魔道具を作ろう!
更新が遅くなりました、今日から新年度ですね。これからもよろしくお願いします。
太陽がまだ上がらない早朝。今朝は昨夜の冷え込みで霜が降り、僅かに残っている下草が白く染まっていた。
「今朝は一段と冷え込んだなぁ。新しい年の始まりには、キリッとするから気持ちが良いけど」
辺りが段々と夜から朝に変わって行く中、日課のランニングを続けている。吐く息が白く長く伸びて、ふわりと消えていく。
ランニングの終了と共に、太陽が顔を出して暖かな光が差してきた。カインは、太陽に向かって一礼二拍手をする。
「ガーディア様、明けましておめでとうございます。昨年は、色々ありましたがお守り頂きありがとうございました。今年もどうか、家族のみんな、領民のみんなをお守りください。お願いします」
深くゆっくりとお辞儀をして顔を上げた。
「よぉ〜し!今年も頑張るぞぉー!」
年初めの宣誓を大声で叫ぶ、カインだった。
この異世界では、元旦でもいつもと変わらない。ルークの元には、新年の挨拶をしに領街の商人が来るくらいだ。初詣もお年玉もない。
そんな訳で周りが通常営業なので、遠慮なく昨日の続きが出来る。カインは昨日に引き続きベンジャミンの部屋に向かった。
「ベン兄さま、カインです。昨日の続きをお願いしても良いでしょうか?」
カインはノックをした後、ドア越しにベンジャミンに声をかけた。
「良いよ、入っておいで」
中からベンジャミンの声が聞こえて来た。
「失礼します、あれクリス兄さま今日もですか?」
「なんだよ、その言い方? 可愛い弟とコミュニケーションを取ろうと待っていただけなのに」
「なんですか?そのめんどくさいおじさんのような発言は?イケメンなんですからがっかり発言はやめてください」
「はい、はい、仲がいいのはその辺で。カインあまり時間が無いから始めようか。昨日は魔石から【魔力】の取り出しと魔石へ【魔力】を吸収させる”構文”だったよね?」
「はい、今日は【魔法刻印】の”構文”を魔法陣化出来るか試したいです」
「じゃあ、早速始めようか。何をすればいいのかな?」
「特別な事は何も必要ないです、【魔力】の取り出し構文が書いてある魔道具を貸していただけますか?」
「この講義用の教材でいいかな?」
ベンジャミンがカバンからハガキ大位の銀板を取り出した。銀板には魔石と構文が刻印されていて【ライト】の生活魔法が使える魔道具だった。
「【魔法刻印】で【彫金】のスキルを使用し、構文をミスリルを薄くコーティングした金属版に刻印すると魔道具になるんだよ」
「へぇー、手で彫ったりしないんですね。逆に言うと手では出来ないという事ですか?」
「いや、【彫金】のスキルを取得するまでは手で彫って作るんだけど。これが結構大変でね、ちょっとでも間違えると発動しなくなったり余計な【魔力】が必要な魔道具になったりするよ」
「それは大変ですね。【魔法陣魔法】の【魔法陣化】は初めから使えるので、そこが違いですかね?」
カインは魔道具をベンジャミンから受け取り【解析】を使用する、続けて【魔法陣化】のスキルを使用すると魔法陣が現われる。
「「おおっ」」
ベンジャミンとクリスの感嘆の声がハモった。
「あれ? ライトの発動構文まで魔法陣化されちゃった? 最初の1構文だけって出来ないのかな?」
「最初の1構文だけ【彫金】で作ってみようか?」
カバンから銀板を取り出し【彫金】のスキルで最初の1構文だけの魔道具?を作ってくれた。
「ありがとうございます、ベン兄さま! もう一度【解析】、【魔法陣化】っと。あ、出来た!」
さっきより小さい魔法陣が現れた。
「次は、【魔法陣転写】で転写してっと」
カインは準備していた羊皮紙の上に魔法陣を転写した。
「へー、これが魔石から【魔力】を取り出す魔法陣なんだ。全く読み取れないけど魔法陣の真ん中のスペースに魔石を置けばいいのかな?」
ベンジャミンが魔法陣の中央にある500円玉くらいのスペースを指さした。
「えーと、多分あっています」
羊皮紙に転写された魔法陣を【解析】しながら説明をする。
「次に、【ホットウォーター】の魔法陣を転写して…あれ?とりあえず横に【魔法陣転写】これどうやって繋ぐんだ?」
羊皮紙に大小の魔法陣が10㎝くらい間を開けて並んでいた。
「線とかで繋げちゃえばいいんじゃない?」
クリスが2つの魔法陣を見ながら簡単に言う。
「クリス兄さま。それ良いかもしれません。この魔力インクで書けば出来そうです。何処と何処をつなげましょうか?」
「そうだな、此処と此処の▼マークを繋げちゃえばいいんじゃない?」
二人で羽ペンを持ちながら話していると。
「それは、やめた方がいいな。この手の物を変にいじると予想できない事が起きやすいから」
ベンジャミンがしみじみつぶやく。
「や、やめようか、カイン」「そうですね、クリス兄さま」
二人で乾いた笑いをしながら、ゆっくり羽根ペンを置いた。
「うーん、これを繋げる方法が無いと魔道具化は難しいよなぁ? この間に何か文字でも書くのかな?それとも転写前に何かするのかな?」
カインは2つの魔法陣を見つめ、【解析】も使いながら考えていた。
「取り出した【魔力】をもう片方の魔法陣に移動させるんだから、【魔法刻印】の”++<”を加えるのはどうかな?」
「ああっ、いいかもしれません。追加してみましょう!」
カインは、2つの魔法陣の間に”++<”の記号を書き加える。その瞬間、カインには魔法陣がうっすら発光したように感じた。そして、魔法陣を触りながら【ホットウォーター】と唱えると熱湯が出てきた。
「やったぁ!成功だぁ!」
カインは飛び上がって喜んだ。
「カ〜イ〜ン?これはどうするんだい?」
ベンジャミンがとても冷たい殺気を放ちながら、熱湯でビショビショになったカバンを指さす。
「ご、ごめんなさい!!」
カインは、異世界で初めてのジャンピング土下座を行った。
ここまで、お読みいただきありがとうございます。




