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司教の暴挙

 キャルム様が目を覚ました。

「キャルム様?」

呼び掛けると彼はしっかりと私を見た。意識が混濁しているという事はないようだ。


「気分はどうですか?私が誰だかわかりますか?」

ゆっくり語り掛けてみる。何度か瞬きをした彼はニコリと笑顔になった。

「リリーさん、よかった。一瞬女神様に見えてしまって、天国に来てしまったのかと思いました」


冗談が言えるようなら大丈夫だろう。

「傷口は痛んだりしていませんか?」

「ええ、大丈夫です。少しくらくらしますが」

「多分、結構出血したのだと思います。マリーさんから造血剤は頂いたのですが、しばらくは安静にしていた方が」


「それは、ありがとうございます……いや、まったりしている場合ではなかった」

いきなり起き上がろうとしたキャルム様は、ふらついてソファへ逆戻りした。


「いきなり起きてはダメです。それと、一体どうしてこんな事になったのか聞いても?」

「大変なのです!急いでカーター様に知らせないと。もしくはオスカー殿下でも」

「もしかして何か動きがありましたか?」

「はい、父が……インファーナ司教が真っ黒い魔石を持って森に入って行ったんです。あれは瘴気の塊です。父は瘴気をバラまこうとしている!」


「それは本当ですか?」

教会の権力者が?

「本当です。どこかの夜会から戻ってから、クララさんが盛大に怒っていたのです。私が瘴気を浄化させてやるんだからと凄い剣幕で息巻いていて。その時に、父は彼女に言ったのです。きっと間もなく聖女の言う通りになるだろう。思う存分浄化して力を見せつけてやればいいって」


一気に言い終わったキャルム様は、悔しそうに唇を噛んだ。

「聖女候補が現れてから父は変わってしまった。それまでは多少強引な部分はありましたが、人を困らせるような事は決してしなかった。余計な権力を欲するような事はなかったのに。それが、彼女が現れた途端……父をなんとか止めなくては!クララさんでは絶対に瘴気を浄化することは出来ない!」


「わかりました。私が知らせに行きます!キャルム様はお願いですから安静にしていてください」

強く噛んだのだろう。下唇に血が滲んでいた。そっと触れてヒールをかける。

「申し訳ありません。リリーさんに頼りっぱなしになってしまって」


私は笑顔を見せた。

「何を言っているんですか。私は冒険者ですよ。どおんと任せてください!」

「リリーさん……ありがとう、ございます」


応接室を出ると受付に向かう。

「すみません!大変な事になりそうです。どなたかアヴァティーニ公爵家に伝言をお願いできませんか?」


マリーさんが対応する。

「一体どうしたって言うの?」

「インファーナ司教が、教会の裏の森に瘴気の塊である魔石を置きに行ったそうです。このままだと森から一気に瘴気が街に溢れてしまいます。そうなると魔物が街に出て来てしまう。どうか皆さんで食い止めてください。

私は城に伝えに行きます。ですからどなたか、私の姉二人に、ローズ姉様とカメリア姉様をここに呼んで欲しいのです。瘴気が出たと言えばすぐにわかりますので」


「俺が行く!こう見えても足は速いんだ」

「そうですね。彼ならアヴァティーニ家まですぐに行けると思います」

アニーさんのお墨付きなら問題はないだろう。

「すみませんがよろしくお願いします。あとの皆さんはどうか、街に来る魔物を食い止めて!」


そのまま私は強化魔法で城までダッシュする。門兵の人たちはすぐに私だと気付いて門を開けてくれた。そのままお義兄様の執務室へ。


「お義兄様!!」

扉をバタンと開けると、偶然にもオスカー殿下が一緒にいた。

「リリー?どうしたの?」


「瘴気よ!インファーナ司教が森の奥に瘴気を放ちに向かったらしいわ」

「なんだって!?」

「聖女候補に瘴気を浄化させて、力を見せつけようとしているって。でも、彼女では瘴気は浄化できない」


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