187話 『天才の弟子』
「聖霊界……あんた今聖霊界って言ったよな?」
「ああ、言ったとも……その刀はもしかして神器かもしれないからな」
「神器?」
颯太は眉をひそめてジース・シリコンの言葉を疑った。
「神器と言うのは時をさかのぼること1万年前、神は聖霊、悪魔を生み出したのと同時に2種類の神器を作ったのだ。一つは聖霊の力に反応する‶グロリアス〟もう一つは悪魔の力に反応する‶デモニアス〟……この刀がその2種類のどちらかはわからないが、神器であるのは間違いないだろう」
「この刀が……神器」
颯太は折れた黒刀を眺めながらいまさらその刀に見惚れていた。しかし同時に新たな疑問も抱いた。
「だが聖霊界っていうのはどこにあんだ? 行く手段なんてのはあるのか?」
「ああ、行く手段ならある。とりあえず‶空中都市・ヴァルハラへ行こう」
「だがあそこは王族しか踏み入ることが出来ない場所だろ?」
「本来ならな、だが今回は‶魔人襲来の件もあるから特別だ。それに……今回の戦いは君の眠っている力がキーになろう」
颯太はジース・シリコンの最後の一言が気になったがジース・シリコンはついて来いと顎で颯太に指図した。
「とりあえず君の壊れたバイクと車は向こうにあるAI修理室で修理しよう」
「……そういや気になっていたのだが、ここの研究室ってあんた以外誰も人いねえよな。なぜだ?」
颯太がそう尋ねたとき辺りには主ぐるしい沈黙が続いた。
「……必要ないからさ。私にはこの優秀なAIと言う人工知能がいるからさ」
「このAIっていうのもあんたが開発したのか?」
「そうだ……」
颯太の質問にこくりと頷いたジース・シリコンは何かを思い出したかのように机に手をつけた。
「私にも以前は一人部下がいたことがある……」
「部下?」
ジース・シリコンは唇をかみながら話を続けた。
「部下と言うよりかは弟子だったと思う。私は当時から自分よりも知能がないものを蔑んでいた。だがそんな私の前に一人の男が弟子を申し立ててきた。当然私は弟子入りを拒もうとしたのだが、その弟子の吸収力はとんでもなくてな、私の技術と知識をどんどん盗んでいった。だから私もそいつに可能性を感じ弟子に迎え入れた。私よりも優れた研究者になる、そう思ったのだが……」
ジース・シリコンは突然話をやめた。
「おい、そいつは一体どうなったんだよ?」
「そいつは突然姿をくらました。あいつは今もどこで何をしているのかは私にもわからない……」
ジース・シリコンの話を聞いてから颯太は、とてつもないほどの思い空気に押しつぶされそうになっていた。
そして‶AI修理室〟と書かれた扉の前についた。
「ここがAI修理室だよ」
ジース・シリコンは扉の自動ドアを開けるとそこには自発的に動く機械と颯太と顔なじみの人物が2人いた。
「お前は‶龍斬り〟ではないか?」
ロボットたちに無数の機械を搭載した義手をつけられている男が颯太に呼び掛けた。
「お前は確かジェイソンか? リーナと戦った魔人の」
颯太はジェイソンにつけられている兵器とでもいえるほどの強靭な義手を指しながら、
「おい博士……この義手は一体何なんだ?」
「戦力は一人でも多い方がいい。だからこいつに新しい腕を作っている」
「こいつは仮にも魔人だぞ! いつ裏切るか分かんねえぞ!」
「その心配も無用だ。私の開発したAIには人の感情を読み取る機能がついているからな。こいつがリーナ王女にべた惚れなのはすぐに分かった」
「お、おい! それを言うのではない!」
ジェイソンは顔を真っ赤にしながらジース・シリコンに文句を言った。
「へぇー、自分を負かした相手に惚れるってな~、お前にプライドっていうのはねえのかな?」
「あぁん? やんのかお前」
「そんな義手なんて木っ端みじんにしてやるぜ」
颯太とジェイソンの間には火花がちらついていた。ジース・シリコンはハァとため息を吐きながらもう一人の人物を紹介した。
「こっちに眠っているのは君も知っての通り、記憶を封印された‶アドベンチャーニュースコーポレーション〟の元代表、ディアーラだ」
「こいつ……!」
颯太がディアーラを見て魔力を上げようとしたらレーザー状のワイヤーが飛び出して颯太を縛り上げた。
「私の研究所を壊そうとするな! こいつは記憶を封印されてからずっと昏睡状態に陥っている。それにこいつがいつ目覚めてもいいように君と同じワイヤーで厳重に固定している。だからこいつが私たちに手を出すことは決してない」
颯太はそれを知って落ち着きを取り戻した。
「とにかく君の乗り物はすべてこの部屋で修理をする。その間に……」
ブーーーーーーーーン! ブーーーーーーーーン!
ジース・シリコンが話をしている途中に突然警報音が鳴り響いた。それも颯太がパンダ色の車を呼び寄せたときの警報音よりもはるかに高い音の。
「これは一体なんだ!? 敵か?」
「ああ、どうやら侵入者のようだな。……侵入者は1人、危険度は27か」
「結構ツエー魔人じゃねえか! しゃあねえ、俺が片づけてくる」
颯太はそう言ってAI修理室から出ようとしたらジースシリコンに襟を掴まれた。
「その必要はないよ。このギルドを甘く見ないでほしい」
ジースシリコンはそう言うと液晶型の端末を取り出して作業を始めた。
「おい! 何をしている。こんなことをしていたら魔人がどんどん攻め込んでくるぞ!」
颯太は焦っていたがジース・シリコンは冷静だった。ジェイソンも焦る気配が全くない。
「‶龍斬り〟……お前はこの人のことを何にも知らないようだな?」
「なに?」
「この人はマリアネス王国の最大戦力ともいわれている‶王の騎士団〟の中でも最強クラスの‶天才ジース・シリコン〟だ。俺たちレベルの魔人だったら足元にも及ばないぜ!」
「っ!?」
颯太はジェイソンの一言に驚愕し手を止めた。今まで見てきた‶王の騎士団〟は皆高い魔力を放ちさらに高い戦闘力を持っていたのだが、この老人にはそのような気配が全くない。
「このジジイ……一体どんな能力を持っているんだ?」
颯太は恐れと同時に少し興味も抱いていた。




