はじめての戦闘3
「聞け!これより、総員城門より出て大深森林側の城壁の前にくさび型に展開をする。初手は城壁上から弓隊が掃射、その後騎馬隊で突撃、一当て後転進。敵を引き連れて戻る。各隊は密集形態で敵を受け止めろ。 いいか、2人で1体に当たれ。騎士道精神は、魔物には必要ない。負傷したらすぐに後ろに下がれ、こんな程度の事で死ぬ事は領主ルーク様への不義と思え。良いか、絶対に死ぬな! 行くぞ!」
「「「「うぉーうぉー」」」」
全兵士が雄叫びを上げた。
「開門!」
騎士団長アーガイルが宣言すると、城門が開かれる。アーガイル騎士団長を先頭に大深森林側の城壁に進む。
カインは、ベンジャミンと馬に2人乗りをしている為、前が良く見えなかった。しかし、気持ちが高ぶってくるのを感じた。しばらくすると、大深森林側の城壁に着き、隊列を組んだ。遊撃隊の3番隊は、右端の位置にて待機となった。
「カイン、突撃が始まったら右側の魔物に【攻撃魔法】を当てろ。倒さなくていい。【魔法】を当てて進行を止めるだけでいいい。後は、後ろにいる兄上かクリスが仕留める。いいかい、仕留めなくていい”進行を止めろ”」
ベンジャミンが今まで感じた事のない、”怒気”を漂わせてカインに指示を出した。
「は、はい!」
カインは、”怒気”に当てられて、それしか言えなった。
「カンカンカンカン」「敵が見えたぞ! 前方500m 森の淵だ」
城壁の鐘と共に前方に現れた魔物が見えた。ゴブリンがうじゃうじゃとこちらに近付いてくる。
「何かがおかしい、ゴブリンがなぜ並んでこちらに近付いてくるんだ? 上位種がいるぞ!探せっ!」
周りの隊長から警戒の声が上がる。
「ゴブリンだけじゃない、オークだ、オークがいるぞ!」
ゴブリンの後ろに、2m近い人型の魔物がぼんやりと見えた。ゴブリンとオークの混成魔物達は、騎士団の手前約300m地点で一度止まった。この距離になるとゴブリンとオークの不気味な声が聞こえてくる。
カインは、ベンジャミンの後ろから何とか体を動かし前方を見るとゴブリンとオークが見えた。
『おお、ファンタジーだ!オークってイメージより大きいな。”ドクドクドク” あれっ?心臓の音が大きく聞こえる』
「総員、戦闘態勢‼ 各隊長は、魔物の中の上位種を探し最優先に討伐せよ!」
アーガイル騎士団長からの檄が飛ぶ。
”ギャギャー” ”ブヒブヒー”と魔物達が叫びながら走り出した。魔物達が200mに到達すると城壁上から矢が放たれ山なりの軌道を描き数十の矢が魔物達を襲う。うまく急所に当り十数体は地に倒れるが、魔物の数が多い為、勢いが止まらない。
「騎馬隊! 突撃!」
アーガイル騎士団長の掛け声で、20騎程の騎馬隊が突撃を行う。そして騎馬隊と魔物達がぶつかる。魔物の断末魔の叫び声と騎馬の足音が混ざり物凄い騒音が辺りに響き渡る。そして、騎馬隊が転進してきた。
「総員、突撃!」
アーガイル騎士団長の再びの掛け声で、騎士団全体「ウォー、ワァアー」と物凄い騒音と共に”突撃”を開始した。
『なっ、なんだこれ!?、これがリアル!』
さっきから心臓の音や周りの騒音が”物凄い音”になってカインを襲っていた。
「カイン、しっかりしろ!そろそろ、私達も突撃を開始する。”循環”を絶対に止めるなよ!!」
ベンジャミンが手を後ろに回しカインの背中を叩き、檄を飛ばす。
「ハ、は、はい」
ベンジャミンの”檄”により、騒音が鳴り止み少しだけ落ち着きを取り戻し、指示通りに”循環”を始めた。
『パニックになっちゃ駄目だ、パニックになったら死ぬ。小さな事から始めるんだ!』
道雄時代にミスをしてパニックになりそうな時に行ってきた対応を思い出し始めた。少し落ち着きを取り戻すと”循環”がスムーズになり、それに伴い視界も広がって周りが見えてくる。
「3番隊、行くぞ! 我に続け!!」
ウィルソン隊長の掛け声と共に3番隊が突撃を開始し、ベンジャミンとカインの乗る馬も走り出した。
「ベンジャミン殿、前方に【攻撃魔法】!」
ベンジャミンは、指示とほぼ同時に、【魔法】を放ち、3番隊が突撃をする先の魔物達の動きを止めた。その直後にウィルソン隊長が突撃をして魔物達の塊を切り裂いていく。
カインは、物凄い揺れる馬上から右側の魔物達に向かい「ストーンバレット」を”循環”で威力を拡大し連続で放つ。10個分の”循環”を使い切ると同時位に魔物の群れを抜けた。すぐに3番隊は転進を開始する。カインは、再度10個分の”循環”を開始し使える状態にする。
『うわぁぁぁぁぁぁぁ、何だこれは、気持ち悪い、吐きそうだ、こんなリアルは求めてない』
吐きそうになるのを必死に堪えながら、”循環”、【魔法】を繰り返していた。
3度目の突撃を終了し、3番隊が戦闘から少し離れた位置で集まる。
「総員、状態を確認せよ」
ウィルソン隊長が指示を出した。
「カイン大丈夫かい?」
右側から誰かが声を掛けてきた。




