195話 『封印されし悪魔の記憶』
その後颯太は治療室に運び込まれて案内人の聖霊に治療されていた。
「チッ、何だよ! あの威力……この俺が一撃でノックアウトされるとは」
「でも君も君でよくあれ受けてから気絶で済んだね~。あれは私達聖霊であってもひとたまりもない威力だよ~」
案内人の聖霊は颯太の並外れた生命力に呆れていた。
そこへ聖霊王のウルティオスがノックもせずにいきなり入ってきた。
「なんだよ、俺が悪魔だから浄化しに来たんか?」
「そんなことするわけないだろ! 私はこの世界に悪影響を及ぼすもの以外には力を振るわない」
ウルティオスはそう言うと病室に置いてある椅子に腰を掛けた。
「じゃあだったら今すぐにでも‶魔人ラボ〟や‶闇ギルド〟を潰してくれよ!」
颯太がやけくそにそう頼むと聖霊王はうーんと腕を組んで俯いた。
「私もそうしたいのは山々なのだが……」
「どうした? できない理由でもあんのか?」
颯太の質問に案内人の聖霊が答えた。
「実は聖霊や悪魔は1000年前の聖霊と悪魔による戦争の終結により、両種人間界の干渉を制限されることになったのです。そのため人間界では聖霊は霊神力を、悪魔は邪神力をフルパワーで扱うことが出来なくなったのです」
颯太は自分が放っていた黒いオーラの正体が邪神力であるということをこのとき初めて知った。
「だからお前さんが悪魔なのに人間の姿でいるのはそれが関係しているからなのだよ」
「なるほど……つまり俺は人間界以外のところで戦えばあの力が増すんだな?」
「そうだ……だがお前さんはまだ強くなる見込みがある!」
「なに!? それは本当か?」
颯太はウルティオスの言葉に即座に反応した。
「お前さんはまだ邪神力を半分も出しておらんのだ! だから今からしてもらうことをすれば7割の力を解放させることが出来る」
「今からしてもらうこと?」
「お前さんは邪神力を使うたび翌日に夢を見ないか?」
颯太はウルティオスに心の中が見通されているのではないかとひそかにそう思った。
実は颯太は黒いオーラを使用した後の晩に火の海の中で泣いている子供の夢を見ていた。
「お前さんは6歳以前の記憶がなかったそうだな?」
「……そうだ」
颯太は6歳以前の記憶がないのだが、そのことについて聞かれた瞬間震えるような寒気がした。このことから言えるのはその失った記憶は決していい記憶ではないということだ。
「だがお前さんは記憶喪失になったのではない! 記憶を封印されたのだ!」
「何だと!?」
颯太は自分が悪魔だと知ったときと同じくらい驚愕した。
「じゃあ俺はディアーラと同じように誰かの魔法で記憶を封印されたのか?」
「ああ、そもそも記憶封印魔法は悪魔が開発した魔法だからな。しかしなぜあの男が使えるのかは謎なのだが」
あの男とは仮面の男、コード・04のことである。
「それで? あんたはその俺やディアーラの記憶の封印を解除することはできるのか? 俺は昔、‶メモリアル・トゥルー・オルゴール〟っていう本当の過去の記憶を思い出す魔道具を使っても効果がなかったのだが?」
‶メモリアル・トゥルー・オルゴール〟とは颯太がレオメタルの記憶の食い違いを修正させるために使った魔道具のことだ。
「そりゃあ、あれは失った記憶や勘違いを修正させるための魔道具だからなあ! お前さんは記憶を封印されているため記憶を取り戻す魔法じゃあ治らんよ!」
「どうやったら記憶を取り戻すことが出来るんだ?」
颯太はあまりの緊張で拳から手汗が垂れていた。
「私の長年の研究でお前さんの記憶封印魔法は解除させることはできるが、ディアーラの封印を解除させることはできない。ディアーラに仕掛けられた封印は新型の封印で魔法の構造が全く違うからな!」
「なるほど……」
この男、口では分かったようなことを言っているのだが、本当は全く理解していなかった。
「本来ならばお前さんの記憶はゆっくりと思い出させるのがお前さんにとって負担がないのだが、今は非常事態でな。本当に済まないと思っている」
「別にいいさ! 世界を救えるのならこれくらい容易いことだ!」
深く謝罪するウルティオスに颯太は明るく振舞った。彼の心の中には迷いが一切なかった。颯太は過去を受け入れる覚悟を決めた。
ウルティオスはそっと颯太の額に手を置いて詠唱を唱えた。
「ではいくぞ! ‶アンロック〟封印されし記憶を今、解き放ち給へ! ジルジオン・デモラル・ダイハード‼‼‼‼」
颯太の額は輝きだし、颯太は別世界に飛ばされたような感覚に陥った。そして颯太は徐々に意識を失っていった。
――あたり一帯には緑の平野が広がっている。青い空、まぶしい太陽、斜め上を見渡せば緑の山がよく見える。そして平野の中央にはレンガ造りの住宅が立ち並ぶ一つの国があった。




