アリスと焼き菓子
すみません、投稿が遅くなってしまいました。今回はアリスとのお話です。楽しんでいただければ幸いです。
「まったく、カインは。ダメって言ったのに。気持ちは分かるけど今後はダメだからね」
アリスは口ではカインにお説教をしているが、にっこにこの笑顔で言っていては効果が無いのでは?と叱られているカインは考えていた。
「でもえらかったぞ」
と言いながら、カインを抱きしめた。
「恥ずかしいです、アリス姉さま。そろそろカフェに行って休憩しませんか?」
抱きしめられて顔を赤くしながら、アリスをゆっくりと離す。
「もう、それじゃリディア母様のお気に入りの焼き菓子が食べられるお店に行くわよ」
カインの手をぶんぶん振りながらお店に向かって行く。店は、少し人通りの少ない静かな通りにあった。それでも、婦人や女の子たちの声が外まで聞こえるほど人気店の様だった。
「ここの焼き菓子はとっても美味しいから、いつもこんなに混んでいるの。まだあれが残っていればいいけど… ああ、あと3つしかないわ。どうしよう!」
入り口の奥のカウンターの上に大きな皿があり、その上に玉子くらいの大きさの焼き菓子が3つほど置いてあった。アリスは急に走り出し、カウンターの奥の女性と何やら話をして3つ全部を購入していた。
『あれ?ここでお茶を飲むと言っていたと思ったけど?予定変更か?』
「カイン、何しているの。早く入って来なさい」
アリスが店の中から手招きしながら呼んでいた。
「は、はい。アリス姉さま、そんなに大きな声を出すと恥ずかしいです。それでなくてもこの店の中は女性が多いのですから」
カインが早足でアリスの所に近寄ると、そのまま奥の部屋に案内された。そこは小さい部屋だったが、テーブルと椅子が4脚用意されている部屋で高級感が漂っていた。
「ここは、リディア母様の元メイド長が営んでいるお店で、この部屋はほぼリディア母様の為に用意された部屋って言ってたわ」
「アリス様、それにカイン様。本日は良くおいでくださいました」
とても物腰の柔らかそうな初老の女性が部屋の入口に立っていた。
「マーサ、また来てしまいました。それにビスケットが残り3つだったから先に購入しちゃいました。ごめんなさい。リディア母様には内緒でお願いね、知られると「貴族の子女が自分で購入するなんて」って叱られてしまうから」
「畏まりました。リディア様もアリス様が、それを分かっていらっしゃれば叱られないと思いますが。本日の事は秘密としましょう」
その女性はとても楽しそうに顔をほころばせていた。
「カイン様、お初にお目にかかります、マーサと申します。リディア様やアリス様よりいつも、カイン様のお話をお伺いしていて、いつかご挨拶をさせて頂きたいと思っていました。本当にお話でお聞きしていた以上に可愛らしい、あっ失礼しました」
マーサは慌てて無礼を詫びる。
「マーサ大丈夫よ、カインは事実可愛いんだから。ねっカイン?」
アリスがマーサの無礼をフォローする。カインは微笑みで肯定をした。
「アリス様、今日も”いつもの”でよろしいですか?」
「もちろん、それをカインに食べさせたくて来たの。お願いね」
「はい、畏まりました」
マーサがオーダーを取って、急いで出て行った。
しばらくすると、マーサがビスケットみたいな焼き菓子と香茶を持って戻って来た。
「お待たせいたしました、お召し上がりの時は、このハチミツをつけてお召し上がりください」
アリスは、早速焼き菓子にハチミツをたっぷりかけ1つ取り”パクッ”と食べた。
「うぅーん、甘くて美味しい」
満面の笑みで焼き菓子のハチミツ掛けを食べていた。
カインもアリスに倣って、1個取り口に入れる。それは、硬めのビスケットで少しボソっとしているがハチミツがそれをカバーし、とても美味しかった。
「アリス姉さま、とても美味しいです。リディア母さまにも食べさせてあげたいですね」
「大丈夫よ、先ほどお土産用に購入したから」
ふふっと得意げに胸を張る。
『あー、アリス姉さま可愛い』
「さすがですね、リディア母さまも喜びますね」
カインとアリスは、美味しい焼き菓子と香茶をゆっくり楽しみ、馬車に乗って屋敷に戻った。馬車の中でもアリスは、お土産用に買った”焼き菓子”を大事に抱えながら座っていた。
『うーん、今度何かスイーツを作ってみようかな?』
アリスの喜ぶ顔を想像しながら何を作ろうか考えていた。




