231話 『目には目を、歯には歯を、力には力を』
――ズドーーーーーーーーーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼
ワインレッドの閃光は颯太を下敷きにしている建物の瓦礫を灰も残さずに消滅させた。
そして‶魔獣砲〟の光が消えるとそこには何も残っておらず、颯太の消息も不明になっていた。
「ギャハハハハハハーーーー! ちょっと強くやりすぎてしまったようだな! すまねえな、骨も残さず消し飛ばしてしまって!」
セラフィスはゲラゲラと高笑いをしながら謝ってきたので、リーナとソマリはその態度に腹を立てていた。しかし2人とも颯太が消滅したという発言にはあまり驚いていなかった。
「颯太、死んでいないよね? 魔力は感じられないけどなぜかあいつは死んでいないって思えるんだ!」
「それは私もだよ! もしかしたらこれが愛の力ってやつなのかしら?」
ソマリがそう言うとリーナもクスクスと笑った。しかしセラフィスがあまり動じていないリーナたちを不思議に思い、
「何がそんなにおかしいんだ? もしかして俺を倒す策でもあんのか? だったら早く見せろ! だがそんなことをしようがしまいがてめえらの運命はどのみち変わんねえからよ!」
「あら、そんな当たり前のことを今更言わなくても分かっていますよ!」
セラフィスはソマリの以外な発言に少し動揺していた。
「ほ~う、分かっているじゃねえか! だったら面倒なことをせず早く楽に……」
「雨宮君があなたを倒して国民全員で喜ぶという運命をね!」
セラフィスは自分の予想を大きく覆すソマリの発言にいら立ち、
「てめえ、今の状況分かってんのか? てめえらのヒーローとやらは俺の手で消滅してしまったんだよ! だからてめえらには希望も何も絶望しか残ってねえんだよ!」
セラフィスは地団駄を踏みながら心が全く折れていないソマリたちに強く言い放った。彼が地団駄を踏むたびに魔力の波動が生じ、瓦礫や砂を吹き飛ばしていた。
そんな中、リーナはその波動に全く屈することなくセラフィスの前に立った。
「私たちのヒーローはな、とても自分勝手なやつでな、見計らっているのか私たちが本当に絶望しているときにいつも颯爽と現れる……。一見とても嫌な奴に思えるんだが、あいつが助けに来たらそんな気持ちもいつの間にか吹っ切れていて、頭の中はあいつでいっぱいだ! ……フフッ、自分勝手なのは私も同じか」
「てめえさっきから何を……」
ズドーーーーーーーーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼‼
セラフィスの立っている足場が突然大きく盛り上がり、地面から漆黒の閃光が噴き出し、彼を呑み込んだ。
リーナもこの展開は全く予想できていなく驚愕していた。
「クソッ! 今度は一体なんだ!?」
セラフィスは全身についた煤を払いながらポッカリと開いた地面の穴を凝視していた。するとその穴から黒いオーラをまとった颯太が飛び出してきた。
「手ごたえはあったんだけどな~、やっぱ相手が龍となると結構厄介だな!」
颯太は手のかかる赤子の世話に悩む母親のように頭を抱えていた。
なんと颯太はセラフィスの‶魔獣砲〟を受ける直前に地面に潜りこみ攻撃を回避したのだ。さらにその‶魔獣砲〟が地面も大きく抉ったことで颯太が掘った穴も隠れてしまったためセラフィスやリーナたちも颯太が地面にいることに全く気付かなかった。
「なるほど……それで俺の魔力の感じるところの真下まで潜ってそこから奇襲を仕掛けたっていうわけか。だが残念だったな! この通り俺は大したダメージも受けていない! 圧倒的な力とは技術だけではどうにもできないんだよ!」
颯太はその言葉を聞いてからしばらく俯いたまま黙り込んだ。しかしその後はぁ~と深くため息をついた。
「だったら仕方がないな~。こいつはグランベルクと戦う時まで隠していたかったんだがな、使うしかないか」
「おい、さっきから何ブツブツと呟いているんだ?」
「お前が圧倒的な力で俺を叩き潰そうとしているのはよぉく分かった。だがそんな寝言を言いたいんだったら俺のこの姿を見てからもう一度言うんだな!」
颯太はフゥと力を抜き冷静になり、そこから一気に邪神力を高めた。
するとまるでラスボスが登場するように天が闇に染まった雲に覆われ、漆黒の稲妻を放ち始めた。
さらに颯太の体にも大きな変化が表れ始めた。髪の毛は右半分が真っ白に色が抜け落ち、体全身の筋肉が少し膨張し、上半身がはだけた。そしてその右半身から黒い模様が現れ始め、顔にも謎の紋章が浮かび上がった。白い髪の毛の額から角が生え、右目は黒目が赤く、白目が黒く色が変わり、その姿は左半身を隠してしまえばもはや悪魔そのものだった。
変わり果てた颯太にリーナたちは少し怯えていた。想像通りの反応に颯太はフッと微笑し、セラフィスの方を向いた。
「悪いがここから先は戦闘じゃなく殺し合いだ。気を緩むなよ」
「俺ははなっからそのつもりだったが!」
両者互いに睨み合った後、偽りの光と正義を貫く闇が衝突した。




