騎士としての実力
声の方を見れば、ブルーの瞳が飛び込んできた。
「アーロン様」
『そうだ、アーロン様は騎士団員だった』
「こんな所でどうしたんだ?」
「姉の付き添いで、義兄の訓練を見学に来たのです」
カメリア姉様とザック義兄様を紹介する。
「ディートリンド公爵の婚約者の方というのは、リリー嬢の姉上だったのですね」
「そうなんです。可愛い婚約者と可愛い義妹です」
「ははは、確かに。リリー嬢は勿論ですが、お姉様もお美しいのですね」
「あら、嬉しいですわ」
カメリア姉様が猫を被って答えている。
「これから模擬戦形式で訓練をするので、良かったら中に入って見ていってください」
「よろしいんですの?ありがとうございます」
被っている猫が大きくて思わず笑ってしまう。
「リリー」
「ふふ、はい」
アーロン様に、席まで案内してもらう。
「今回はブロックが違うので、ディートリンド公爵と剣を交える事は出来ません。ですが、滞在中に是非ともお相手願えればと思っています」
「勿論。私もマルキオーロ殿の事は噂で聞いていましたから。楽しみです。じゃ、行って来るね」
「ええ、頑張ってね」
「アーロン様、頑張ってくださいね」
私が言えば、快活な笑顔を返してくれた。
「リリー嬢が応援してくれるなら、勝ち続けますよ」
二人は訓練場の中へ入って行った。
「彼、昔王城で見た時より、数倍いい男になっているわ」
「そうなの?」
「彼って強いの?」
「知らないわ。あ、でも確か第二部隊の隊長だって言っていたわ」
「へえ、楽しみね」
「嘘……」
アーロン様は想像以上に強かった。一振りが重い。ガタイがいいのに動きも早い。
「凄い……」
あっという間にブロックのトップに立った。
ザック義兄様も強かった。騎士として考えると細身の方なのに、重い剣を軽々と操り何度も攻撃をする。タイプの違う二人を見るのは楽しかった。
「凄い!二人とも凄いわ!初めて間近で剣の試合を見たけれど、興奮して鳥肌が立ってしまったわ」
私たちの席に戻って来た二人に賛辞を送る。
「リリー嬢は冒険者もしているって噂で聞いたけど、剣は使わないのか?」
「私は魔法がメインですから。剣は使った事がないです」
「そうか。まあ確かに、リリー嬢の腕の細さでは剣は重すぎるだろう」
びっくりしてしまった。普通に腕を取られて撫でられた。これがアーチー様だったら即、魔法で攻撃していたが、あまりにも普通過ぎてなすが儘になってしまう。
「あ、すまない!不躾に触ってしまった」
「いえ、別に嫌じゃなかったので」
「そうか。よかった……いや、よくないか。すまない」
「ふふ、お気になさらず。本当に嫌じゃなかったですよ」
「ありがとう」
こういう時、大きなワンコに見える。
「カメリア、リリー。そろそろ中庭に戻るわよ」
四人で暫く会話を楽しんでいると、ローズ姉様が迎えに来た。
「うわぁ、花の三姉妹が揃うと華やかだな」
アーロン様は目をパチクリしている。
「あら、お上手ですのね、ありがとうございます。では、妹たちを連れて行きますわね」
戻りかけたその時、アーロン様が大きく手を振った。
「リリー嬢、よかったらまた見に来てくれ」
思わず私も手を振り返してしまう。
「なんだか大型犬みたいな人ね」
ローズ姉様が笑う。
「そうなの。年上の方だと思うのだけれど、こう、頭をワシャワシしたくなる感じ」
「なんかわかるわぁ。でもとても強かったわね」
「カメリア姉様、ちゃんと他にも目を向けていたの?てっきりザック義兄様しか見てないのかと思った」
「失礼ね。強い人はちゃんとチェックするのよ」
「そうそう。カメリアは昔から強い人が好きだったのよねえ。小さい頃は本気でお父様と結婚するって言っていたもの」
「へええ、そうなんだ」
クククと笑えば、思わぬ反撃を喰らう。
「リリーだって言っていたじゃない。黒色の竜と結婚したいって」
「え?私?」
「ああ、言っていたわね。お父様に竜舎に連れて行ってもらってから、暫くの間ずっと言っていたわ。だからお父様が焼き餅を焼いて、竜舎にあんまり連れて行かなくなったのよ」
「ヤダ……覚えてない」
その時、何故か私の頭には、黒色の竜ではなくレジナルドが浮かんでしまった。




