2回目の異世界での年越し3
本日もお読みいただきありがとうございます。もしかしたら後程内容を少し変更するかもしれませ。ご了承願います。
「この魔石に【魔力】を吸収させる”構文”を使う時は、吸収させる【魔力】の量の設定を忘れずにね。ここに数字を記載してね」
ベンジャミンは魔石を置く場所の下部を指さす。
「”吸収量”を記載しないと、魔石の限界まで【魔力】を吸収して魔石が爆発するから気を付けてね。最初の頃は”吸収量”を指定していなくて、何度か爆発して大変だったんだ」
とんでもない事をさらっと楽しい思い出の様に語るベンジャミン。
クリスとカインは、顔を見あってため息をついた。
「魔石それぞれの【魔力】吸収量を見定めるのは、どうするのですかベン兄さま?」
「魔石の限界が近づいてくると魔石の色が通常の濃い紫色から、赤色の強い紫色になって魔石の中にキラキラ光る物が見えるようになる。その状態が大体限界かな?光が強くなって点滅しだしたらもう手遅れだね。でもその光がとてもきれいなんだ」
ベンジャミンが遠くを見て言った。
「それはなかなか、スリルあっていいな。見てみたいなぁ、その点滅するきれいな光」
好奇心がうずくのかクリスがソワソワしながら、変な事を言い出した。
「ちょっとクリス兄さま、変な事言い出さないでください。落ち着きましょう。ベン兄さま、毎回目で見て限界値を監視してないですよね?」
「私がいくつか試した実験結果から限界値を決めているよ。ゴブリンの魔石なら10,000、オークなら50,000とかね。この数値なら絶対ではないけど、光が出始める前で止められるからね」
ごそごそと何時もの”ベンジャミンかばん”から、小さな魔石を取り出した。
「カイン、このゴブリンの魔石に【魔力】を吸収させてみる? この【吸魔器】なら吸収量を変更できるし」
またも、”ベンジャミンかばん”から【吸魔器】を取り出して何かを設定して魔石をはめ込みカインに投げてよこした。
カインは【吸魔器】をキャッチして少し考えたが、ベンジャミンとクリスの期待に満ちた視線に負けしぶしぶ腕にはめた。数秒後、【吸魔器】を付けた腕から魔力を消費するあの感覚があり、以前のように赤い宝石が光った。
「ビックリしたな、こんなすぐに設定値まで溜まるなんて。これはカインに限界値付近まで【魔力】を込めて貰う実験は危険すぎて無理だね」
『やっぱり、羅刹ベンジャミンは変わっていなかった』先ほどよりも深いため息をつくカインだった。
扉をノックする音の後、「カイン様はいらっしゃいますか」とガーディーの声が聞こえた。
「ガーディーどうぞ。僕はここだよ」
「失礼します。良かった、こちらにいらしたのですね」
ガーディーがベンジャミンとクリスにお辞儀をした後、カインを見つけ安堵の表情を見せた。
「そろそろ、石窯に火を入れませんと間に合わなくなると思いまして。それにアーサー様もカイン様をお探しでしたが」
「しまった!夢中になって時間を忘れちゃったよ。ベン兄さますみません。途中で申し訳ございませんが失礼させていただきます。年越しの晩餐会に出す焼き芋を作りに行ってきます」
「うん、いいよ。続きは明日かな? 火傷しない様に気を付けるんだよ」
ベンジャミンがやさしく送り出してくれた。
「「失礼しました」」
カインとガーディーは退室し訓練場まで駆け足で移動した。
「ありがとうね、ガーディー。危なく年越しの晩餐会までに、出来上がらなくなる所だったよ。早速薪に火を入れて石を温めよう」
カインとガーディーは、慣れた手つきで薪に火をつける。しばらくするとパチパチと音を立てながら薪に火が付き始めた。2人は次々に薪を投入し火を大きくしていく。
「よし。このまましばらく放置して石が温まったら、サツマを投入して焼き上がりを待とうか。ガーディー、僕は”浴場”の準備をしてくるから火の番をお願いね」
「畏まりました。お急ぎになって転ばない様にお気を付けください」
カインはまたも駆け足で今度は”浴場”に向かった。
カインが”浴場”に着くとメイド達が丁度”浴場”の掃除を終えて浴槽に水を入れている所だった。
「ごめんね、みんな。遅くなっちゃった。すぐ【ホットウォーター】を唱えるからね」
「カイン様、この度は私共の願いをお聞き頂きありがとうございます。まだ、時間はありますからゆっくりでも良いのですが?」
作業をしている中でもベテランのメイドが返事をした。
「ううん、大丈夫。僕もまだやりたい事があるからすぐやっちゃうよ。今日は少し寒いから、熱めが良いかな? 「【ホットウォーター】」
「ご配慮ありがとうございます。熱めにして頂けると助かります」
カインは両手からバシャバシャと熱湯を浴槽に注いでいく。しばらくすると浴室の中に湯気が立ち温かくなってきた。そのままカインは、浴槽の半分くらいまで熱湯を注いだ。
「あとは、水を入れて貰って調節してね。もしぬるかったら訓練場にいるから、遠慮なく呼びに来てね」
「「ありがとうございます」」
カインは、また駆け足で石窯の所に戻った。
石窯に戻るとガーディーが丁度サツマを投入し始めている所だった。




