買い物をしよう2
2話目です。よろしくお願いいたします。
ラシーナは「すみません」と一礼をカインにしてクルっと男達の方に向きを変えた。その直後”キン”と音が鳴った様な気がしてスッと音が消えたような感じになった。”ドサッ”と男達は目に恐怖を浮かべながらしりもちを付いてガタガタと震えだした。
『うん?何が起きたんだ?』
「このお方をどなたと思っての狼藉ですか? このお方は、ご領主様の4男 カイン=サンローゼ様です。貴族のご子息様に対してその様な対応、命を捨てる覚悟があるのですか?」
ラシーナさんが凍り付くような冷たい声で男達に言い放つ。
『ええっ、バレてたの?やばいって早く止めないと』
「ラシーナさん、突然訪問した僕がいけないんですから。気にしませんので許してあげませんか?」
「カイン様がそうおっしゃるのであれば。あなた達、カイン様より寛大なお許しが出ました、早急に立ち去りなさい」
ラシーナがそう命令をすると、男達はバタバタと外に逃げていった。
「ララぁー、なんで僕が来る事をばらしちゃったの?」
いつの間にかカインの後ろに立っているララに首だけ向けて聞いた。
「ランドルフ様の教育の賜物です、カイン様にかかる危険を無くすのが私の今日の仕事ですから」
ドヤ顔でカインを見ていた。
「はぁー、ラシーナさん。ご迷惑をおかけしました。僕がちょっと好奇心を出したばっかりに、あの人達にも悪い事をしてしまいました。すみません」
「そんな、カイン様。あの者達には良いお灸になったと思います、お気になさらずに。さて魔石でしたね、あちらの会議室でご覧いただけますか?」
カイン、ララ、ラシーナは、左奥にある10人程の会議室で、テーブルを挟んで魔石を見ていた。ラシーナは冒険者ギルドにある大小の魔石を沢山持ってきてくれた。ほとんどの魔石は濃い紫色をしていたが、中には赤や青と言った魔石もあった。
「こちらの小さいのがゴブリンなどの小さな魔物の物です。少し大きめの物がオーク、こちらがフォレストウルフです。こちらの赤色の魔石は、火の属性の魔石、青色は水の属性の魔石です」
「へぇー、色々あるんだね。どうやって普通は使うのですか?」
カインは魔石を触ったりしながら聞いた。
「通常は魔道具を動かすために使用します。このゴブリンの魔石ですと【ライト】の魔道具を20回くらい動かせます。後は錬金術師が術を使うために購入していったりでしょうか」
ラシーナが魔道具を持ってきて魔石をセットする場所を教えてくれた。
「それじゃ、オークとフォレストウルフの魔石を5個づつ貰えますか。いくらです?」
「お買い上げありがとうございます、オークの魔石が1個銀貨20枚、フォレストウルフが1個銀貨15枚で銀貨175枚です」
「金貨2枚でお願いします、持って帰れますか?」
「はい、今お持ち帰り用の袋とお釣りをお持ちします」
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カイン達はラシーナにお礼を言って、冒険者ギルドを後にした。
「ねぇ、ララ。ラシーナさんって冒険者ギルドでどんな立場の人? 偉い人なのかな?でもあの冒険者達は、気軽に話していたよね」
「カイン様、良くお気づきで。ラシーナ様は、元Aランク冒険者でベテランの受付嬢です。ある意味あのギルド長より権力を持っていたりします」
「そ、そうなんだ。気を付けよう。さて、急がないとお菓子を作る時間が無くなっちゃう」
カイン達が帰るとすでにペドロ商会より荷物が届いていた。お昼ご飯の時間は過ぎていたので、また厨房のテーブルでサンドウィッチを食べさせてもらった。
「カイン坊ちゃん、何を作るんです?」
ロイド料理長が昼食を食べ終えたカインに質問してきた。
「今日は、2つお菓子を作ります。1つ目は、”だいがくいも”。2つ目は”かすてら”だよ。”だいがくいも”はサツマを使って。”かすてら”は焼き菓子の一種かな? ロイド料理長やみんなに試食してもらうからよろしくね」
厨房にいた料理人やメイド達から歓声が上がった。早速カインは料理人に今日買ってきた油などの必要な材料を揃えて貰った。
「じゃあ、時間が無いので2つ同時に作りたいと思います。”だいがくいも”班は、サツマを洗って長さ10㎝で5㎜角の長細い形にして。量は皆に行きわたる位かな? ”かすてら”班は、10個の卵に【浄化】の【魔法】を掛けた後かき回して」その後も次々と指示を出して工程を進めていく。
”だいがくいも”は、こんがりと油で揚げられてハチミツで作られた”タレ”とからめて買ってきたゴマらしきものを振りかけた。”かすてら”は、卵をかきまぜた後小麦粉とハチミツと油を少々まぜ深い鉄鍋にいれてオーブンに入れた。もう少し焼き目がついたら蓋をしながら焼く予定だ。
厨房の中には、甘い匂いが漂っていて出来上がりを待つ料理人とメイド達が完成を、今か今かと待っていた。最初に”だいがくいも”が出来上がったので1つ取り味見をした。その後、”かすてら”も一切れ口に放り込む。
「うん、両方とも美味しく出来た。みんなも食べてみて?」
”みんな”の”み”の字あたりで、待ち構えていた料理人やメイド達が殺到し”だいがくいも”や”かすてら”を我先にと口に運んだ。
「「「おいしいー」」」
「このカリっとしているのに中がホクホクしていて」「ハチミツの甘さが程よくて美味しい」「このゴマ?の風味がすごくいい」「何、このふんわりとして甘い食べ物は?」「この端っこ甘くて美味しい」
中々の好評で良かった。喜んでいる皆を見ているとロイド料理長が近づいてきた。
「カイン坊ちゃん、新しいレシピをありがとうございます。でも”だいがくいも”でしたか、切り方をもう少し大きくしても良いのではないでしょうか。ホクホク感が増すと思うのですが。それと”かすてら”は、時間を置いてしっとりさせるとより美味しくなると思います」
「さすが、ロイド料理長。アリス姉さまに作る時は、そうしてくれる?」
カインは、ロイド料理長にお願いした。そして、試食会はあっという間に終了し、アリス姉さま用の”だいがくいも”の調理が始まる。少し多目に作ってもらうようにお願いした。
「ララ、アリス姉さま用の”だいがくいも”を少し多めに作ってもらうから、モニカさんとラシーナさんに届けてもらえるかな? ララには”かすてら”を用意するけどいい?」
「もちろんです!!」
ララは、今日1番の笑顔で答えた。
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