132話 『嘘で塗り固められたニュース』
マスコミ騒動から1週間がたったころ、レーフェル王国王宮の病棟内で颯太はやっと目を覚ました。
颯太はグランベルクの強烈な魔獣砲を受けてから1週間ずっと昏睡状態だった。
颯太があたりを見渡していたら、ベッドの中がとても暖かった。布団を少しめくってみると、何とリーナが添い寝していた。
(ななななんだー! この状況は!?)
颯太はリーナと体が密着していることにかなり困惑していた。
しかし寝ているリーナの目は赤くはれていた。恐らく颯太が昏睡状態の間ずっと泣いていたのだろう。
すると隣で寝ていたリーナが目を覚ました。
「……ん……そ、颯太? ええ!? 颯太! お前、目を覚ましたのか!」
リーナは寝ぼけながら颯太を見つめていたのだが、颯太が目を覚ましていたことに驚いて飛び起きた。
「よ、ようリーナ! ひ、久しぶりだな!」
颯太はリーナの勢いに圧倒されながらも挨拶をした。
「久しぶりって私はあんたがいつ目を覚ますのか不安でいっぱいだったんだぞ! うわーん!」
リーナは病室内でそう言って再び泣き叫び出した。
その声を聴いてロゼや静香も颯太がいる病室に駆けつけた。この2人もかなりのけがを負っていたのだが、颯太ほどではなかったので3日ほどで動けるようになっていた。
「颯太君! 意識を取り戻したのね!」
「颯太っち~、うわーん」
駆けつけてきたロゼと静香はリーナと同じように目が赤くはれていた。
「お前ら、俺のためにそんなに泣いてくれたのか?」
颯太がロゼたちにそう言うと2人はコクリと頷いた。
颯太は自分のために泣いてくれる人が3人もいたということにとても感激していた。
エルド国王もその騒ぎを聞いて駆けつけてきた。
「颯太君! よかった~! 目を覚ましてくれた!」
そう言ったエルドも目が赤かった。
「エルドのおっさん……まさかあんたも俺のために泣いてくれたのか?」
「いや、これは昨日呼んでいた小説のラストがあまりにも感動的だったので……」
「ややこしいな‼‼‼‼‼‼」
颯太はエルドの発言に激しくツッコミを入れた。
するとさらに後からレオモルトが病室にやってきた。
「おう! 颯太! お前、随分と派手にやられたんだってな!」
颯太はレオモルトの声に即座に反応してベッドの上で正座をした。
「せ、先輩! お久しぶりですね! 2年ぶりぐらいでしょうか!」
(あの颯太が敬語を使っている!? お父様にさえもため口で話すっていうのに!)
リーナは颯太がレオモルトにかしこまっている光景を見て驚愕していた。
「あの~、レオモルトさんと颯太君はいったいどういったご関係で? 同じ‶プラチナランク冒険者〟でしたよね?」
ロゼは興味深々な顔をしてレオモルトに尋ねた。
「俺と颯太は冒険者仲間だったのさ! 俺はこいつに戦い方だって教えていたからな! それにしたってお前、あの姿を見ると初めて会った時を思い出すな!」
「そうですね! 確か5年くらい前の話でしたもんね!」
「そうそう! お前あの時‶ブロンズランク〟冒険者になったばかりなのに、いきなり‶ゴールドランク〟の依頼を受けてその魔獣にボコボコにされていたもんな! 俺が助けに入らなかったらお前どうなっていたことやら!」
「いや~お恥ずかしい限りですね!」
しばらく颯太とレオモルトの思い出話で盛り上がっていた。しかし颯太は棚にあった1週間分の新聞のを見てすぐに現実へ引き戻した。
颯太はその新聞記事を読んでいくうちに怒りが増していった。
「レーフェル王国壊滅、エルド国王、そのストレスを一般市民に暴力で発散、プラチナランク冒険者の雨宮颯太死亡! 龍斬りの雨宮マリアネス第一魔法学院で弱体化した説、レージス学長に記者会見だと! 何じゃこりゃー‼‼‼‼ ざっけんじゃねえ! 誰だ、これを書いた奴は! ガセネタばっかり書きやがって!」
颯太は怒り狂って、病室内だというのに叫びまくっていた。
「そもそもレージスのおっさんも何で素直に記者会見で謝罪をしているんだ! 俺はあの学校に行ってからむしろ前よりも強くなってんだぞ!」
「しかしレージス学長もそうせざるを得なかったんだろう!」
エルドはそう言って颯太をなだめようとしていた。
新聞記事の中にレージス学長が頭を下げている写真が載っているので記者会見で謝罪したと事は紛れもない事実だった。
「それで! お前はどうすんだ?」
レオモルトは颯太にそう聞くと、颯太は不敵の笑みを浮かべた。
「そんなの決まっているじゃないですか! この新聞を出版した会社、‶アドベンチャーニュース・コーポレーション〟をぶっ潰す!」
颯太はそう言って手に軽く旋風を巻き起こして手に持っていた新聞をシュレッダーにかけたかのように木端微塵にした。
「そう言うことなら俺も参加させてもらうぜ!」
「私も当然あの会社をぶっ潰しにいくぞ!」
颯太の言葉にレオモルトとリーナが賛同した。
ロゼや静香も賛同しようとしたらエルドに呼び止められた。
「レージス学長が君たち2人には話があるからマリアネス王国に帰ってこいって言っていたぞ!」
「「えええええ‼‼‼」」
ロゼと静香はエルドの話を聞いてがっかりしていた。
リーナは2人を同乗しているふりをして内心はとても喜んでいた。
(やったー! 私一人で颯太を独占できるー! しかも一緒に行くのは颯太とおんなじ‶プラチナランク冒険者〟のレオモルトさん! とても心強くてラッキー!)
「じゃあ3人で行くとするか!」
「2人がいないのは寂しいけどしょうがないね!」
リーナはそう言っていかにも残念そうな顔をしていた。
しかし、
「私も一緒に行かせてください!」
と病室のドア側から少女の声がした。颯太たちはその声に反応して一斉にドアの方を振り向くとそこにはレーフェル王国の双子の王女の妹の方のユマがいた。
「私も皆さんと一緒に戦いたいです!」
いつもおどおどしているユマが覚悟を決めて自分の意思を伝えたことにエルドは感動していた。
しかしリーナは苦虫をかみつぶしたような顔をして軽く舌打ちを打っていた。




