お風呂を作ろう
「カイン様、お待たせしました。ランドルフ様をお連れしました。あと、丁度お屋敷にいたのでノエルも連れてきました」
カインが”浴場”の作り方をあれこれ考えて、行き詰まってきた時に救いの声が聞こえてにっこり笑って振り返った。
「カイン様 ”窓”との事ですが、どの様な”窓”をお考えですか?」
「うーん、目的は換気だからそんなに大きく開かなくてよくて、外から見えない感じの? 例えば内側から外側に下の部分を押し出して開ける感じのかな? そんな”窓”ってある?」
「内側から外側に下の部分をですか? ある事はありますが少し大きめになりますね。明日にでもいくつか屋敷に届けさせましょう」
「ランドルフお願い、大きさや形式が違うのをいくつか持ってきてほしいな」
ランドルフは「畏まりました」と一礼をして屋敷に戻って行った。
「次は、ノエル”浴場”作りで相談にのってほしいんだ。作りたい”浴場”は、浴槽と身体を洗う場所。そして服を脱ぐ脱衣所と追加のお湯を溜めておく部屋の3つ。壁の中をくり抜いて空間を作れると思うのだけど、内壁や浴槽を固定出来なくて」
カインが説明しながら、「うーん、うーん」とうなっている。
「カイン様、【魔法】で一度に作らないといけないのですか? 【魔法】で作れるものは【魔法】で作ってその他は、石工ギルドや大工ギルドに作ってもらえばいいのではないですか?」
カインとガーディーは「「えっ」」という顔をしてお互いを見て
「そうだよね、全部【魔法】でやるから大変なんだ。壁や浴槽だけ【魔法】で作って屋根とかは普通に作ればいいんだ。ノエルすごいよ!」
「は、はい。ありがとうございます」
「それじゃ、屋根以外を作ろう! 「・・・ストーンウォール」」
カインは、イメージを固め外壁、内壁を作成し部屋を3つ作った。
「次は、扉と窓を開けて、その前に十分循環で【魔力】を練って小さく何度かに分けて「デリート」、「デリート」…」
カインが【デリート】を繰り返すと脱衣所に入る扉や浴場の窓が出来上がった。
「カイン様、地面はどうするんですか?石畳ですか?」
まだ、壁だけだったので土がむき出しの床をガーディーが指さし質問する。
「低い石壁を作って石の床にするよ。”浴場”の方は少し傾けて排水が出来るようにするんだ。見てて「・・・ストーンウォール」」
壁の内側の地面が15㎝位石壁となりズリズリとせり上がってきた。
カインは、出来上がった床や浴槽や壁を見て回る。
「やっぱり少し隙間が出来ちゃっているな。それに削れてる所もあるしもう少し練習が必要かな?」
ガーディーとノエルはとんでもない事を言っているカインを目を見開いて見ていた。2人の頭の中ではカインが居れば家を作る労力と時間が1/3くらいになると吃驚していた。
「次は、浴槽だね。「・・・ストーンウォール」&「デリート」」
浴場の半分くらいの石で出来た浴槽が出来た。
「あっ、しまった! 水の供給を考えてなかった。もう少し井戸の近くにすれば良かった。水道管みたいのを作るしかないか、でもな...」
「カイン様、すいどうかん?とは何ですか?」
カインがぶつぶつとつぶやきながら、考えているとノエルから質問される。
「えっ?ああ、水が流れる管だよ。浴場を使うたびに何度も水を運んだりするの大変でしょ。だから井戸からここまで水が流れる管を作って運ぶ労力を減らそうと思ってね」
「でも、【クリエイトクレイ】で作ると長い間使っていると土が混ざりそうなんだよね。うーん、あっ【アースプレス】使えばいいのかも
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【アースプレス】
アースプレスを掛けた面に圧力をかけ表面を滑らかにして硬化させる
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でも、水道管の設置はお昼ご飯の後にしよう。ランドルフにも設置場所を確認しなくちゃいけないしね。ガーディー、ノエルお昼にしようか」
3人はお昼ご飯を食べるために食堂に向かった。今日の昼食はカインだけだったので、1人で食べるのも寂しかったカインは、使用人の控室で食べる事にした。貴族としてはそれではいけないのかもしれないが、道雄の記憶があるカインには一人で食べる事の方が苦痛だったのだ。
昼食を食べ終わり井戸から浴場まで水道管を引く事を、ランドルフに説明と許可を貰って作業を再開した。傾斜の付け方は、ノエルが知識を持っていたので3人で協力して行った。それでも何度か失敗し3度目で漸く水を浴槽へ流す事が出来た。
「ふぅー、大分時間がかかったね。ノエル、ガーディーありがとう。さて、あとは水を入れるだけだね。これもちょっと重労働かな。まず半分くらい入れたいから交代でがんばろう!」
カイン、ガーディー、ノエルは交代でポンプを”キコキコ”漕いで浴槽の半分くらいまで水を溜めた。さすがに疲れたので、小休憩をとる。『何かいい方法を考えないと、毎日大変だな』とカインは考えていた。
”浴場”にカイン、ガーディー、ノエルで集まり浴槽に半分溜まった水を見ている。
「カイン様、これからどうするんですか?」
ガーディーが、この水をどの様にお湯にするのか質問をする。
「これから、僕が【ホットウォーター】で熱湯を継ぎ足して適温にするんだよ。見てて【ホットウォーター】」
カインの手から熱湯がドバドバと出てくる。しばらくドバドバと熱湯を継ぎ足すと熱湯が止まる。カインは恐る恐る手を入れて温度を確かめ、水をかき回すと首を傾げ再度【ホットウォーター】を唱え熱湯を継ぎ足した。
浴槽の中のお湯(水)が、浴槽の3/4くらいになったあたりで熱湯を放出を止めた。浴槽からは湯気が立ち上がりとてもいい感じに見えた。カインは再度手を入れて温度を確かめ「おしっ」とつぶやく。
「ふー、結構大変だったね。大体1:2くらいで適温かもね。ガーディー、ノエルどう思う?」
後ろで見ていた、2人に話しかけた。
ガーディーとノエルはカインと同じように浴槽に手を入れて温度を確かめる。2人はなかなか気持ちよさそうにお湯をかき回して「「丁度いいと思います」」と答えた。
その後、カインの提案でしばらく3人で足湯を楽しんだ。冷えていた身体を温めて上がろうとして、排水の事を考えていなかった事に気づく。排水管の作成は、暗くなるまで続いた。
『明日は、やっとお湯につかれるぞ!』
大変な1日だったが、久々の湯船に気合を入れるカインだった。




