2回目の異世界での年越し2
「カ〜イン!何を作ったの?」
カインがガーディーと薪を割っていると、いつの間にいたのかアリスが話しかけて来た。
「アリス姉さま!? いつの間に…えっと、年越しの晩餐会に出す焼き芋を作る為の窯を作ってました」
意識の外から話し掛けられたので、内心ドキドキしながら返事をした。ガーディーもビックリしたらしく、目を見開いていた。
「でも、焼き芋なら焚き火じゃないの?」
既視感を覚える質問にカインとガーディーは笑い出してしまった。
「何か変な事、私言った!?」
腰に手を当ててアリスがプンスと怒っていた。
「いえいえ、アリス様。アリス様がされた質問が、先ほど自分がした質問と全く同じだったので。すみません」
ガーディーが深く頭を下げて謝罪をした。
「そうなの?まあ、それならしょうがないわね。で、焚火じゃない理由を教えてよ」
怒りのゲージは小さくなったが、疑問を疑問のままにしないらしい。
「これは、石焼窯で石を熱してサツマを焼く窯です。これを使って焼くといつも以上に甘く焼けるんです。アリス姉さま」
「なんですって! この前より甘く焼けるの!ねぇ、どのくらい甘くなるの?」
”甘い物”が大好きなアリスは、ずずいっとカインに詰め寄り確認する。
「ち、近いです。どの位とは一概には言えませんが、個人的には1.5倍くらいかと」
アリスは目をキラキラにして、カインの話を食い入るように聞いていた。
「それよりも、何かご用事があったのではないですか?」
アリスをゆっくりと引き離しながら、話をそれとなく変える。
「そうだった!アーサー兄様とベンジャミン兄様が呼んでいたわよ」
「そうですか、後は焼くだけなので一度戻りますか。ガーディー、年越しの晩餐会が始まる2時間前くらいに再集合ね。それじゃまたね」
カインはそそくさとその場を立ち去った。アリスは石焼窯が気になるのか、その場に留まりいろいろな方向から石窯を眺めていた。
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それぞれ何処で呼んでいるのかを聞き忘れてしまったカインは、出会うメイド、出会うメイドにアーサーとベンジャミンが何処にいるのかを確認して漸くアーサーがルークの執務室にいる事を聞きだした。
カインは執務室のドアをノックし入室の許可を待っていた。
「カインか、どうぞ」
「アーサー兄さま、お呼びとアリス姉さまに聞いたのですが?」
「何か作業中だったのか? 頼みたい事があってな。年越しの晩餐会の前に”浴場”を使いたいと希望があって、協力してほしい。どこで聞きつけたのか、母様まで事前に使いたいと言われてな」
「問題ないですよ。いつでも言ってください」
まだまだ書類処理が残っているアーサーを残して、今度はベンジャミンを探しに出発した。多分書庫だろうと見当を付けて行ったが、ルークとリディアがランドルフと書類を前に話をしていた。中々白熱していたので静か~にお暇させて貰った。
「うーん、ベン兄さまはどこだろう?部屋かな?」
急いでベンジャミンの部屋に移動しドアをノックした。
「カインかい?待っていたよ、入って来て」
「失礼します、お呼びだとアリス姉さまにお聞きしたので、あれ?クリス兄さまも一緒でしたか」
カインが扉を開けながらベンジャミンに話しかけると、部屋の中にはベンジャミンとクリスが机の上に羊皮紙を広げて何かを話し合っていた様子だった。
「そうそう、昨日の【魔法刻印】の話の続きをしようと思ってね。忙しかったかい?」
ベンジャミンがカインに優しく確認をして来た。
「僕は何か面白い事が無いかとうろうろしていたら、カインが来るって言ってたから一緒に待ってたんだ」
クリスが楽しそうにカインに話しかけた。
「ベン兄さま、こちらこそすみません。昨日続きをお願いしてたのに遅くなってしまって。それよりもクリス兄さま、何で僕が来ると面白い事になるのです?」
「えっ、だってベンジャミン兄様とカインが揃うといつも何か面白い物を作ったり、話していたりするじゃないか? いつも何か新しい物が出来たりするから、僕にとってすごく面白いんだ」
座っている椅子をゆさゆさと揺らしていた。
「二人共、じゃれあってないで始めるよ。今日はあんまり時間が無いからね。遅くなると折角のごちそうを食べ損なうから。昨日は魔石から【魔力】引き出す”構文”を説明したから、今日は逆の魔石に【魔力】を込める”構文”を説明するね」
説明しながらベンジャミンは、いつものカバンから少し青味が掛かった羊皮紙と魔石、そして銀色のプレートを取り出した。
「まずは、私が創った魔石に【魔力】を吸収させる”構文”がこれだ。【魔力】を引き出す”構文”と大部分が同じだけど、【魔石】を配置する場所と個々の文字の部分が異なる」
説明を行いながら、羊皮紙の上に書いてある円と”++<”を指さした。
「この”++<”が【魔力】を人から引き出し此処設置した魔石に吸収させる”構文”だ」
何時も物静かなベンジャミンがボリュームを上げて説明していた。
『あれ?あの記号は、プラスと不等号じゃないかな?』カインは首をかしげながらベンジャミンが指さした記号を凝視していた。




