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聖女の力量

「では?」

「うん。私たちが向かうわ。ギルドに姉様たちを呼ぶように頼んでいるわ」

お義兄様が深刻な顔になる。反対にオスカー殿下は事態が飲み込めていない。


「いけそう?」

「ふふふ、大丈夫よ。知っているでしょ?」

「はあ、そうだね。竜騎士団をすぐに向かわせるようにするよ。早ければもう魔物が出始めているだろう。騎士団も城を守る者と街を守る者とに分けよう」

「今は、冒険者の方たちが食い止めてくれているはずよ」


「ちょっと待ってくれ。瘴気はわかったが、その後の話が私には見えないんだが」

オスカー殿下が言うが、お義兄様は華麗に無視する。


「リリー」

優しくお義兄様に抱きしめられる。

「君たちの強さはわかっているけれど、どうか気を付けて」

「はい。ローズ姉様にも伝えておくわね」

「ああ、頼むよ」

お義兄様は私の頬にキスを落とした。


 街へ戻る途中、すでに瘴気を微量ながらも感じる。街ではかなりの瘴気を感じられた。あまり長くこのままにしておくと、私たち人間にも影響が出る。ギルドへ戻るとマリーさんが現状を報告してくれた。


「少し前にお姉様たちを呼びに行った彼が戻ってきたわ。お姉様たちは準備ができ次第、こちらに向かうと言っていたそうよ。住民の避難もつい先ほど完了させたわ。あとは、魔物がどんどん街へ来ている。まだ大型の物はいないけれど、時間の問題だと思う」


「マリーさん、ありがとうございます。城に報告してきました。もう間もなく竜騎士団がこちらに向かってくるそうです。あと騎士団も来てくれると。だからそれまではなんとか、私たちでしのぎましょう」


周辺で聞いていた冒険者の人たちから雄叫びが上がった。頼もしい人たちだ。しかし、時間が経てばこちらの疲労が蓄積されて不利になる。瘴気そのものを何とかしなくてはいけない。


 そんな時だった。

「皆さん、私はこの国の聖女です。私が今から街に蔓延る瘴気を浄化します」

シモネッタ嬢だった。後ろにはニヤついた表情のインファーナ司教がいた。


「だから皆さんは、今ここにいる魔物を倒す事だけに集中してください。あとは私が解決して見せます」

冒険者たちから再び雄叫びが上がった。これで解決出来ると信じているのだろう。


シモネッタ嬢は地面に跪いて、手を組み祈るポーズをした。何かを呟きながら祈り出す。すると、彼女の周辺がキラキラし出した。

『これは聖魔法。もしかしていけるの?』


固唾を飲んで見守ると、キラキラが彼女の周囲3メートルほどまで広がった。近くにいた冒険者たちは大喜びだ。


しかし、いくら待ってもその以上広がらない。広がるどころかキラキラが消えて行ってしまう。


「おかしいわね。祈りが足りないのかしら?」

再び祈り出すシモネッタ嬢。またもや周辺がキラキラする。が、そこ止まり。


「おいおい、いつになったら浄化が始まるんだ?」

「魔物の数が全然減らねえぞ。それどころが増えてないか?」

「一体どうなってんだよ!?」

そこかしこから怒号が飛び交い出した。


「やっぱりダメなのね」

がっかりした私は大きな溜息と共に、魔物を水の槍で貫いた。


「なんで?なんでよ?私は聖女なのよ。私がこの国を平和に導いて、イケメンたちとハッピーエンドになるはずなのに」

何度も祈るがもう魔力がないのだろう。何も起こらなくなってしまった。ショックで彼女は膝から崩れ落ちてしまう。


そこで気が付いた。後ろにいたはずのインファーナ司教がいない。逃げた?周りを探す。すると皆の視界から外れるように、そろりそろりと足音を忍ばせて歩いているインファーナ司教が見えた。

「逃がさない!」


私が駆け出そうとした瞬間、彼が黒い蔓のようなものに羽交い締めにされた。


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