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577話 『陰湿な手段』

「‶魔導神装〟だと? そんな力も隠してやがったのか?」


「下っ端には情報が行き届いてねぇんだな。だったら好都合だ」


「誰が下っ端だと? 口を慎みやがれ!」


 ケルベロスは自分の地位に誇りを持っているのか、‶第三幹部〟を侮辱した颯太に怒りを覚える。


「その通りだ馬鹿野郎! この方は‶魔獣軍・地獄部隊〟を従える‶第三幹部〟のケルベロス様だ! お前はこの方の偉大さにひれ伏すことになるだろう!」


 ケルベロスの背後から現れた‶幹部補佐〟の魔獣はタブレット端末のようなものに映像を映し出して颯太に見せつける。

 そこにはケルベロスの情報が書かれていた。


 魔獣名:ケルベロス

 説明 :‶王格の魔獣(ロイヤルビースト)

 ‶魔獣軍・地獄部隊〟所属の‶第三幹部〟

 強靭な爪や牙を持ち、性格の違う3つの頭を持つ犬型の魔獣。しかし強靭な爪や牙を持っていながらそれを実戦で使うことはほとんどんなく、無数に生成できる頑丈な鎖が強力過ぎて敵はこの魔獣に近づくことが出来ない。さらにこの鎖には特殊な能力も秘めており、鎖に拘束された敵は強さや身分に関係なく時間が経つと奴隷化してしまう。

 全長 :8~9メートル

 戦力 :365

 危険度:32


「俺がひれ伏すだと? 馬鹿か! てかお前ら誰だ?」


 颯太は‶幹部補佐〟の魔獣が見せる画面には一切見向きもせず、ぞろぞろと通路を塞ぐようにして現れた何十体の魔獣たちに冷静に問いかける。


「俺たちは‶地獄部隊〟の精鋭だ! ‶魔獣軍〟に仇なす存在を地獄に叩き落すために誕生した組織だ! ‶地獄王・御鬼(げき)〟様の名のもとにお前ら2人を地獄に叩き落す!」


 ‶地獄部隊〟の‶幹部補佐〟はそう叫ぶと、一斉に口を開く。そして青白い閃光を次々と発射していく。


「‶魔獣砲〟を撃つしか脳がねぇのかこいつら!」


 颯太はあまりにも滑稽な有様に呆れながらも2本の刀を勢い良く振る。


「‶紫電一閃(しでんいっせん)魔旋風列斬(ませんぷうれつざん)〟‼‼‼‼‼」


 颯太の魔獣砲のエネルギーを含んだ風の斬撃は凄まじい速度で直進して行き、‶魔獣砲〟の一斉射撃を全て一刀両断し、そのまま‶地獄部隊〟の魔獣を切り裂く。


「時間がねぇんだ! お前らの相手なんかしてるわけにはいかねぇんだよ!」


 颯太は斬撃を放った刀の刀身のひび割れが増えたことに焦りを感じ、思わず口に出てしまう。


「なるほど、焦ってるのか? だったら勝機が見えて来たかもねぇ~」


 先程までずっと喋っていた気性が荒い頭とは別の陰湿な頭が口を開く。


「あたしたちの本当の恐怖を見せてあげないとねぇ~!」


 反対の頭もしゃべり始め、先ほどとは違う色の魔力が放出される。


「正義感の強いあなたにとっても効いちゃう鎖を作ってあげちゃうわ!」


 オネェ口調の頭はそう言うと、自分の体から桃色の特殊な鎖を放出し、その鎖からは断末魔の叫びが聞こえる。


「‶人質の鎖〟」



 ケルベロスはさらに神力を鎖に注ぎ込むと、桃色の鎖は輝きを増し、颯太に直進して行く。颯太はその鎖を2本の刀で叩き切ろうとするのだがそれをケルベロスの3つのうちの1つの頭に止められる。


「やめた方がいいねぇ。この鎖は‶隷属の鎖〟を形にした物。それを乱暴に壊しでもしたらこの鎖につながれている奴隷は地獄の業火に焼かれるよぉ~!」


 陰湿のケルベロスはニヤニヤと笑いながらそう煽ると、颯太は苛立ちを感じながらもその刀を構えるのを止める。


 バチィィィーーーーーーン‼‼‼‼


 強烈な鎖の一撃をもらった颯太は地面を転げまわりながら吹き飛ばされる。そして何とか受け身を取った颯太は頬から流れる血を拭い再び刀を構える。


「あのピンクの鎖は壊しさえしなければ奴隷が殺されることはねぇんだ。だったら直接本体のあのくそ見てぇな頭をぶった斬れば……」


「あたしたちがそんな簡単に倒せると思ったのかしら?」


「考えが甘々だねぇ~!」


 ケルベロスはそれぞれそう言い出し、‶人質の鎖〟を伸ばして後ろのスラッシュバイツを拘束する。


「しまった! あいつは奴隷にされてるからケルベロスに攻撃が出来ねぇんだ! それに助けるためにあの鎖を切れば犠牲になる奴隷が……」


「そう言うこと! あたしたち頭いいでしょ!」


「悪知恵が働くって言うんだよねぇ~。‶人間界〟では」


 ケルベロスに拘束されているスラッシュバイツは不覚を取ったことに申し訳ない顔を浮かべる。そんなスラッシュバイツの顔を見てまたさらに悪知恵が働いたケルベロスは、拘束する鎖を発火させ、地獄の業火でスラッシュバイツを焼き始める。


「グァァァァァァ‼‼‼‼‼」


「おい! 何をしやがる!」


「この奴隷を解放してほしければ、おとなしくこの鎖に1分間繋がれてるんだ!」


 ケルベロスは颯太に1本の鎖をちらつかせながら脅しにかかる。


「……断る」


「本当にいいのかな?」


 ケルベロスはそう言い、‶人質の鎖〟をさらに2本スラッシュバイツの方へ向かわせると、その鎖からバチバチと電気が流れ始める。そしてその鎖は鞭打ちのようにスラッシュバイツを叩き始める。


 バチン‼‼‼‼ バチン‼‼‼‼


「おい! やめろぉ!」


「だったらこの鎖につながれるんだねぇ~!」


 ケルベロスは颯太の目の前で鎖をちらつかせながら鞭打ちを続ける。スラッシュバイツは撃たれるたびに血を吐き続ける。


「……分かった。だから鞭打ちと炎を止めろ」


「フフフ、いいわ! 物分かりのいい子は好きよ!」


 ケルベロスは不敵な笑みを浮かべると、抵抗しない颯太に鎖を巻き付ける。さらに颯太が約束を破って鎖から逃げ出そうとするのを防ぐために追加で何十本の鎖で拘束させる。


 同時にスラッシュバイツの拘束が解除され、スラッシュバイツは放り投げられ、受け身を取る体力もなかったのか地面に転げ落ちる。


 そして沈黙の時間が続き、やがて1分の時が経とうとする。


「さぁ! 新しい奴隷の誕生よ!」


 ケルベロスは高らかに笑いながら頑丈に拘束していた鎖を開いて奴隷化した颯太の姿を拝む。

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