198話 『漆黒のメモリー【3】』
翌日、ジルジオンの世話役の女性がジルジオンが寝ている寝室へやってきてノックをした。
いつもダイハード一家は家族3人で同じベッドで寝て、エスカヴァリンとヘレンはジルジオンを起こさないように先に起きて王族の公務を務める。その後に世話役の女性がやってきてジルジオンを起こすという日課になっている。
「ジルジオン様~! 朝ですよ! 起きて朝学習を始めますよ~!」
しかし何度世話役が呼び掛けても返事がしない。ドアを強くたたいても全く反応がなかった。
「……やはり昨日あれだけの戦闘をしていたのならそりゃ疲れますよね……」
ジルジオンとエスカヴァリンの稽古は規模が大きすぎてダイハード帝国の全国民がそのことを知っている。
「でもいつまでも寝かしておくわけには行けませんね! ジルジオン様~、開けますよ!」
世話役は心を鬼にしてドアを開けて部屋に押しかけた。
ベッドの布団は少し盛り上がっていた。
「なるほどなるほど……さては私の声がうるさくて布団にもぐったのですね……ですが私の勢いはもう止まりませんよ~! おーきてください!」
世話役はだんだんと楽しくなり、勢いに身をゆだね、ベッドの布団をガバッとひっぺはがした。しかし……
「な、何ですか!? これはぁぁぁ‼‼‼‼‼‼」
世話役は布団の中からロープでぐるぐるに縛られてスヤスヤと眠っているブリーフ姿の中年のおっさんが露わになったことに驚愕した。
「あなたは確か、帝国軍の兵士さん?」
世話役の女性はしばらく思考が停止していたがだんだんと状況を理解し腹を立てた。
「これはこれはしてやられましたね~! あのクソガキがぁァァァ‼‼‼‼‼‼」
世話役の女性は怒りのバロメーターがカンストし、帝国の王子であるジルジオンのことをクソガキ呼ばわりして発狂した。
――ダイハード帝国から少し離れたあぜ道
ジルジオンは馬に乗って緑が続く風景を疾走していた。
「へっへっへ~! そろそろ宮廷は大騒ぎしているところだろう! だがわざわざ前日にオッサンを睡眠薬で一日中眠らせてクローゼットに監禁し父上たちがいなくなるタイミングに俺とすり替えることもしなくてよかったのかもしれないな!」
この少年がやっていることは間違いなく犯罪行為である。
ジルジオンは前日に寝室の窓から逃走するためのロープを下におろしていたところをそのオッサンに見られてしまい、口封じのために眠らせて、逃走計画に入れ込んだのだ。
「今頃世話役に見られてバレるかあの兵士が訓練に参加していないことでバレるかのどちらかだな! まあどちらにしてももう追いかけてくることはないだろう! なんせ今回は父上に追いかけられないように邪神力を完全に殺しているからな!」
ジルジオンは呟き勝ち誇り心地よいが吹く中、軽快に馬を走らせた。
「さてと、今日の魔獣出現スポットは……おっ! この先をしばらく走っていたら到着するのか! 意外と近い!」
ジルジオンは強力な魔力が集まる場所を近くで感知し喜んだ。
馬を走らせること5分、目的地が目に見える場所まで近づいたそのとき……
ズドォーーーーーーーーーーーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼
遠くから巨大な魔力が出現したのと同時に鼓膜が破れるほどの大きな爆発音と600キログラムもある馬を吹き飛ばすほどの地揺れが起きた。
ジルジオンは軽やかに受け身をとり、落ちてくる馬をキャッチした。
「これは一体何なんだ! 災害か? だが災害だったら魔力は感じられないよな。だったらこれはテロか!?」
ジルジオンはこの爆発は人によるものだと確信し魔力が感じられた方へ振り向いた。
するとあまりの光景に彼は声が出なかった。
何と魔力が感じられた方には巨大な黒い煙が空に立ち上っていた。さらにその方向にはジルジオンの住むダイハード帝国があったのだ。




