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私が悪役令嬢?

 唐突に、聖女候補が私に呟いたこの言葉を思い出した。

「え?リリー、なんでそんな言葉を知っているの?」

「言われたの。礼拝堂で聖女候補に。私とすれ違った時に」

「そう。それは多分、聖女候補も転生者って事ね」

「でも、カメリア姉様なんでしょ、そのポジションは。なんで私が言われるの?」


「実はそのゲームの中では私が、冒険者をやっているのよね」

「カメリア姉様が?」

「そう。魔力が高いから、実力試しに始めるという設定で。このゲームって男性たちとの交流が街中や王城なの。街中だと私は大抵冒険者の格好、王城だとドレスだったわ」


「私じゃん」

「そうなのよ。ほら、私たちって後ろ姿は似ているじゃない。知っている人なら、髪の色の違いがわかるだろうけれど、そうじゃない人は区別がつかない事もあるし。だから、もしかしてと思って手紙を出したの」


「ねえ、もしかして留学したのって……」

「えへへ。逃げちゃった」

「やっぱり」

「だってどの男性とヒロインがくっついても私は悲惨な末路なのよ。最悪死ぬし。そんなのどんなことをしても避けたいって思うでしょ。だから今夜の舞踏会までは国を出ていようって思ったの。そのおかげで素敵な人を見つける事が出来たのだけれど」

婚約者である、ディートリンド公爵と見つめ合うカメリア姉様。


「そのツケが私に回って来ているんですけど!」

見つめ合っている場合か!


「ねえ、どうして中途半端な、今の時期に帰って来たの?隣国も社交シーズンでしょ?」

ローズ姉様が首を傾げる。

「ヒロインが5人の男性と出会いを完了させるのが、今夜の舞踏会だったからよ。そこに私がいなければ、悪役令嬢というもの自体存在しない事になるじゃない。ゲームでは仲良さげに踊る二人を睨む影があった、とかってナレーションが入るんだけれどそれが私なの。だからそれまで、いなくなろうと思ったのよ」


「なるほどね。気になって帰って来たのね。今夜が終われば大丈夫だと。じゃあカメリアはもう関係ないポジションになったわけね。婚約者も決まっている訳だし」

「そうそう。それにね、さっきから聖女候補ってヒロインの事を言っているけれど、どうして?この舞踏会でヒロインは『聖女』として紹介されるのよ。候補では大分違うわ」


「ああ、だからあの候補の娘は挨拶の時に、聖女としてって言い切ったんだね」

お義兄様がなるほどと納得した。


「彼女は聖女になるのは無理だろうって聞いたわ」

私の言葉に全員が私を見た。

「誰から聞いたの?」

「キャルム様から。聖魔法を持ってはいるけれど、魔力が少ないって」


「キャルムって教会の?」

「そうよ。インファーナ司教の息子さんですって」

「親しいの?」

「……これからも会いたいって言われたわ」

ガタガタッ

お父様とお義兄様が立ち上がる。


「なんだと!?」

威圧を放つお父様。ディートリンド公爵が驚いているから止めてあげて。


「お父様とお義兄様は座って!」

カメリア姉様がキッと二人を睨む。二人はブスっとした顔で座った。


「他の男性とはどんな感じなの?」

カメリア姉様だけでなく、ローズ姉様もお母様も目がキラキラしている。怖いって。


「えっと、アーロン様は舞踏会で会ったけど、警備中だから次に舞踏会で会ったら踊って欲しいって言われたわ。アーチー様は……」

「オスカー殿下とアーチー様は、リリーにご自分の色のネックレスを贈ってくれたのよ。お父様とカーターが返したけど」


「一番の相手はゼルガーナ様でしょ。彼もチョーカーを贈ってくれて、リリーは舞踏会で着けたわ。しかも、普段は参加しないはずの彼が、舞踏会に突然現れてリリーとだけ踊って、私たちを馬車まで見送ってとっとと帰ったのよ」

話を聞いたカメリア姉様が、しばらく考え込む。真剣なその顔が怖い。


「ねえリリー」

考えがまとまったらしいカメリア姉様が、私の肩をガシリと掴んだ。

「何?姉様。怖いのだけれど?」


「これはあくまでも私の推測なのだけれどね」


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