表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/47

黒色の竜の名前は

「殿下の言う通りなのでしょうね。ただ、目的がわからない。街をパニックにして何がしたかったのか……しかもやったのは教会の人間。なんとなく聖女絡みだろうとは予測できますが」


「聖女といえば」

聖女の言っていたことも話す。


「瘴気とはまた、不吉な事を言い出したね」

「でも、あの周辺に瘴気はなかったわ。森の奥まではわからないけれど。なのに、彼女は確信を持っている言い方だった」


「予言なのか?」

オスカー殿下が嫌そうに言う。

「彼女はそこまでの魔力はない、そうだろ」

「ええ」


「それは本当か?」

そういえば、オスカー殿下は知らなかったか。

「はい、キャルム様がそうおっしゃっていました」

「キャルム?」

「インファーナ司教の息子さんです。舞踏会では司教と聖女候補の後ろに控えておりました」

ああ、という顔の後、怪訝な顔になるオスカー殿下。


「リリー嬢は彼と知り合いなのか?」

「ええ、ギルドの依頼で何度か」

「仲が良いのか?」

「どうでしょう」

「そのキャルム?がもしかしてあのチョーカーをくれた人なのか?」

「いいえ」


「他にもいるということか」

「はい?」

最後の言葉は聞こえなかった。

「なんでもない、気にするな」


お義兄様が笑っている。どうしてだろう。


「とにかく。何かを起こそうとしているのは間違いないが、焦って行動はしてはダメだ。秘密裏に探らなければならない。きっと、そろそろワイルドボアの子供がいなくなっていることに犯人は気付くだろう。だからといってすぐに次の手を打つとは考えにくいかな。しばらくは警戒するはずだから。犯人も誰が子供を解放したのか分からない訳だしね」


「なるほど」

「その彼にも焦らないように言ってあげてね」

「はい」


「リリー嬢」

「はい?」

「キャルムに今の事を報告に行くのだな」

「そうですね。明日以降になりますが」

「私も行く。行くときは教えてくれ」


「それは構いませんが、街中ですよ」

「知ってる」

「王族が軽々しく行ってはダメなのでは?」

「それは大丈夫だ。しょっちゅう行っているからな」


「お義兄様が聞いてますけど?」

「カーター殿は知っている、きっと」

「ええ、勿論。宰相と陛下には秘密にしていますがね」

お義兄様ってなんかやっぱり凄い。




 アヴァティーニ家は公爵ということもあって屋敷の敷地が広い。広いがこれはどうなのだろう?


家令から、来客が来た事を知らされた。中で待ってもらうように言うと、どうしてもそれは無理だから庭でと言われたらしい。訝しく思いながらも庭に行ってみる。


我が家の庭に黒色の竜がいる。私に鼻先を近付けてグルグル言っている。


「あの、この子に会えたのはとても嬉しいのですが、どうして?」

どうしてこうなった?


「リリーが竜舎に来ないからだろう。名前がもらえるとずっと待っていたが、あまりにも来ないからこちらから来てやった」

レジナルドがニヤリと笑ったと同時に黒色の竜がクウと鳴いた。


「そうでしたね。近頃バタバタしていて。ごめんなさいね、黒色の竜」

金色の目で私をじっと見る。早速、名前を発表する。

「私が考えた名前はね。シュヴァルツよ」

黒色の竜がクウと鳴く。

「あなたの名前、シュヴァルツってどう?」


すると、グルグル鳴きながら私の頬へ鼻先をつける。

「良い名だ。そいつも気に入ったようだな」

「本当に?シュヴァルツ、気に入ってくれたの?」

クウっと鳴くシュヴァルツ。


「よし、名前ももらった事だし、帰るぞ」

レジナルドはお茶をする事もなく帰ろうとする。

「え?もう帰ってしまうのですか?」

「ああ、見回りの帰りに寄っただけだからな。遅くなるとおまえの父親の団長殿がうるさいんだ」


どうやら本当に名前をもらいに来ただけのようだ。

「そうですか」

ついしょぼくれてしまう。


「寂しいか?」

「……はい」

「シュヴァルツが帰るからか?」

「シュヴァルツもですが、レジナルドも。せめてお茶くらい」


ふと手が伸びてきた。私の頭をポンと撫でる。

「悪いな」

「仕方がないです。お仕事の最中ですものね」

なかなか行かなかったのが悪いのだ。来てくれただけでも嬉しい。


頭に乗っていた彼の手が、スルッと下りてきて私の顎を捉える。


「会いたいと思うのならば、会いに来い」

顎を捉えていた親指が、私の唇をサラッと撫でていった。

「!」

驚いた私を見てニヤリと笑った彼は、シュヴァルツに飛び乗って颯爽と飛び立っていってしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ