3兄弟の帰郷
「・・・ストーン」
カインが地面に手を突いて力ある言葉を唱えると、広場までの道が"石畳"に変わった。
「わぁー」「何度見ても凄い」「ありがとうございます」など、方々より聞こえてくる。
カインは、笑顔で手を振り答える。
「よし、完了!ガーディありがとう」
見物人の整理をしてくれていた、ガーディの方へ振り向いて言った。
「カイン、頑張ってるね」
聞き覚えのある声がした方を向くと旅装のベンジャミンが立っていた。
「ベン兄さま、お帰りなさいませ。お一人ですか?」かなりびっくりしたが、何とか落ち着いて返事をした。【魔法】を教えてもらった手前、【魔法】を使っている所を見られるのは、恥ずかしかった。
「いや、兄上とクリスと一緒だよ」
そう言って向いた方向に、体格のガッシリした男と盾を背中に担いでいる男の子がいた。
「おお、お前がカインか? 大分大きくなったなぁ?」野太い声で体格のガッシリした、男性が話しかけてきた。
「アーサー兄さまですか?」
「なんだ、覚えてないのか?まあ仕方がないか?、そうだ、俺がアーサーだ。で、そっちの細いのが、クリスだ。もう、忘れるなよ」
と言いながらガシガシと頭を撫でてくる。
「やっぱり、僕の事も覚えてないか? 母様に言われてあまり遊べなかったからな」
カインの顔を覗き込む様に見て笑う。
「2人共その辺にしないとカインが怖がってますよ」
ベンジャミンが柔らかく諌めた。
「まぁ、屋敷でゆっくり話すとするか? カインここまでどうやって来たんだ?」
周りに誰か居ないかをキョロキョロしながらアーサーが聞いてきた。
カインはガーディを呼び、先ほどまで行っていた"石畳"作りを3人に説明した。そして、もうすぐランドルフが迎えに来る事も。
「へー、凄いな。僕がカインの年の頃は剣しか振ってなかったよ、へー」
クリスがしきりに感心しながらカインと"石畳"を見比べながら褒める。
「母様からの手紙で知ってたけど、去年【魔法】の使い方を教えたばかりで...やっぱりカインは面白いね」ベンジャミンが楽しそうに褒める。
「俺達の弟は、天才か? それに領民が喜んでるのがいいな。こんなに活気があったか?」
アーサーもカインの行なった事を褒める。
道雄の時からあまり褒められ慣れていないカインは、恥ずかしくて、顔が真っ赤になり下を向いた。
「おやおや、お坊ちゃん方。それ以上カイン坊ちゃんを褒めると倒れてしまいますよ」
またも、絶妙なタイミングで現れるランドルフだった。
「「「いい加減、"坊ちゃん"はやめて」」」
3人の声がハモる。
「相変わらず、仲が良ろしいですね。サンローゼ家は安泰です」
そのやり取りを聴いていた領民から笑いが起こり、3兄弟に向かって「お帰りなさいませ」と声が掛けられた。
3人は、声を掛けたり、手を振って応えている。
「皆様、そろそろお屋敷に戻りますので、あちらの馬車にお乗りください」
ランドルフが馬車を指して乗車を促した。
4人とランドルフが乗り込み、ガーディが御者席に着くと、馬車は屋敷に向かって進む。馬車が屋敷の玄関に着くと、リディアが満面の笑みで3人を迎え、1人ひとり「お帰りなさい」と抱きしめていた。
リディアの歓迎が終わると3人は、アリスを見つけ口々に「可愛い」「綺麗になった」「大人になった」など褒めちぎっていた。アリスはそれを本当に嬉しそうに受け止めていた。
玄関での歓迎が終わり、客間に移動し、ルークに帰宅の挨拶を1人ひとり行なう。ルークも家族が全員揃い嬉しそうだった。
カインは、この家族がより大好きになった。




