明日の準備
カイン達がお風呂から上がりリビングに行くと、リディアとアリスがお茶を飲みながら談笑していた。
「リディア、待たせたな。あまりに気持ちが良かったので、長くなってしまった。すまんな」
「アリスと話をしていたので、気になさらないで下さい。早速、食事にしましょう」
全員で食堂に行く。着席すると待ち構えていた様に料理が並べられた。最近は夕食はもちろんの事だが、昼食にもお肉が出て来る。育ち盛りのカインは、兄達に感謝をしていた。
「おおっ、今夜はホロホロ鳥か。こんがり焼けていて美味しそうだ」
ルークが自分の前に並べられた料理を見て喉を鳴らしながら言った。
「はい、料理長が新鮮な内に旦那様に召し上がって頂きたいと頑張っていました」
側に控えていたメイド長が説明をした。
「冷めてしまう前に食べようか。今日も無事に糧を得られた事に乾杯!」「「「乾杯」」」
カインは小さく「いただきます」と言い食べ始めた。いつもより夕食が遅いのもあり、お腹が空いていた。塩で味付けされた皮がパリパリでとても美味しく、ホロホロ鳥を夢中になって口に運んだ。
「ありがとうございます、父さま、ベン兄さま。とっても美味しいです」
「それは良かった。カインに喜んで貰えたなら、頑張った甲斐がある。なあベンジャミン?」
ルークがチラリとリディアを見た後、目を細めて言った。
「そうですね、父様」
ベンジャミンも嬉しそうだった。
終始和やかな雰囲気で夕食を食べ終えて、リビングで香茶を飲みながらくつろいでいた。ランドルフがお菓子をテーブルに置き、ルークに確認をした。
「旦那様、本当に私達使用人も”浴場”を使用しても良いのでしょうか?」
「もちろんだ。遠慮せずに皆で使ってほしい。これは、この先”浴場”を領内に広める際の試験も兼ねているから、使ってみて気付いた事とかを報告してほしい。仕事だと思えば遠慮せずに使えるだろ?」
カインは、入浴中に領内に”浴場”を作って広める提案をしていた。目的は公衆衛生の向上による、乳幼児の死亡率低下に協力したいと説明していた。入浴しながらの提案は、使用人達にも使ってもらい問題点の洗い出しをする事を条件に了承を貰えた。
「ありがとうございます。使用感などを纏め報告させていただきます。カイン様、大変だと思いますがお願いします」
「了解、お湯が少なくなったり、ぬるくなったりしたら足すから言ってね。あとお湯が汚れてきたら取り換えるからね」
全員が入り終わるまでに、カインは3回程お湯の継ぎ足しが必要だった。中々の労働だったがお風呂から上がるとみんなが笑顔だったので、疲れも吹き飛ぶカインだった。
「カイン、明日は何をするの? 暇だったら一緒にクリス兄様と訓練しない?」
アリスが明日の訓練に誘ってきた。
「明日はアリス姉さまと約束したお菓子を作るため、お昼前は街へ買い出しなので残念ですがご一緒できません。すみません」
「えっ、明日作ってくれるの? いつ食べれるの?」
興奮を抑えきれないようで、身体を上下に揺らしながら聞いてくる。
「2種類作るので、1つはおやつの時。もう1つは、夕食の後ですね」
カインは考えてる風に、左右に首をかしげながら答えた。
「なんで、一度に味わえないの!?」
「だって、美味しいか試作が必要だからです。そこは譲れません、おやすみなさい」
きっぱり言い放ち、ポカンとしているアリスを置いて部屋に戻った。リビングから「カインのくせに生意気!」と叫ぶ声が聞こえた。
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