シールズ辺境領に到着
いつも、応援ありがとうございます。大変な時期ですが、協力して乗り超えましょう。
”パチッ”いつも通り目覚め良く起きる事が出来た。ちょっと見覚えの無いうす暗い室内を見て”?”と思って記憶を探る。そうだった、昨日作った野営用の簡易部屋だった。毛布から出て着替えて外に出た。まだ外は日が昇っていない様でうす暗かった。
「ララ、おはよう。顔を洗いたいのだけど、どうすればいい?」
「はい、こちらの桶の水を使ってください」
桶に入れて貰った水を使って顔を洗って、口をすすいだ。
「カイン様、おはようございます。昨夜はカイン様のおかげでゆっくり休む事が出来ました。作っていただいた壁のおかげで、いつもの半分くらいの警戒で済みました」
「じゃあ、そろそろ壁を消しても大丈夫かな?」
「いえ、壁を消すのは朝食が終わってからにしましょう。暗いうちに壁がなくなると、周りの商人達が吃驚してしまうかもしれませんので」
『ふーん、そういう物か?』と思ったカインだった。
その後、カイン達は朝食を取り馬車の準備をして出発の全ての準備を終えた。
「それじゃあ、壁を消すから壁から離れてね、【デリート】x3」
急に壁がなくなると周りの商人達が吃驚するとの事だったので3回に分けて壁を上から少しずつ消していた。それでも、商人達は吃驚して固まっていたが。その後、コンテナハウス?も【デリート】し出発をした。
---
カイン達は、順調に旅程を消費しシールズ辺境伯爵領に入りもう一日野営をした。サンローゼ領街を出発して4日目の昼、シールズ辺境伯爵領都に到着した。領都の入口に続く街道には、入場を待つ人々が並んで待っていた。貴族用の入口は別にあるらしく、カイン達は列に並ばずどんどん領都に近づいていく。領都に近づくと壁の外側は、入場待ちの人々を目当てとした露天商がいくつも出ていた。
「リディア母さま、沢山の人がいますね。商人達や冒険者の人達でしょうか? あっちには馬を沢山連れている人達もいますよ」
カインは、馬車の窓から見える人々をリディアに報告していた。
「このシールズ辺境伯爵領都は、先ほど通った分岐が王都に続いているから王都からの商人や冒険者達が多いのよ。その半分でも我が領に来てくれれば…」
「リディア母様、大丈夫ですよ。カインが道を石畳にすれば、多くの人や物が来てくれますよ」
アリスがすかさず、フォローをする。
「そうね、そうよね」
リディアが持ち直した所で、馬車が止まる。そして、馬車に近づく足音が聞こえ扉の前で止まる。
「失礼します、サンローゼ子爵夫人様。シールズ辺境伯爵 騎士団長 フィッシャーと申します。お迎えに参りました」
「出迎えご苦労様です」
「はっ、先導します」
フィッシャー騎士団長の先導により、馬車が動き出し門もすんなり通過した。シールズ辺境伯爵領都は、サンローゼ領街に比べて10倍の人口の5万人が住むためか、凄く人口密度が高い様に感じた。馬車で通っている道は、大通りで片側2台ずつ通れるほど幅が広かった。通りの両側は大きな商店が並んでおり賑わいも凄かった。
「リディア母様、商店の壁に所々ついている物は何ですか?」
アリスが四角い物体を指さす。
「あれは、明かりの魔道具ね。それぞれの大店が店前を照らすように設置しているの。夜になると一斉に明かりが灯り奇麗なのよ」
「へー、サンローゼ領街にもあるといいわね」
「そうねぇ…うちの街にも設置したいけど。設置費と維持費がね」
リディアがこめかみを抑えて目をつむってしまった。
「あっ、到着したようですよ! 大きなお屋敷ですね。あそこがリディア母さまが育ったお屋敷ですか?」
カインは話題を変えるために、わざと大きめな声でリディアに聞いた。
「長かったわね、そうよ。私が育った屋敷よ、久しぶりだわ。みんな元気かしら?」
うまくリディアの気持ちを切り替えられた様で、安心したカインだった。
馬車が屋敷の門を通り、屋敷の奇麗に整備された庭を過ぎ玄関に停車した。その後、馬車の扉が開かれリディアを先頭に馬車から降りた。玄関の前には、シールズ辺境伯爵とリディアによく似た女性が立っていた。
「シールズ辺境伯爵様、奥様。この度はお招き頂き大変ありがとうございます。サンローゼ子爵 ルークの名代として参りました、リディア=サンローゼと娘のアリス、4男のカインです」
3人はそろって礼をした。
「良く参られた、サンローゼ子爵夫人。道中はどうだったかな? さあ、中に入ってゆっくり話を聞かせてくれないか」
カイン達は、シールズ辺境伯爵に案内され客間に移動した。全員が客間に入り扉が閉まると、クルっとシールズ辺境伯爵が振り返る。
「リディア、よく来たなぁ。アリスもカインも変わりないか?」
「お父様、お久しぶりです。お母様、ご無沙汰しております。少しお痩せになった様に見えますが、大丈夫ですか?」
「リディアこそ、あら髪や肌が昔より奇麗になってない? どうしたの?」
「ふふふっ、その種明かしは後程。私の可愛い娘と末息子を紹介します。アリス、カインご挨拶して」
リディアが傍に控えていた2人の背中を押す。
「初めまして、シールズ辺境伯爵夫人様 アリス=サンローゼです。この度はお招きありがとうございます」
スカートをつまみお嬢様のご挨拶をする。
「初めまして、シールズ辺境伯爵夫人さま カイン=サンローゼです」
カインも続いて挨拶をした。
「二人ともそんなに緊張しなくていいわ。おばあちゃんと呼んでね、お菓子を用意しましたのでゆっくり旅の話を聞かせてね」
シールズ辺境伯爵夫人様、アイシャが2人を優しく抱きしめる。
「「はい」」アリスとカインは、アイシャを抱きしめ返した。
それから、カイン達は夕食、寝るまでの時間シールズ辺境伯爵夫妻と色々な事を話し本当の祖父母、孫の関係の様に仲良くなっていった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。




