2回目の異世界での年越し
「うーん、1年早かったなぁー。1年前というか、明日だけど【魔法】を使える様になって色々頑張った1年だったと思うな。来年早々に異世界初の旅行もあるし、楽しみだ」
カインは、日課のランニングと”循環”をやり終えて、少し遅めに上ってきた太陽を見ながらこの1年を思い返し来年の事に思いを馳せていた。
「カイン様、おはようございます。今朝も良く晴れて良い年越しになりそうですね」
ガーディーがスコップを片手にカインに近づいて来た。ガーディーは最近とてもにこやかだ。なぜなら年が明けたらノエルとの結婚式が待っている為だ。
「ガーディー今日もよろしくね。やっとサツマの追熟完成して食べれるから、起きてからずっとワクワクが収まらないんだ」
カインは興奮を抑えらない様子で熱く語っていた。
「それで、今日は何を作るんですか? 芋を焼くのであれば焚火が一番かと思いますが?」
「今日は窯を作るんだ、石焼芋を作るためにね」
「石焼芋ですか?それは食べられるのですか?」
「違うよガーディー、石を焼いて芋を低温でじっくり焼くんだ。そうすると甘みがより増すんだよ。焼いているとね、芋からジュクジュクと甘い蜜があふれてきて、ねっとりとした食感になりすごく美味しんだよ」
「聞いているだけで、よだれが出てきますね。カイン様はその石焼芋をどちらでお召し上がりになったのです?」
ガーディーが不思議そうに確認してきた。
「えっ、そ、それは、あ、あれだよ。そう”勇者様の書”に書いてあっていつの間にか食べたような気になっていたんだ」
『あっぶねぇー。ガーディーも意外に鋭いな、気を付けなきゃ』
「さて、石窯を作るよー。「クリエイトクレイ」!」
カインが【魔法】を唱えると道具小屋の横にズズズっと音を立てながらピザ窯のようなものが出来上がった。
「続けて、「ストーン」!」
バラバラバラと2㎝位の石が窯の中に広がった。
「よし、イメージ通りだ。後は”年越しの晩餐会” 2時間前に火を入れて焼き始めれば間に合うかな。今の内にサツマと薪を持ってこうか。ガーディー手伝って、お願いね」
「畏まりました」
微笑みながらガーディーは、答えた。
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その頃、厨房は戦場のような様相になっていた。例年以上に大量の各種の魔物肉が積み上がっていて、料理人は焼いたり、蒸したり色々な調理法で料理を作っていた。
「そろそろ、ホロホロ鳥の丸焼きに取り掛かれ。間に合わなくなるぞ。スープ担当、ワイリーボアのあばら骨を水から煮始めろ時間が無いぞ。サラダ担当、マヨ用の玉子の撹拌は終わったのか?・・・」
ロイドの指示が次々と飛ぶ。朝から休みも取れないほど忙しいはずなのに、みんな一様に笑顔だった。
「おい、ランドルフ!今夜の酒は何樽用意されているんだ?2樽かそれとも3樽か?」
「ロイドそんなにあるはずがないだろう。でも旦那様が2樽のワインを用意してくださった。それも隣の領からこの日の為に取り寄せてくださった。味わって飲むんだぞ」
二人は、お互いに顔を見合わせて笑った。
着々と”年越しの晩餐会”の準備が進んでいた。




