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518話 『雷神を宿す車』

「もしかしたらこの魔獣たち、ただの野生の魔獣じゃないのかもしれないです!」


 ユマは車の窓から身体を乗り上げて双眼鏡で魔獣の群れを確認する。するとその小型恐竜の上に人らしき者が乗って追いかけている。


「ただの盗賊団なのかそれとも誰かの差し金で俺達を狙っているのか知らねぇが、俺たちに手を出せばどうなるかってことくらいは教えてやらねぇとな!」


 敦はそうかっこつけながら車から飛び降りようとするのだが、車の揺れが思った以上に激しく、吐き気を催しながら座席に戻る。


「えぇぇぇ‼‼‼‼ かっこ悪う!?」


 リーナはバックミラーで敦を見ながら驚愕する。



「おい王女、この車を止めることは出来ねぇのか?」


「やめた方がいいかもな、もし車をここで止めてしまえばすぐに奴らに追いつかれて魔法の集中砲火で使い物にならなくなる。こんな荒野の真ん中で車が壊れて見ろ! ‶大和村〟にいけないどころか海岸にすらたどり着けない!」


 敦はリーナにそう言われ舌打ちをしながら足を組む。こいつらを倒すだけなら問題ないのかもしれないが、今回の目的はあくまで‶大和村〟に行くことである。そのため絶対にこの移動手段だけは死守せねばならないのだ。


「だがどうする、オエ……このまま逃げ続けてもいつか奴らに追いつかれるぞ。奴らが乗ってる魔獣、確か人間界の地上最速の魔獣、‶ダッシュリザード〟だろ?」


 ダッシュリザード、人間界に住む恐竜タイプの魔獣でその速度は最大で時速220キロメートルにもなる。そのため最大時速180キロメートルのモンスタートラックではいずれ追いつかれてしまう。


「それにこの車は俺含め8人と全員分の荷物を積んでるんだ。かなりスピードが落ちるから思った以上に早く追いつかれるかもな」


「確かに……どうにかこの車を走らせながら奴らに迎撃する方法はないのか?」


 リーナはダメもとで運転しながら体を外に乗り上げる。


「やってみる価値はありそうだな! くらえ! ‶雷槍(サンダーランス)〟‼‼‼‼」


 リーナは‶フォルダーフォン〟から槍を取り出し、後方に雷でできた槍を放つ。その雷撃は狙いがしっかりと定まっておらず、左サイドにずれてほんの数人程度しか倒すことができなかった。


「あ、ヤバイ、ハンドル傾いた」


「「ギャァァァーーーーー‼‼‼‼‼」」


 リーナは体を乗り出すためにハンドルを支えにしていたため、その腕に力が入り過ぎてハンドルを右に大きく傾けてしまう。それにより車が大きく右にドリフトしてしまう。

 敦とソマリは最後部の座席に座っているため揺れが一番激しく、抱き合いながら絶叫する。‶王の騎士団(クラウンナイツ)〟の2人をここまでビビらせるのもこの王女ぐらいだろう。


 リーナが無駄にドリフトさせてしまったせいで追っ手に距離を詰められてしまい、魔力攻撃の射程範囲に入ってしまう。


「マズイぞ! ‶ファイアボール〟が来る!」


 敦は連中らが唱える詠唱を聞き、すぐに敵の攻撃魔法を察知しリーナに伝える。しかしリーナは運転の身であるため何もすることができない。


 ズドドドドドドドォォォーーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼‼


 十数人からの一斉攻撃を受け車は何回もスリップしながらもリーナのハンドルさばきで立て直す。敦は窓を開けて顔を乗り出し車のボディを確認すると不敵な笑みを浮かべる。


「なぁ王女、もしかしたらこの車、相当すげぇ素材で作られてんのかもな! ボディに全く傷が入ってねぇぜ!」


 敦はそう言い、ポーションを大量に口に含んで再び体を窓に乗り上げる。


「お前は運転に集中しておけ! こいつらの相手は俺に任せろ!」


「左側は私に任せて! この子たちを凍らせて足止めしてあげる!」


「スピードなら私に任せてください! 追い風を与えれば多少なりとも速度は上がると思います!」


 彼女の運転で意識の有る敦、ソマリ、ユマは順番にそう言い、戦闘態勢に入る。


 しかし揺れの激しい状態での魔法の迎撃はかなり困難で、状況は悪くなっていく一方だ。


「クソッ! 何度やっても魔法を放つ瞬間めまいがして狙いが定まらねぇ!」


「それにあのリザードに乗ってる人たち、相当な手練れのようね! リザードを上手く乗りこなして私達の攻撃を躱し続けているわ。


 敦は火球を、ソマリは氷柱や冷気の球体を何回も放っているのだが、連中らの頭数を減らすことができないでいた。それを危うく感じたリーナは車に搭載されたボタンを見つめる。


(この車、何か防衛機能とかついてないのか? このままだとやられてしまう……)


 リーナはそう思い焦りながら車の機能を見渡すのだが焦りは募るばかりだ。しかしそのときふと以前マカロンが‶魔人ラボ〟の‶十極天〟のガロガイに言っていたことを思い出す。


『‶魔導神装〟の本当の効果は……完全支配能力だ! ‶魔導神装〟を発動したら発動した者の周囲を自動的に完全支配空間が展開されるんだ! その空間の中にある物質や魔力は全て‶魔導神装〟の発動者に完全支配されて、発動者の理想の形に変化するんだ! もちろんその空間内の支配条件は生命を持たない物質のみだ!』


(そうか……‶魔導神装〟で武器や服装が変わるのはそれらが私の支配空間で私色に染め上げられるから変化するんだ。それと同じようにこの車も私の支配空間に入れてしまえば……)


 リーナはこの状況を打破できる糸口が見えたのか、ハンドルを強く握り、颯太と同じような顔で笑う。そして敦たちが乗り上げていた窓を強制的に閉める。


「おい、一体何を……」


「乗員のみんな! これからこの車を大改造させる! 大きな揺れにご注意を!」


 リーナは不敵な笑みでそう呟くと、ハンドルに魔力を注ぎ込む。


(私の魔力でどのくらいの改造が出来るか分からないが……)


「トールよ! この鉄の魔獣に雷神の生命を与え給え! ‶魔導神装〟‼‼‼‼‼」


 リーナの手からハンドル、その中のコードに魔力が送り込まれて行き、巨大な車が輝きだす。そして車体がスパークしその背後に雷神の化身が姿を見せる。しかしその後すぐに車の中に取り込まれ、車の形が変わり始める。


「一体何が起きようってんだ?」


 追っ手の中心人物がフードを脱いでその輝きを目の当たりにする。


 リーナの車は徐々に形を変え始めていき、4つのタイヤが人間のような手足になり、トラックのフロント部分が胸部になり、その上に頭が生え、その他いろいろなパーツが大きな変化をもたらし、最終的に5メートルサイズの巨大ロボットが完成する。


「さぁ、覚悟するがいい! この雷神を宿す巨神兵がこの不届き共に裁きを与える!」


 リーナの声で巨大ロボットがそう言うと、そのロボットから神力の圧が放たれる。

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