163話 『颯太の訴え』
「さあ! 死ねえ! ‶龍斬り〟‼‼」
グレムは開いていた右手をギュッと握ると、颯太の四方八方に配置されていた巨大な髪の束が一斉に襲い掛かった。
ズドーーーーーーーーーーーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼‼‼
髪の束は颯太に襲い掛かった後、さらにうなり始めて隙間がないほどに絡みついた。しかし颯太の魔力はまだ消滅しておらず、
「‶黒鴉旋風〟‼‼‼‼‼‼‼」
と髪の束の中から声がしてその後に黒い無数の斬撃が中から飛び出し、髪の束を木端微塵にした。その髪束の中から颯太が姿を見せた。
「さすがにこの程度じゃあ死なないよね……‶プラチナランク冒険者〟は……」
グレムはそう舌打ちをしながら憎たらしく言った。
「グレム……お前の過去を知ったからって俺は今まで通り戦う。お前がどんなにひどい仕打ちを受けてようが、復讐することは間違っている。お前はその男に騙されているだけなんだ!」
「うるさい……」
颯太の説得にいら立ちを覚えたグレムはボソッと言った。
「うるさいっつってんだよ! 何様だ! お前は! 人間ごときが魔人様に指図すんじゃねえ! なんたって陽キャの言葉が陰キャの僕に響くとでも思ってんのか? そんなわけあるかあ!」
グレムはそう言い放って8方向に枝分かれしている髪束を剣の形にして、颯太に斬りかかった。颯太は黒刀でグレムの連続攻撃をはじき返していた。
しかしグレムの止まらない斬撃一つ一つが重く、さすがの颯太もこれ以上は返せないと思い、‶疾風脚〟をして距離をとった。
しかしグレムは追い討ちをかけるかのように髪の毛を伸ばしてきた。颯太は黒刀を構えて警戒していたが、グレムは颯太の裏をかいて颯太の背後に1束の髪を影移動させてその束を尖らせて攻撃した。
ガキーーーーーーーーーーン‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎
金属と金属がぶつかり合うような鈍い音が響いた。
颯太はいち早く‶鋼筋武装〟をして身を守った。
しかし颯太はその衝撃によって前に押し出されてしまい、前方から襲ってくる髪束に胴体を貫かれそうになった。颯太は何か思いついたのか、笑いながら黒刀を大きく振りかざした。そして前方から来る髪束を一刀両断した。
「僕の髪を斬りやがった!? ならこれならどうだ!」
グレムは残りの髪を全て束ねて巨大な大砲を作り出した。
「滅べ! 陽キャがあーーーーー‼︎‼︎‼︎」
グレムは大砲から最大威力の‶魔獣砲〟を発射した。
颯太はその青白い閃光を素手で受け止めた。
「何!? 僕の‶魔獣砲〟を素手で止めるだと!? そんなの無理に決まってる! 諦めろ!」
「お前、こんなことをして死んだ母ちゃんが喜ぶと思うか?」
「!?」
「お前はお前を虐めた連中を見返すくらいのすごい魔導師士になろうとしていたんじゃないのか!」
「理想と現実は違うんだよー!」
グレムはそう叫んで大砲から出している‶魔獣砲〟の出力を一気に上げた。颯太は少し押されていたがそれでもなんとか踏ん張っていた。
「何が理想だ! お前はただ自分の過去のトラウマから逃げようとしているだけだ!」
「う、うるさーい‼︎‼︎‼︎‼︎」
図星だったのか、グレムは激怒して大砲に髪の束をさらに巻きつけて大砲を巨大化させて‶魔獣砲〟の威力を倍増させた。
「グハッ! また威力を上げやがったな! お前の母ちゃんはお前がそいつらに復讐するために殺人集団に入っているって知ったら悲しむだろうが! もう少し親孝行ぐらいしろよ!」
颯太はそう言って手に黒いオーラを集中させて青白い閃光を押し返した。
「……黙れ……黙れーーーーー‼︎‼︎‼︎‼︎」
「過去は変えられない、だが未来は変えられる! だからやり直してみようぜ!」
颯太はそう笑顔で言って青白い閃光をかき消した。青白い閃光をはガラスが割れたように崩壊した。
「お前はまだやり直せる。俺はそう信じている!」
颯太は唖然としているグレムにそう囁いて、腹部に手を置いた。そして、
「‶波動旋風〟」
と手から黒い巨大な旋風を起こしてグレムを吹き飛ばした。
ズッドーーーーーーーーーーン‼︎‼︎‼︎‼︎
グレムは血反吐を吐きながら吹き飛ばされた。
そして黒い旋風は髪のドームを貫通してドームを消滅させた。




