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612話 『不運が招く災害』

 ――‶魔獣界・中央の大地〟ではとある儀式の準備が着々と進んでいた。


 この大地にそびえたつ一本の大樹、‶万物の世界樹(ユグドラシル)〟に大勢の魔獣が集まっており、魔力で光るガラス球を枝にくくりつけており、その様子を2体の‶王格の魔獣(ロイヤルビースト)〟が見守る。


「この儀式が成功すればどうなると思う? 御鬼(ゲキ)よ……」


「‶魔獣王(バドス)〟の話を聞いてなかったのか? この儀式が成功すればあの大樹から生成される‶獣種(ビーシス)〟の数が爆発的に増加して、さらに‶王格の魔獣(ロイヤルビースト)〟誕生の確立も上がるって言ってただろうが!」


 真剣な顔で聞いてきたアシュラSコングに御鬼は、「何回も話したぞ」と言いたげな呆れた顔を見せる。


「だが実際どうなるかはやってみなきゃ分かんねぇんだがよ。とにかくこの儀式を成功させることだけ考えてろ」


「俺は手を貸してやってる側だ! 偉そうに言うなよ!」


「俺はお前よりも何千年も長く‶魔獣軍(ここ)〟に所属してる! 偉そうにしてて悪いか?」


「その話何回も聞いたがどうも怪しいんだよな~?」


「何故そう思う?」


「なんとなくだ」


「ハァ~……聞いた俺がバカだったようだ」


 アシュラSコングはその煽るような返しが頭にきて、3つの額から血管が浮かび上がる。


 そんな2体の魔獣のやり取りを遠くから、魔力も姿も匂いも隠して眺める者たちがいた。


『あ、あれが‶第一幹部〟のアシュラSコングと御鬼(ゲキ)ですか?』


『……みたいだな』


 聴覚の優れた魔獣ですら聞き取れないほどの小さな声でロゼとフリックが会話する。しかし隣にいたリーナはこの声が聞かれてないか不安な表情をする。


『あまり余計な話はしない方がいいぞ。奴らの耳のつくりはどうなってるか分からんからな』


『いくら私の‶隠蔽(いんぺい)〟で姿や魔力、匂いを隠せていますけど、声だけはどうにもできないんです』


 ウサギ耳の少女は体を震わせながら魔力を放出している。どうやら彼女の‶無属性〟の能力によってリーナたちは‶万物の世界樹(ユグドラシル)〟まで接近できているようだ。しかしいくらフリックの修行で奇才者の力を覚醒できたとしても大勢の人たちを隠すのには限りがあるため、かなり体力を消耗していた。


『とにかく手筈通り、あの2体の近くにある‶封印棺(ふういんかん)〟を奪い取るために僕とリーナ、ミリファで奴らに特攻する。その間に君が封印棺を奪還するんだ』


 フリックに肩を叩かれてウサギ耳の少女は余計に緊張する。

 しかしフリックはその緊張した顔にそそられ頬を赤くする。


((……変態教師))


 リーナとロゼはそんなダメ教師に汚物を見るような視線を送る。


『……ゴホン。そろそろ始めるぞ』


 我に返ったフリックは咳払いして落ち着かせ、リーナとミリファに合図を送る。そして彼女たちが動き出そうとしたその時……


『あれは……何!?』


 ロゼは頭上から何か降ってくる物体に気付き、その方向に指をさす。


『こちらに落ちて来るぞ! 逃げろ……!』


 族長は慌ててそう叫び、全員をその場から離れさせる。


 ズドォォォォォーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼


 隕石でも落ちて来たかのような激しい爆発音に、遠くに立っていた‶第一幹部〟が反応する。


「何事だ!」


 御鬼は表情を一切変えずにその現場に近づいていく。するとそこには大きなクレーターが出来上がっており、その中心で大熊が仰向けになって伸びていた。


「ブリズリー!? こんなところで何してる? ……いや、それ以外にもいるな?」


 御鬼は自分の部下の心配を後回しにして突然現れた複数の魔力を感じ取る。


『マズイ! 私達の存在に気付かれた!』


 リーナは声を押さえながら焦る。ロゼもその場から離れようと脚を動かすが、その数ミリの魔力の移動で御鬼は視線を向ける。


(なんてついてないんだ! こんなピンポイントに魔獣が降ってくるなんて!)


「フッ、ここにネズミ共がうろついてたとはな、だったらこの場にいる奴らを全員消し飛ばしてやるまでだ!」


 御鬼はそう言い、全身に魔力をコーティングさせる。


「爆ぜろ! ‶鬼爆(きばく)〟‼‼‼‼」


 御鬼の体が光出そうとしたその時、炎の肉球が御鬼の顔面に直撃する。


「‶紅蓮パッド〟‼‼‼‼」


 何と御鬼の目の前に現れたのは‶ケモビト族〟の族長であり、炎の肉球から放たれる衝撃波で御鬼の体を遠くへずらすことに成功する。


 ズドォォォォォーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼


 御鬼は踏みとどまろうとした瞬間に‶鬼爆〟が発動し、大爆発が広がる。

 幸い、族長の活躍のおかげでリーナたちは 爆発に巻き込まれることなく散り散りに移動することができた。しかし……


「か……体が、全く……動かない!?」


 族長はその場から一歩たりとも足を動かすことができず、爆発の煙から現れる御鬼に顔を青ざめる。


「鬼ごっこで鬼の前に姿を見せるのは死を意味する。こんな風にな」


 ゴキィィィィーーーーーー‼‼‼‼‼‼‼


 御鬼の右フックが族長の体内のあらゆるものを破壊するような音を鳴らす。

 リーナたちはその音を聞いて衝撃を受ける。

 しかし族長は殴られたのにもかかわらず、吹き飛ばされるどころか体が後ろに寄れることもなく、微動だにしていない。


 そして御鬼がぱちんと指を鳴らすと族長にかけられていた能力が解除され、崩れ落ちるように倒れる。そのとき彼は時間差で大量に吐血し、殴られた腹部が勢い良く陥没した。


「今のが2割ってところだ。死にたくなければすぐにここを立ち去るんだな」


 返り血を浴びた御鬼はバラバラに離れたリーナたちに警告する。その後ろではアシュラSコングが剣を6本持って刃をベロリと舐める。


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