買い物をしよう
すみません、2日ぶりの更新です。本日は、2話更新になります。よろしくお願いいたします。
サンローゼ領街のペドロ商会の食糧・穀物を中心に扱う店舗。沢山の人々が買い物をしたり、持ち込んだ食材などを売り込むための行商人であふれていた。1人のメイド服を着た女性が、従業員に指示をしている女性に声を掛ける。
「こんにちは、女将さん。ちょっとお時間よろしいですか?」
「あら、ララちゃんじゃないの。今日は納品の日じゃないわよね?何か悪い知らせだったりしないわよね?」
顔見知りを見つけて嬉しそうな表情の後、少し表情を曇らせる。
「大丈夫ですよ、良い知らせだと思いますよ。今日はカイン様をお連れしたんです。こちらがサンローゼ子爵家4男のカイン=サンローゼ様です」
いたずらっ子の様な表情で、今日の訪問理由を説明した。そして、すっとメイドの表情に戻るとカインを女将さんに紹介した。
「本日は、我がペドロ商会にお越しいただき大変光栄です。私は女将をしております、モニカと申します。よろしくお願いいたします」
モニカはとても美しい所作で、カインに挨拶をした。
「初めまして、カイン=サンローゼです。こちらこそお願いいたします」
カインも名乗り挨拶をした。道雄の記憶があるのもそうだが、サンローゼ家では必要以上に貴族の子息だからと言って、領民に対して横柄な事はしない様にしっかり教育されている。
「私の様な者に、ご丁寧にありがとうございます。”石畳”様にご来店頂き幸せでございます」
『”石畳”様ってなんだ?』
「忙しい所お邪魔してしまいすみません、ペドロ商会なら僕が探している物が見つかるとララに教えてもらったので」
「まあ、ララがそんな事を。ペドロ商会が全力でカイン様のお探しの物をご用意いたします」
モニカはずいっと一歩カインに近づき、真剣な表情で答えた。
「それで、どんな物をお探しなのでしょうか?」
「植物から採取した油と黒い小さな種と鳥の卵はありますか?」
「植物から採取した油ですか・・・確か先日仕入れた油が豆から採った油だったと。黒い小さな種ですか?いくつかあるので見てもらえますでしょうか。あと鳥の卵も。あの、もしよろしければ何に使われるのか教えていただけますか?」
「ああ、アリス姉さまにお菓子を作るんですよ。よろしければ届けさせましょうか?」
「えっ、は、はい。お願いいたします。さ、こちらでございます」
モニカはびっくりし、ニッコリと微笑んだ。
カインは、大豆の油1瓶とゴマと魔物の卵を購入しペドロ商会を後にした。購入した物は、ペドロ商会に屋敷まで運んで貰うように依頼した。カインとララは、石畳になった領街の道を歩いていた。
「ララ、魔石を購入したいんだけど何処なら買えるかな?」
「そうですね、商会でも購入出来ますが、種類や数を揃えるなら”冒険者ギルド”ですかね?」
「冒険者ギルドかぁ、絶対行くとテンプレの様に絡まれるかな?」
カインは、少し微笑みながら独り言の様にぶつぶつとつぶやく
「何か言われました? 大丈夫です何があっても私がお守りしますから!」
「そう?じゃあ案内してもらえる?」
屋敷とは逆の方向に進路を変更し、街の中を移動している。街には色々な人々の生活が営まれていた、露店を開いている人、大きな荷物を運んでいる人、走り回る子供たち。そして、学者の服を着ているエルフ、大きな声で弟子と思われる人に指示を出しているドワーフ、そして各種獣人達がいた。カインはファンタジー世界の街歩きを楽しんでいた。
「ねぇ、ララなぜあの人たちは首輪をしているの?」
そう言ってカインは視線をその人々に向けた。そこには街の人々よりも粗末な服を着て首輪をした数人の男女が作業をしていた。
「カイン様、あの人々は奴隷です。我が国には、犯罪奴隷、借金奴隷、短期奴隷などの奴隷がいて色々な制約を掛け、分かる様に首輪をしています」
『ファンタジーだねぇ』
「家の領街にも奴隷が居たんだね、生きるって大変だね」
そうカインはつぶやき、その場を離れた。
しばらくして、剣と盾の看板を掲げている石造りの大きな2階建ての建物に着いた。建物に戦士風の女性や魔法使い風の男性が入っていくところだった。
『おお、あれが冒険者達かぁ。やっぱりテンプレってあるのかな?』
「ねぇねぇララ、試したい事があるんだけど少し僕より遅れて入って来てくれないかな?」
「駄目です、誰がカイン様をお守りするのですか? もし怪我などされたらランドルフ様に叱られます」
「ララ、僕が怪我をするよりもランドルフに怒られる事の方が怖いんだね。それじゃ僕よりも先に入って壁際で見ててくれない? もし、もし危険になったら助けてよ」
ララはかなり”うんうん”悩んだ後、先に入れるならとしぶしぶ入って行った。ララが入って体感で2~3分後冒険者ギルドの扉をくぐった。中はそれほど暗くなく入り口の正面にカウンターがあり、冒険者ギルド員と思われる男女が居て、冒険者らしき人々と話をしていた。入り口の左側の壁には依頼表らしき羊皮紙が張られていて、ここにも冒険者らしき人々が依頼表を見ている。右奥は定番の飲み屋兼食堂?のようで、仕事終わりなのか朝から飲んでいるのか数人の人々がいた。
『うん、想像通りだね。ここでキョロキョロしているとテンプレが発動すると思うんだけど…あれ?誰も来ないな』
カインがしばらくキョロキョロしていても何も起きなかった。しょうがないのでララを探していると。
「いらっしゃいませ、冒険者ギルドにご依頼ですか?」
落ち着いた雰囲気を漂わせたエルフの女性がカインに話しかけてきた。
「はい、魔石を購入したいと思って。見せて頂くことは可能ですか?」
「ラシーナさん、そんなガキンチョじゃなく俺たちの相手をしてくれないかな? 依頼を達成して帰って来たばかりで疲れてるからさぁ」
皮鎧を着た戦士風のたれ目の男が話しかけてくる。男の後ろには3人程の男達が居て全員”うんうん”と頷いていた。
『やったぁ!来たよ来たよ。これこそファンタジーの醍醐味 冒険者ギルドのテンプレ‼』




