お風呂を作ろう2
「疲れたぁー、せっかく足湯に入って疲れを癒したのに。排水管を作ったらまた、疲れが溜まった。前の世界は、至れり尽くせりだったなぁ」
カインは、道雄だった時には感じなかったインフラ整備の重要性を改めて感じた。
ベッドで少し横になってると、夕飯が出来たとメイドが呼びに来たので、着替えて食堂に向かった。
食堂には、すでにリディアとアリスが着席していた。兄達の席をみると、白く俯いているアーサーとクリスがいた。
『あのアーサーが事務仕事だけであんなになるなんて、どんだけ領主の仕事はブラックなんだ?』
アーサーの変わり果てた姿にビックリしながら席に着くと、夕飯が運ばれてきた。いつもの様に、小さく「いただきます」と言って食べ始めたが、アーサーとクリスが動かなかった。
「アーサーもクリスも、いい加減ピリッとしなさい!情け無い。アーサー、今日の仕事の量はまだ少ない方よ。クリスも彼女が出来たら、あなたがリードしなければならないのだから、あのくらいで何を疲れ果ててるの?アリスなんて元気一杯よ!」
アリスとリディアは、息の合った双子の様に同じ動作で頷き合っていた。
「1日に休憩もなく、10軒も店を回るなんて...ブツブツブツ」
クリスがかなりのダメージを負ってしまったようで、自分の世界から?帰って来られたようだった。
アーサーとクリスは、その後なんとか自力で夕飯を食べて部屋に戻って行った。カインは、兄2人の早い回復を心の中で祈っていた。
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「「おはようございます、カイン様」」
石工ギルドと大工ギルドのギルド長とその職人達が、昨日作った”浴場”の前でカインを待っていた。
「おはよう、今日はよろしくね。この”浴場”に屋根と扉と窓を付けて欲しいんだ。あとは、中の浴槽を固定して欲しいんだ。どの位でできるかな?」
ギルド長達は”浴場”を見て回り少し相談をした後、「日が落ちる前には完成すると思います」と返事をした。
それから、職人達は手分けをして木材や漆喰を運び、作業を開始した。カインは何度か職人達に呼ばれ、指示を出した。昼食の頃には、仮の屋根が出来上がり、カインはかなり興奮していた。
「カイン様、恐れながら一つよろしいですか?」
大工ギルド長がカインに話しかけてきた。
「何か足りない所か、立て付けが悪い所があった?」
「そんな、とんでもない。これほど土台がしっかりとした部屋を作れるのは、熟練の職人でもそうそういません。申し上げたいのは、この”浴場”ですが、いささか寒いかと。脱衣所でしたか、ストーブを設置されてはいかがでしょうか」
「えっ、ストーブがあるの?まだ見た事がないや。いや、それよりそうだよね、ストーブでも無いと離れだし寒くて湯あみ所じゃないよね。追加で設置は出来るかな?」
「畏まりました、すぐにでも用意させます」
「あ、でも高い?もし、高ければ形だけでも教えてもらえれば作るけど?」
「いえいえ、今回の施設の費用で十分足りますので。その代わりストーブの周りに囲いを作っていただけますか?」
「もちろん」カインは笑顔で答えた。
それからも、カインは漆喰を【魔法】で乾燥させたり、浴場で使う椅子や桶を【魔法】で追加した。昼食後も作業が続き、日が沈み始めた頃屋根が完成した。
「「「おめでとうございます、カイン様」」」
「ありがとう、みんな。立派な”浴場”が出来上がったよ」
カインは、湯船に入った自分を想像し、にっこりと笑った。




