595話 『馬鹿と天才は紙一重』
「よかったぜ! ‶魔導神装〟すればちゃんとお前に攻撃が効くってことが分かってよぉ!」
颯太は手を開いたり閉じたりしながら殴った時の感触を思い出す。
ブリズリーは一撃を与えられたことがそんなにうれしいのかと言わんばかりに雄叫びを上げながら‶魔獣砲〟を噴射させて突進する。しかし、颯太はその攻撃を素手で受け止めると、今度は懐に潜り込んで両拳に旋風をまとわせる。
「‶疾風螺旋乱舞〟‼‼‼‼」
ズドドドドドドドドドドド‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼
目にも止まらぬ速度の連打でブリズリーの腹部を殴り続け、ブリズリーはその勢いに押されて上昇気流にでも乗ったように上へと打ち上げられた。
そして打ち上げたブリズリーを追うように颯太は黒翼を広げて空を舞い、宙に浮く巨体に強烈な蹴りをお見舞いする。
「こんなのでよかったか、敦? ‶炎天暴流脚〟は……」
颯太は左足から放たれる緑炎を消すと、黒翼を固定して吹き飛ばされたブリズリーのところへ滑空する。
GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼
ブリズリーの怒りの雄叫びがフロア全体に響き、口からワインレッドの閃光が放たれる。
「マジか!? そんなノーモーションで強力な‶魔獣砲〟を!?」
颯太は目の前に広がる紅の光に驚き、慌てて漆黒の閃光を生成して迎撃する。
ズドォォォォォーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼
しかし颯太の‶魔獣砲〟はブリズリーの‶魔獣砲〟に押し負け、颯太はすぐさま自分の立ち位置を離れてワインレッドの閃光の直撃を免れる。
GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼
どうやらブリズリーは喋れないだけであって実際のところは知能が高かったようだ。颯太が回避することが分かっていたのか、ブリズリーは颯太の離れた方向に先回りして鉤爪での攻撃をする。
「コナクソォ!」
颯太は気合でブリズリーの攻撃を‶風流し〟で受け流すも、あまりの破壊力により、風圧で地面に叩きつけられる。そしてフロアの隅まで追い込まれると、ブリズリーは好機と思ったのか、両腕両爪に神力を送り込んで‶魔獣砲〟のジェット噴射で接近する。
「待て待て! お前俺の‶超神武装〟真似してんじゃねぇよ!」
颯太が肉弾戦でブリズリーにダメージを与えられていたのは‶超神武装〟があったというのもある。しかしブリズリーにそれを見せすぎたため、なんとブリズリーはその武装魔法を学習してしまったのだ。
「こうなってしまえば体力温存とか呑気な事言ってられねぇなぁ!」
颯太はそう言い、腰から2本の刀を抜く。
「‶神風裂破〟‼‼‼‼」
颯太は一方の刀からは巨大な斬撃を、そしてもう一方の刀からは凄まじい突風を放ち、その二つが合わさった時、巨大な斬撃は無数の細かい斬撃となり、突風に乗せて加速していく。
GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼
ブリズリーはただ叫びながら鉤爪で全ての斬撃を切り裂いていく。
「おいおい、マジかよ……」
颯太はあまりにも規格外の強さに驚きを通り越して呆れていた。しかし突風の影響もあり、無数の斬撃を捌き切れなかったこともあったからか、徐々にブリズリーの速度は減少していく。
「だが戦いにおいてのIQは俺の方が少し上だったようだな、熊公!」
颯太は2本の刀それぞれに旋風と雷をまとわせると、黒翼を広げてブリズリーに迎え撃つ。そして2本の刀を十字型に交差させて怪物の腹部に突っ込んで行く。
「ウォォォォーーーー‼‼‼‼ ‶疾風迅雷・十字覇衝剣〟」
ズドォォォォォォォォォォーーーーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼
爆風と雷鳴が広がり、あたり一帯の瓦礫が浮かび上がる。そしてブリズリーは弾丸の如く吹っ飛ばされ、4階の端の壁に巨体をめり込ませる。しかしまだ叫ぶ気力があるのか、反対側まで吹き飛ばしたはずなのにその方向だけは耳に届く。
「お前をこの城にいさせるのは危険すぎる! 悪いがここで退場してもらうか!」
颯太はそう不敵な笑みを浮かべると、砕け散った剣を投げ捨て、右手に邪神力を最大限まで送り込む。
そしてその手の周りを激しい漆黒の旋風が吹き荒れ、その手を構えて両足に力を込める。黒翼は元の羽織に変化したが、颯太は脚力だけで空を飛ぶ。
しかし翼がない分、一直線にしか飛ぶことができないため、颯太はこの一撃にすべてを懸ける。
瞬く間に反対の壁まで飛んでいくと、颯太は旋風が激しく吹き荒れる左手を引き、
「これで終わりだぁ‼‼‼‼ ‶波動旋風〟‼‼‼‼‼」
ズドォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼
十字型に切り裂かれた腹部を狙って旋風の衝撃波を打ち込む。その威力は凄まじく、先ほどつけられた切り傷がグチャグチャに広がり、ブリズリーは大量の血を吐き出す。
GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼
そして壁は風圧に押し負けるとその装甲は砕け散り、外の景色が露わとなる。ブリズリーはそのまま風圧に押されながら空の彼方へと吹き飛ばされて行く。
颯太は邪神力を使い切ったからなのか、強制的に‶魔導神装〟が解除されて地面に膝をつく。




