2回目の異世界での年越し4
“パチパチパチ、ジュクジュク” 石窯から聞こえる薪が燃える音とサツマから噴き出す“蜜”の音がカインとガーディーのテンションを上げ続けていた。
「カイン様、凄く甘い匂いがしてきましたね」
「うん。でもまだまだ、我慢だから。そろそろサツマを返さないと」
2人は、長いトングを使って石窯の中の20本ほどのサツマを返していく。暴力的に美味しそうな匂いが2人を襲うが鉄の意思で耐え作業を黙々と続けている。
それから耐える事20分、カインはこの日の為に削り出した細い木の棒を、見るからに美味しそうなサツマに突き刺す。木の棒は“スッ”と音が鳴った様な錯覚を感じるほど抵抗なく刺さった。続けて数個試しても同じようにすんなりと刺さった。
「よぉーし。いい具合に焼き上がったみたいだ、取り出すぞぉ!」
用意していた保温用の入れ物に焼き上がったサツマを次々に入れていく。20本すべてを入れ終えて蓋をした。
「ガーディー、あと20本も石窯に入れるから薪の追加お願いね。僕はサツマを入れるから」
カインは、せっせと生サツマを石窯に入れる。ガーディーもせっせと薪を追加する。2人共保温用の入れ物を、視界に入れないようにして作業を続けた。全ての作業が終わると同時に互いの顔を見つめる。
「ガーディー」「カイン様」「「味見をしてみない?(みませんか?)」」
声が重なり2人は、同時にうなずきガーディーが保温用の入れ物の蓋を開け、カインが1本サツマを取り出し半分に割る。片方をガーディーに渡し同時にサツマに噛り付いた。
「「美味しい! 甘ーい!!」」
2人の声が響き渡った。その後も夢中に食べていたのですぐに食べ終わってしまった。
「カイン様、このサツマ美味しすぎです。甘さも2倍以上甘く感じます。このねっとりとした食感も最高ですね。ノエルにも食べさせてあげたい」
口早にサツマの食レポをしたガーディーだったが、最後には寂しく下を向いてしまった。
「今夜の年越しの晩餐会に呼べばいいんじゃない? 石畳作り、砦作りや浴場作りまで手伝って貰ったんだから大丈夫だよ。ここはしばらく大丈夫だから、呼んで来たら?」
ガーディーは、カインの手をガシッと掴み「ありがとうございます」とお礼をの言い走って行った。カインはその姿を微笑みながら見送った。
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ガーディーが戻るまでに、サツマを返したり薪を追加したりと忙しく作業をしつつ、メイドがお湯の追加をお願いしてきたりとあっという間だった。2回目の美味しそうに焼き上がったサツマを、同じように保温用の入れ物に入れて屋敷の中に運び込んだ。安心して下さい、火の始末はきっちり行いました。ガーディーが。
食堂に運び込むと、すでにロイド料理長達が作った料理が並んでいた。肉を沢山使った料理が所狭しと並んでいた。カインのお腹が、“グ〜”とかなり大きめになった。
「カイン坊ちゃん、つまみ食いはいけませんよ」
ロイド料理長が“かすてら”をお盆に載せて運び込んできた。
「つまみ食いしてません。あなたが怖くて出来るはずがない」
「何か言いました?」
「なんでもないよ。それより今年は凄いね。こんなに肉料理を見たの初めてだよ」
並べられている料理を指さしながら、嬉しさをアピールする。
「それはもう旦那様を始め皆様に沢山獲って来て頂けたので、料理人一同限界まで頑張りましたから。“角煮”もありますから存分にお召し上がりください。私はあそこの“ワイン”を存分に飲ませていただきます」
何時もは見ないような笑顔でロイド料理長が答えた。
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ざわざわざわ、ざわざわざわ。食堂にカイン達と屋敷の使用人達、騎士団長と隊長達、そしてゲストが集まっていた。
「あ、あああ。よし。皆、準備ご苦労であった。今年は本当に色々あって大変だったが、こうしてまた一人も欠けることなく年越しの晩餐会を迎えられて嬉しく思う。今夜は思う存分食べて、飲んで楽しんで欲しい。今年は特に、騎士団やアーサー達の活躍により沢山の肉が用意できた。そしてベンジャミン、クリスがさらに追加で肉を用意してくれている。女性陣はカインが考えたお菓子も沢山あるので、楽しんで欲しい。それでは、乾杯!」
「「「「乾杯!」」」
全員の乾杯の掛け声が揃い、晩餐会が始まった。それぞれ、肉料理に走る者、お酒の樽に向かって行く者、お菓子を我先に確保しに行く者と思い思いに楽しんでいた。カインはと言うと“角煮”を最初に確保しサツマを約束通り2本取り、ホロホロ鳥の丸焼きをこんもりと皿に盛っていた。
今夜はビッフェ形式の為、特に席は決められていないので近くの椅子に座り“角煮”に齧り付いた。口いっぱいに醤油の味と甘さが笑ってしまうほど美味しかった。
「カイン!このサツマ凄い甘い!!何でこんなに甘いの!!!」
アリスが口をまだモグモグさせながら、テンションマックスでカインに詰め寄って来た。
「アリス姉さま、喜んで貰えてよかったです。先ほど見てていただいた石窯で焼いたからですよ」
「あの石窯は、魔法でもかかっているの?ハチミツみたいに甘いサツマなんて、最高!」
「まだまだ美味しい料理があるので、サツマだけでお腹をいっぱいにするともったいないですよ」
「わかった!もう一本だけ食べて他の料理も堪能する事にする!」
カインは、『まだ食べるんかい』とツッコミつつ可愛いアリスの姿を見送った。
お読みいただきありがとうございます。すみません、もう一話続きます。




