はじめての戦闘
朝練は寝坊して出来なかったが、朝食の時間にはきちんと起きられた。アーサーとクリスは、朝食にも寝坊しリディアに小言を言われていた。
朝食後、カインはベンジャミンに訓練場で【魔力操作】について教わっていた。
「ベン兄さま、【魔力操作】のレベルを上げたくて色々試しているんですけど、うまくいかなくて。教えて貰えないですか?」
「うん、良いよ。何が出来なく困っているの? 何が分からなくて教えて欲しいの?」
「はい、今"循環"させる【魔力】の塊を2つにして行っているのですが、"循環"をしている間にくっついてしまいます」
「へー、面白い事をやってるね、ちょっと見せて?」
「はい」と返事をして"循環"を始めた。最初は距離を保って回っていた【魔力】の塊が次第に近付いてくっついてしまった。
「この訓練の目的は何? 複数の【魔力】の塊を動かす事?それとも別々に操作する事?」
「えっ、そうか両方一度にするから大変なんだ! 最初は複数の【魔力】を動かす事にします。2つの【魔力】の塊を作って、距離を固定して"循環”っと」
カインは暫くの間、2つの【魔力】の塊を少し間を開けて電車の様にぐるぐると動かした。
「やった!出来た!」
うんうん、とベンジャミンが頷いていた。
ベンジャミンとカインが仲良く訓練をしていると突然!「カンカンカン、カンカンカン」と城壁の見張り台の警鐘が鳴らされた。
「何ですかこれは?ベン兄さま?」
「カインは初めてかい? これは、大深森林から魔物が近付いて来る時に鳴らされる鐘だよ。屋敷に戻ろう」
2人して屋敷の中に入るとクリスが走ってくる。
「ベン兄さん、父様が会議室に集合って言ってたよ」
ベンジャミンは頷いて会議室に向かう。「カインも」と言われ付いて行った。会議室には、ルーク、リディアを始め、サンローゼ家の主要メンバーが集まっていた。
「騎士団長 アーガイル、報告せよ」
ルークが騎士団長に指示を出した。
「は、本日定期の見回りを行なっている隊より、狼煙にて緊急を告げる連絡がありました。内容は、魔物、500体以上、3時間です」
これは、後で教えて貰ったのだが、大深森林を見回り、危険を少しでも早く伝えるために作られた手段で、脅威の対象、数、領街迄の距離を色で表し知らせるとの事。
「何!500体だと!間違いないのか?」
「はい、複数人で確認を行いましたが、間違いありません」
「今、実働出来る兵士の数は?」
「約300であります、予備兵も含めて350かと」
「1.5倍強か...」
ルークが考え込む。
「父様!顔を上げて下さい、なに、1人2体を倒せば良いのです。大した事ありませぬ」
アーサーが自信に満ち溢れた態度でルークを鼓舞する。その言葉を聞いて皆の気持ちが上がった。
「そうだな、過去の戦いでは、これ以上に悪い時もあった。この程度、皆でこの危機を乗り越えるぞ!」
ルークが宣言すると、皆のやる気が上がった。
その後、ルークは騎士団長とランドルフと色々と打ち合わせをし、指示を次々に出していく。
最後の指示を出し終え、子供達の所へ来る。
「お前達は、リディアやアリス、領民を頼むぞ!」
「何を言っているのですか?総大将は、指揮をする為に父様はお残り下さい。この様な時の為に、学院や王都騎士団に行かせて貰っているのです。お任せ下さい」
「10騎程で遊撃を行います。いきなり隊列には入れませんので。ご命じ下さい」
「わかった、アーガイル!3番隊にアーサー達を組み込んでくれ。お前達、無理はするなよ。ベンジャミン、カインを頼む」
「はい、畏まりました」
え、俺も戦場に出ていいの?




