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525話 『ルビナンス王国を襲う残虐な取り調べ』

 ‶魔獣の島(モンスターアイランド)〟周辺の海域では、未だに‶邪滅教〟による大捜索が行われていた。


「1番船、2番船ともに対象を確認できず!」


「3番船も収穫なしです」


「どいつもこいつも平然とした態度でそう報告してくんじゃないわよ! もう少し逃がしたことに危機感を持ちなさい!」


 ‶特級教徒〟の姉貴と呼ばれる女は部下たちの危機感の無さに焦りと怒りを募らせる。


(これがもしあの方に知られたら降格処分だけじゃ済まないかもしれない。絶対に見つけて捕獲しなきゃ)


 姉貴が爪を噛みながら試行錯誤していると、通信機から嬉しい情報が流れてくる。


「よ、4番船! 対象を確認! 方向、南南西の島から」


「ほ、本当に見つけたか!? ていうか島だと!?」


 姉貴は先程の危機感とは裏腹に目を輝かせて双眼鏡で対象を確認する。

 すると双眼鏡に見える先には自分たちが乗る船よりも一回り小さい帆船が帆を張って移動しており、その背後には真っ黒なシルエットで島の背景が映る。


「あんなところに島があったなんて、盲点だったわ! つまり奴らはあの島にずっと潜伏してたってわけね」


 姉貴は双眼鏡を部下に渡すと、トランシーバーを持って全員に指示を出す。


「7時の方向に敵船確認! すぐに戦闘準備に取り掛かれ!」


「「「「ラジャー‼‼‼‼」」」」


 十隻以上ある帆船は一斉に颯太たちが乗る船に進路を変え、勢いよく接近する。そして乗組員は大砲に魔力を込めて長距離の魔力弾を船から発射する。


 その弾丸は全て颯太とサーペイドが乗る小さな船に襲い掛かってくるのだが、突如として船から無数の毒龍が現れ、敵船の魔力弾を全て相殺させる。


「あれは、サーペイド・エストラー!?」


 姉貴はボタボタと流れる毒によって海域が汚染され、海域の凶悪な水生魔獣達がぷかぷかと浮いている光景に顔を引きつる。


「姉貴! 敵船から人らしき物体がこちらへ飛んできます!」


「今度はなんだ……って‶龍斬り〟!?」


 姉貴は空高く飛び上がる颯太の姿に驚きを隠しきれなかった。しかし姉貴は直ぐに戦闘体制に入り、部下達に大砲を颯太に集中砲火させるように指示する。


「あの悪魔をぶっ殺せぇ!」


 姉貴の叫びも無念に終わり、狙いを定めた魔力砲撃は全て颯太の周りを吹く旋風により防がれてしまう。


「今はお前達と戯れている時間はないんだ! どっか行け!」


 颯太は敵軍にそう啖呵を切ると、両手から青白い閃光を生成させる。


「‶魔獣砲〟」


 ズドォォォーーーーーーーーーン‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎


 両手から放たれる2本の巨大閃光は海に直撃し、大波を起こす。







 ――行商人の馬車に乗ってルビナンス王国に到着したリーナ達は早速宿屋を借りて宿泊することにした。


「この国に来るのは何年振りだろうなー?」


「リーナっちここにきたことあるの〜?」


 静香はリーナと同室でベッドに倒れ込む彼女に尋ねる。


「ああ、小さい頃に1回だけな! でもあまり印象に残ってなかったから懐かしいとは思わないよ」


「確かに、この国っていかにもよくもなく悪くもなくって感じの国だよね〜。なんか特徴を言えって言われたらあそこでやってる颯太の刺し絵ぐらいかな〜?」


「……ん?」


 2人は部屋の窓から街の人々がしていることに、一瞬だけ思考が停止する。


「刺し絵だとぉ!?」


 リーナと静香は慌てて部屋を飛び出し、他の部屋で休む仲間を連れ出して宿屋を出る。そして現場へ向かうと、街の住人が5列ほどに並んで先頭の人から順に颯太の手配書の写真にナイフを突き刺している。そう、今まさに‶邪滅教〟による罪人の選別を行っていたのだ。


「てめぇら一人一人、俺たちが監視してるからきっちりと写真を顔面目掛けてぶっ刺せよ! なんせてめぇらはあの罪人共を3日間もこの国に匿っていたというれっきとした事実があんだからよぉ!」


 ‶邪滅教徒〟の1人が拳銃を構えて住民たちに脅しの空砲を撃つ。


「何をしている! ‶邪滅教〟!」


「何ってそりゃ悪魔の関係者を洗い出してんだろうが!」


「なんて外道なやり方を!」


「てめぇらこれが許されると思ってんのか?」


 ロゼと敦は怒りのこもった声でそう言い放つと、‶特級教徒〟が現れ、拳銃を取り出す。


「悪魔に賛同する罪人に言われる筋合いはねぇよ! 悪魔は今から約1万年前に神が悪意に満ちた人間を生み出してそれが進化した生命体。そいつに賛同した連中たちが作り上げた国が悪魔帝国になってそれがやがて‶悪魔界〟になっていったじゃねぇか?」


「確かにいろんな文献にそう書かれているが、それがすべて本当のこととは限らないぞ!」


 リーナが‶特級教徒〟にそう説得するも彼は聞く耳を持つことはなく、


「悪魔が悪意を持つ人間を仲間に引き入れ、その人間がさらなる人間を仲間に引き入れる。そうやって悪魔界はネズミ算方式でデカくなっていったんだよ! だったら元を絶たなければ解決しねぇんだよ! 例えばこんな風にな!」


 ‶特級教徒〟は刺し絵に躊躇した男性を容赦なく発砲する。その男性は肩を撃ち抜かれて激しく泣き出す。


 それも当然なはず。プロの冒険者などはダンジョンの世界中の魔獣と戦い続けているから痛みにも多少は我慢できるかもしれないが、ここにいる人たちは全くそんな耐性があるはずもないので大騒ぎだ。


「さあこれは警告だ。次躊躇したら今度こそ額にこの鉛玉がぶっ刺さると思えよ!」


 ‶特級教徒〟は再び拳銃を男性に向ける。しかしそれでも男性はナイフを持とうとはしなかった。


「俺は……体を張って魔獣から守ってくれたあの人を裏切ることなんて死んでも出来ない!」


「そうか、ならお望み通り……死ね!」


 ‶特級教徒〟は抵抗する男性に呆れ、その引き金をゆっくりと引こうとする。そのとき、


「グ……!? 一体どういうことだ? 銃がだんだん重くなって……グァ!」


 彼はだんだんと重さを増していく拳銃を持ち上げきれなくなり、つい手放してしまう。すると拳銃は勢いよく地面に落下し、その地面に深くめり込んだ。


「クソ! 誰の仕業だ!? ぶっ殺してやる!」


 ‶特級教徒〟は唇をひん曲げて地面に埋まる拳銃を拾おうとすると、今度は一面に氷のフィールドが漂い、拳銃を凍らせてしまう。


「そんな危ないもの持っちゃだめだよ~!」


「今度何か余計なことしようとするならその手を凍らせるわよ!」


 静香とソマリは順番に怒る‶特級教徒〟にそう言う。どうやら彼女たちが自分の‶奇才者〟の力で敵の攻撃を完全に妨害したようだ。


「てめぇらよくもやってくれたなぁ! この罪は重いぞ!」


 ‶特級教徒〟は目を丸くしながら怒りの感情を露わにし片手をスッと上げる。すると彼の部下たちが一斉に銃をリーナたちに向ける。


「てめぇらの話は聞いている! だから取引をしよう!」


「取引だと?」


 敦は突拍子もない発言をする‶特級教徒〟につい聞き返す。


「そうだ。てめぇらがさっき捕らえた俺たちの仲間をこっちに引き渡せ! そうすればこの男とこの女たちの愚行を不問としてやる! どうだ? 悪くねぇ話だろ?」


 ‶特級教徒〟不気味な笑顔を向けながら敦に取引を持ち掛けたのだが、その直後に水の塊が彼の喉元に直撃する。


「ゴヴァ!?」


 ‶特級教徒〟首元を押さえながら過呼吸状態になる。そしてあたりを見渡すと、彼の部下たちが全員地に背中をつけて倒れていた。


「てめぇら一体どうして……」


 ジャボン‼‼‼‼


 彼の頭にバスケットボールサイズの水の塊が覆いかぶさり、彼の呼吸を妨げる。


「ガボボボボボーーーーーー‼‼‼‼‼」


 ‶特級教徒〟は顔だけ水につかった状態で溺れて顔周りの水を手で払おうとする。がその手は空気を切るように水も突き抜ける。


「まずはあなたたちの愚行を反省してもらわないとね!」


 爽やかに微笑みながらそう言うロゼに敦たちは少し恐怖を感じる。

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