生活魔法を覚えよう
砦や城壁拡張の模型を作り、改善内容を色々話している内に昼食の時間になった。4人で食堂に向かうとリディアとアリスがすでに着席して待っていた。
「待たせたかリディア、アリス?」
「いいえ、先ほど私達も来た所です。クリスは夕方に狩りから戻るとの事なので6人だけですね」
ルーク達が着席すると、メイド達が現れ昼食を並べていく。今日の献立は、ハムとホウレンソウのサンドイッチとスープだった。ちょっと塩味が強く硬めのハムと硬めのパンだが、カインは結構気に入っていた。
『このサンドイッチも大好きだけど”ツナサンド”が懐かしい、この国には海ってあるんだろうか?』なんて考えていたら、リディアに話しかけられていたのに気付かなかった。
「カイン、カイン、ちょっとカイン?」
「…は、はい! すみません考え事をしていました。何ですかリディア母さま?」
「もう、そんな所はルークに似ているのだから。今日の午後は何をするの?もし、訓練だけだったらアリスと旅装の仕上げにいってらっしゃい」
先月、シールズ辺境伯爵領に行く時に着ていく旅装の採寸を済ませた。その旅装が出来上がった様で、最後の仕上げと受け取りにいく様にとの事だった。
「はい、アリス姉さまと行ってきます。あと帰りに教会に行って【生活魔法】を覚えたいのですが良いですか?」
カインは、ベンジャミンに教えてもらった【ホットウォーター】を覚えに教会に行っても良いかリディアに確認していた。
「良いわよね?ルーク?」
「いいと思うぞ。でも何を覚えたいんだ?」
ルークがカインに確認する。
「【ホットウォーター】の【魔法】を覚えたくて。ベン兄さまと考えている魔道具を作るために必要なんです。いいですか、父さま?費用は、この前”石畳”を作った時に頂いたお小遣いを使いたいと思います」
「何の魔道具を作るかを教えてくれたら、許可をしてやるぞ」
「えっ、まだうまく出来るか分からないから、出来たら驚かそうとしたのですが。父さまに相談する約束だったので、”浴場”を作るために必要なんです」
「「”よくじょう”??」」「はい」
ルークとリディアがハモって聞いて来たので肯定をした。
「カイン、”よくじょう”とはあの湯を溜めて入る”浴場”ですか?」「は、ハイ」
リディアが少し食いつき気味に確認をしてきたので、カインの返事が高くなってしまった。
「分かりました、費用は私が負担しますので覚えてくるのです。その代わり一番最初に使わせてね」
なんか、凄く嬉しそうにリディアが許可をくれた。ルークが落ち込んでるように見えたが見なかった事にしよう。
---
昼食後、カインはアリスと馬車に乗って洋服店に向かっていた。
「アリス姉さまとお出かけするなんて久しぶりですね」
「本当よね、カインは最近訓練ばかりで全然遊べなかったし。私も勉強で時間が無かったからね」
「アリス姉さまも来年には、学院に入学ですね。寂しいです」
すこしうつむき加減でカインがつぶやく。
「何を言っているの?カインも2年もすれば学院に入学なんだからすぐ会えるわよ。それに私は毎年、帰って来るつもりだし」
ここぞとばかりに、可愛い弟を撫でまわすアリス。しばらくすると馬車が洋服店の前で停車した。御者がドアを開けて2人で降りる。
「いらっしゃいませ、アリス様、カイン様お待ちしておりました」
洋服店の女将がカイン達を微笑みながら迎えた。小一時間ほどカイン達は、洋服を何度も着たり脱いだりを繰り返し仕立て終わった。カインとアリスは気苦労でへとへとになっていた。
「さっ、早く教会に行って【生活魔法】を授けてもらいましょう。そしたらリディア母様と行った事のあるカフェにお茶を飲みに行くわよ」
アリスは、自分に活を入れる様に少し大きめの声で宣言した。教会は、洋服店から目と鼻の先だったので歩いて教会に向かった。
教会に向かうと礼拝の為に並んでいる人や怪我を治療してもらうために並んでいる人々がいた。アリスとカインに気づくと声を掛けたり挨拶をしてくる。2人は笑顔で挨拶を返していると待祭様が迎えに出て来てくれた。
「アリス様、カイン様 良くお越しくださいました、どうぞお入りください」
アリスとカインは、侍祭様に続き教会に入っていく。




