表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/47

好き

 シュバルツが降り立ったのは郊外にある小高い丘の上だった。抱かれた状態のまま降ろされる。草原に軽やかな風が吹いて、とても気持ちのいい場所だった。


シュバルツが腰を下ろした腹の部分に、寄り掛かるようにしてレジナルドが座る。

「あの、もう降ろして」

一向に私を降ろそうとしないレジナルドに、抗議の視線を送るが全く効かない。


「どうせ魔力が切れて、動けないのだろう。大人しくしておけ」

図星を突かれ、仕方なくそのまま彼に寄り掛かる。


「疲れた。暫くは急な任務などは遠慮したいな」

はあ、と溜息を吐くレジナルドの顔を見る。

「そういえば、ずっと姿が見えなかったわ。お疲れ様」


「はっ、おまえの父君だよ。浄化が終わったら真っ先に私に後処理を任せて、自分はとっとと娘たちの元へと向かったんだ」

「う、ごめんなさい」

お父様の策略でした。


「ははは、いいんだよ、別に。後処理なんてのは部下の仕事だし、団長の気持ちもわかるしな」

「……ありがとう」


「出立直前に聞いた。リリーたち三姉妹の事。ハイスペック三姉妹だったとはな。まあ、父親がアレだから妙に納得はしたがな」

はははと笑うレジナルド。笑いがおさまると、私の髪にキスをした。

「すまなかった。結局リリーたちに全てを任せてしまったな」

「謝らないで。あれは私たちのなすべきことだと、自然と感じたの。やり切れると頭の奥でわかっていたの。まあ、魔力が底を突いたのは想定外だったけれど」


三人で座り込んでしまった時を思い出して、思わず笑ってしまった。

「リリー」

そんな私を後ろからギュウッと抱きしめるレジナルド。

「ありがとう」

「ふふ、どういたしまして」


真上にある彼の顔が見たくて、見上げると金色の目がこちらをじっと見ていた。そのまま器用に私の唇を奪ったレジナルドは、私を軽々持ち上げて正面に向き直る体勢にした。


「リリー、あそこにいた連中は皆ライバルか?」

オスカー殿下たちの事だろう。

「ライバルって……私が好き、なのはレジナルドだし……」

恥ずかしくて尻すぼみになってしまう。


「それはわかっている。そんな顔をさせる事が出来るのは私一人だという事は」

私の発した言葉をしっかり拾った彼が、私の頬を撫でる。

「だが、アイツらはそう簡単に諦めるもんかという顔をしていた。あわよくば横からかっさらってやるくらいの事を考えているぞ、あれは」

「そんなまさか」

バカバカしくて笑った私の口に人差し指を当てられる。


「奴らとどんな経緯があって、あんなに想われているのかは知らんが、絶対に奴らの前で油断するな」

真剣な顔で諭してくる彼を無下には出来ずに、素直にはいと返事をした。絶対にそこまで気にするような事ではないが。


「わかってなさそうだ」

「え?」

何故バレたのか。至って真面目な顔で答えたというのに。

「存外、おまえは顔に出る」


ずっと頬を撫でていた手が、するりと顎に伸びた。顎を軽く掴まれる。いくらでも逃げられるほどの力加減だというのに、どういう訳だか全く逃げられない。


「リリー。愛している」

そう呟いた口が、私の口を塞いだ。優しくついばむようなキスをされ、呼吸するタイミングがわからず口を開いた途端、食べられてしまいそうなキスをされた。口の中まで翻弄された私は苦しくなって切ない声が漏れてしまう。


すると、心配したのか眠っていたシュバルツの首が起き上がり、レジナルドの顔を私からどかした。

「はあ、はあ」

クラクラしている私を抱きしめながら舌打ちをするレジナルド。


「本当に邪魔ばかり入る」

シュバルツは、自分を睨みながら愚痴ったレジナルドを無視し、私の頬に鼻を擦り付けてくる。思わず私も、そんな彼の鼻先を撫でてしまう。


「一刻も早く婚約を結ぶ。なんならすっ飛ばして結婚してしまってもいいな」

「ふふ、楽しみね」

レジナルドとの生活を想像した私は、それだけで幸せを感じ、自然と笑顔になった。


「その為には、まずは団長という一番大きな壁をどうにかしないとな」

私の笑顔に釣られて笑顔になったレジナルドは、シュバルツの鼻先をどかしながらもう一度、私に口づけたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ