はじめての戦闘6 ~エピローグ~
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すみません、今回は少し長めです。
気が付くとカインは、戦場に立っていた。周りにはアーサー達もいなく、兵士達がオーク達と戦っていた。"ブウォーッ"とオークの咆哮がする方を見るとオークナイトがカインに向かって剣を振り下ろしている。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ、はっ」
カインは、叫び声と共にベッドから起き上がった。
「はぁはぁはぁ、全くトラウマになりそうだよ」
先程の事が夢だと分かり、愚痴をつぶやきながらベッドに再び倒れた。"ビギッ" ベッドに倒れた瞬間身体中が言い表せないくらいの痛みを発した。
『なに、これ??もしかして筋肉痛!? あり得ない!痛すぎだよ』
身体を動かそうとする度に激痛が走った。
『【ヒール】を掛けよう』
"ズキッ"今度は、違う種類の痛みが身体の内側に走った。
『今度は、なに! 【魔法】を使おうとして痛みが走ったから、【魔力操作】を行うとなるの?』
『これは、終わった...この状態から動く事も何も出来ない...誰か気付いてぇー』
そんな二重の痛みに絶望しているうちに、また眠りに落ちた。
"コンコンコン"誰かが部屋の扉を叩いているが、カインには聞こえなかった。
「カイン、入るよー」
アリスがゆっくり扉を開けて中を覗き込む。
「まだ寝てるのね。リディア母様もゆっくり休ませてあげなさいって言ってたし」
アリスは、うつぶせのまま眠っている?カインの寝顔を見ながら、カインに話しかけた。
「まったく、無理はしちゃダメとあれだけ言われてたのに。頑張り過ぎだぞ。目が覚めたら褒めてあげるからね」
カインのほっぺや髪を突っついたり、撫でたりして一通り遊んで部屋を静かに出て行った。
数時間後、パンの焼ける香ばしい匂いを感じた。
『あぁーいい匂いだぁー。お腹空いたなぁ』と思った瞬間! "ギュー"とお腹が鳴り、物凄い飢餓感を感じカインは目が覚めた。
『お、お腹が空いた、何でもいい食べさせて』
ベッドから体を起こす。先程の激痛に比べるとましだが、まだ身体中が痛かったが空腹の方が強く起き上がった。
カインは、厨房の扉を開けながら懇願した。
「ロイドぉー 何か食べさせてぇー」
「おはようございます、カイン坊ちゃん、今用意しますから、あちらでお待ちください。しかし兄弟揃って仲が良いですねー」
ロイド料理長が、厨房の隅のテーブルを見る。
テーブルでは、アーサー、ベンジャミン、クリスが正に貪り食べていた。
「丸一日何も食べてないですから、まずは体力回復特製スープから召し上がって下さい」
ロイド料理長は、とても澄んだ黄金色のスープをカインの前に出した。
「いただきます! ふーふー ゴックン」
とても優しい塩加減でそれでいて濃厚な鶏の旨味がガツンと襲ってきた。
「美味しいぃぃぃ!」
夢中になって全部飲み干して、フゥーと息をついた。
「さあ、パン粥とハンバーグですよ。良く噛んで食べないとお腹が痛くなりますからねー」
意味深な笑顔を浮かべながら、皿を並べた。
カインは先程のスープで余計に食欲を刺激され、スプーンでハンバーグをすくって食べた。
「んー、おふしい!」
口にハンバーグを詰め込んだまま、叫ぶ。
「お行儀が悪い、良く噛んで食べる様に言いましたよね、カイン坊ちゃん!それに残したら許しませんからね」
ロイド料理長が両手に包丁を持って、声を低くして注意をしてくる。
もぐもぐもぐもぐもぐ、ごっくん。
「はい、ごめんなさい」
「アーサー坊ちゃん達も分かりましたか? ん?」
「「「はい、大丈夫です」」」
「カイン、体調は大丈夫かい?どこか悪い所とかうまく動かせない所とかあるかい?」
ベンジャミンがカインの体調を心配そうに聞いてた。
「はい、起きた時から身体中に痛みがあります。それも2種類、多分ですが筋肉痛と魔力痛?でしょうか」
「僕と同じだね、カイン。僕も今まで経験した事が無いくらいの筋肉痛だよ。なにが原因だろう?」
『『『ぜったい、あの時の動きのせいだ』』』
クリス以外の3人は、オークナイトを倒した時の動きを思い出していた。
「カインも魔力痛かい? 私も今回は【魔力枯渇】を2回も起こしたから少しでも【魔力】を使おうとすると激痛が起きるよ。魔力痛は、段々収まって来るけど少しずつでも【魔力】を”循環”させた方が治りが早いよ。でも痛いけどね」
ベンジャミンがいつもの少し黒い笑顔をのぞかせながら、魔力痛について教えてくれた。
「アーサー兄さんは、大丈夫なの?」
クリスが、会話に入ってこないアーサーに話を振った。
「なに、このくらいの筋肉痛や怪我は騎士団の演習ではいつもの事だ。よく団長が筋肉痛を超えるとより強い筋肉がついて強くなれると言われていて、限界を超えろが口癖だ」
わぁー、その団長絶対脳筋だよ。大丈夫かその騎士団。絶対騎士団に入るの止めようとカインは誓った。
「あら、誰も部屋にいないと思ったら、こんな所でご飯を食べていたなんて」
リディアが、厨房に入ってきて兄弟仲良くご飯を食べている姿を見て言った。
「奥様、すみません。坊ちゃん達に少しでも早く召し上がって貰いたくてここで」
「気にしなくても良いですよ。この子達がここで食べ始めてしまったのでしょう?みんな、あまり心配をかけさせないでね。待っている母親の事も少しは考えてほしいわ」
「「「「ごめんなさい、母様」」」」
兄弟はそろって、頭を下げた。
「お、なんだ全員こんな所にいたのか。食堂で食べていれば探さずに済んだものを」
ルークも厨房に入ってきた。
「ロイド、リディアの分と2つ香茶を貰えるか?」
リディアの分の香茶を頼みながら、テーブルに着く。
「俺も良く、ここで食べたなぁ。食堂でポツンと一人で食べるより落ち着くんだよな」
昔を懐かしむ様に、厨房を見渡しながらつぶやく。
「それよりも、アーサー、ベンジャミン、クリス、カイン。今回は本当に良くやった。戦果もすごいが、お前達一人一人の成長を見られて嬉しかった。
カイン、初陣の勝利おめでとう。良く乗り切った、成長の為と思って送り出したが無事に戻って本当に良かった。
クリス、良くカインを守ったし、アーサーとの連携も素晴らしかった。
ベンジャミンも本当にカインを守りながら、周りを良く注意し助力し素晴らしかった。
アーサー、腕を上げたな。オークナイトとの戦いは素晴らしかった。それに加え指揮力も目を見張るものがあった。
みんな、父親としてお前達を息子に持ち誇りに思う」
ルークに褒められ、4兄弟はとても良い顔をしていた。
「もう、私をのけ者にしてこんな所にいるなんて!」
アリスが厨房に入ってきた。自然とみんなに笑みがあふれて笑いあっていた。
カインは、この家族の幸せがずっと続く事を心の底から願った。
『ガーディア様、どうか家族全員が幸せでありますように』




