシュバイツも対抗して挑発をし返すのだが、実際のところはどう打開するのか答えが見つかっていない。


「お前はどうしても早い段階で俺達を倒さなければならない。それは長期戦になればお前が不利になるのもそうだが……」


 スカルアールはそう言い剣でスラッシュバイツの後方を指し示す。

 スラッシュバイツはその指し示された方へと顔を向けると、そこの空間に亀裂が入っていることに驚愕する。


 パキ……パキ……バキバキバキーーーーー‼‼‼‼‼‼‼


 空間上の亀裂から真っ黒な龍の手が現れ、空間というガラスの壁を勢いよく引き裂いていく。


 そしてスラッシュバイツの目の前に10メートルサイズの人型の黒龍が姿を見せる。


「長期戦になればいずれ、このお方が帰ってくるからだ!」


「ま、魔獣王……ジャグバドス!」


「随分と城が壊れているなぁ? これもすべてお前のせいなのか?」


 ジャグバドスはそう問いながら邪神力で威圧する。

 そのときスラッシュバイツには何十倍もの重力がかかったようなプレッシャーを受けるのだった。

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