2回目の異世界での年越し5
何時も誤字脱字のご報告ありがとうございます。
年越しの晩餐会はかなり盛り上がっており、先ほどルークがワイングラスを片手に「今日は無礼講だから思いっきり楽しもう!」と発言してからはかなり凄い事になってきている。発言者のルークは、同じ酒好きのランドルフ、ロイド料理長と3人でゲラゲラ笑いながら壁際で盛り上がっている。
カインが本日2本目になる、ホロホロ鳥のもも肉にかぶりついていると。
「カインいっぱい食べてる?」
リディアが”だいがくいも”を大量に乗せた皿を、持ってきてカインの隣に座った。
「はい。父さまとベン兄さまが獲ってきてくれた、ホロホロ鳥をいっぱい頂いています」
食べかけのもも肉を得意げに見せる。
「それは良かったわ。カインが頑張ったのだから沢山食べて良いのよ。でも本当に、無理だけはしてはいけませんからね。カインは洗礼の儀を受けてから、すごく大人になってしまって少し寂しいわ」
「そうですか? 【魔法】が使える様になって、色々考える時間が多くなったからでしょうか?」
「まあ、そのおかげで沢山美味しい物を食べられたり、”浴場”なんて気持ちの良い物を作ってもらえたのだけど。あまり早く大人にならなくても良いですからね。私は可愛いカインが大好きですから」
リディアはそっとカインを抱きしめた。
「さっ、”だいがくいも”を頂きましょう♪」
しばらくカインを抱きしめて満足したのか、持ってきた”だいがくいも”を本当に美味しそうに食べ始めた。
「カイン、こんな所にいたんだ。このハンバーグって料理美味しいね」
クリスが大きなハンバーグをお皿に3つほど載せて、カインの席にやってきた。
「お口に合ってよかったです。ハンバーグは”勇者様の書”に書いてあったレシピなんです」
「この噛むと肉汁が溢れてくるのがいいよね。いくつでも食べられちゃうよ」
クリスは、かなり大きめに切ったハンバーグを一口で食べた。
「アーサー兄様、こっちこっち」
からあげとエールを持って座る場所を探していたアーサーにクリスが声を掛けた。
「母様、あの仕事の量は暴力ですね。なぜもっと文官を増やさないのですか?」
少し酔いの回った声で、この2,3日行った仕事を振り返ってリディアに愚痴をこぼすアーサー。
「何を言っているの、あれはまだまだよ。いつもはあれの1.5倍くらいあるんだから。それにカインのおかげで少し良くなってきてるけど、文官を増やせるほど余裕は無いわ」
”だいがくいも”をフォークに刺しながら、『あなた甘いわ』と暗に匂わせながら言う。
「だから、戻ってくる時には優秀な人材を2,3人連れて来ないと倒れるわよ」
なかなか、厳しい現実を突きつけていた。
「「アーサー兄様頑張ってくださいね」」
クリスとカインの声が重なる。そしてこれ以上いると巻き込まれそうなので2人でそそくさと席を離れた。
エールの樽の横で給仕している、ベンジャミンの元に行く。
「ベン兄さま、何をされているんですか?」
「あ、カインか。あまりにもエールが温かったから私が冷やしてるんだよ。それが結構好評でね、嬉しくなってしまって続けてるんだ。それにここなら沢山呑めるしね」
ベンジャミンも酔っているのか、いつもより言葉遣いがフランクだった。
「何か肴める物でも持ってきますか?」
「そうだね、あの”角煮”が食べたいかな?」
「”角煮”ですね、すぐ持ってきます」
「お待たせしました。”角煮”です。あと”からあげ”も少し持ってきました。今日の”からあげ”はホロホロ鳥なので余計美味しいです。ありがとうございます」
「ありがとう。ホロホロ鳥も喜んで貰って良かった良かった」
やはりいつもより機嫌が良い感じがする。
カインは思い思いに、年越しの晩餐会を楽しんでいる家族や使用人の皆を見て来年も良い年に成るといいなぁと思っていた。個人的には”お米”を探して食べる事を目標にしようと決めた。
『どうか、変なフラグが立ちませんように』
次話から魔道具作りを始めます。よろしくお願いいたします。




