大深森林の異変
この回は、一部戦闘シーンが含まれます。不快な場合は読み飛ばしてください。
サツマ事件から数日、カインはいつも通り訓練場で【魔法】の訓練をしていた。
「全く、食べ物の恨み?は、すごいよな。でも、みんなあのサツマを美味しいって食べてくれてたし良かった、良かった」
焼きサツマパーティ?の後、ルークとランドロフに作付けの仕方などを質問され、種芋からではなく苗を作ってからなどを説明した。すぐに方法を文章化して領内に広めると言っていた。来年は美味しいサツマが広まるといいな。
「そろそろ、【土魔法】のLv.上げたいよな。毎日、”循環”も【土魔法】も練習しているけどな。少し方法を変えてみようかな?」
カインは、今までのトレーニング方法を振り返っていた。
「【土魔法】は、もう少し複雑な形の物をイメージして作ってみようかな? 後は”循環”だけど循環の”魔力”の塊の数を増やしてみようかな、だめだったらベンジャミンが帰ってきたらちょっと聞いてみよう」
それから、カインは”循環”をする時には”魔力”のかたまりの数を増やして練習をしていた。
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ガザガザ、3人の男たちが森の中を歩いている。先頭の者は弓を担ぎ周囲を警戒しながら森を進んで行く。その後を左手に盾を持ち剣を腰に差した男と槍を持った男が側面と後方を警戒しながら付いて行く。
「方向は、こっちで合っているのか?」
剣を持った男が先頭の男に聞く。
「ああ、ギルドの情報からもう少し進むと森が切れて川にぶつかるはずだ」
草をかき分けながら、前を向いたままで先頭の男が答える。
しばらく進むと、水の流れる音が聞こえ始めた。3人は方向が合っていた事がわかり安堵した。音のする方向にまたしばらく進むとギルドの情報通り森が切れ川に出た。
「待て!」
進もうとする後から付いて来ている2人を鋭い声で止める。そして川の上流を指さす。
指のさした方向には、体表が緑の子供の背丈ほどの魔物が”ギャギャッ”と言いながら川で何かをしていた。
手には、木の槍の様な物とさびた短剣を持った3体のゴブリンがいた。
3人は、物音を立てずにゴブリンに近付く。そして剣と槍を持った男達が飛び出し水に入る。”ヒュン、トス” 弓の男が一体のゴブリンに弓を放ち仕留める、2体のゴブリンが倒れるゴブリンを見ている間に剣と槍の男が残り2体のゴブリンに攻撃をして一撃で仕留めた。
「周りを警戒するから2人はゴブリンの解体をしてくれ」
弓の男がそう言い川の向こうの森を警戒する。2人は川からゴブリンを引きずり出し討伐証明の右耳を切り取る。
「まあ、大深森林なんだしゴブリンの2,3頭は普通にいるよな?ギルドは何を警戒しているんだ?」
剣の男が槍の男に聞く。
「そうだよな?警戒するなら5,60頭の群れになっているなら分かるがこの程度ならなぁ」
今倒したゴブリンを見ながら槍の男は答えた。
「こっちに来てくれ」
弓の男が呼んでいた。
「ここに、新しい道がある。それも結構な数が使っているのかほぼ道になりつつある」
見つけたけもの道を指さし説明した。
それから、3人はその道を警戒しながら30分ほど進むと驚愕の光景を発見した。そこには草木で作った家らしき物が十数棟100頭くらいのゴブリン達がいた。その中には、上位種の様なゴブリンが数頭のゴブリンに指示を出し獲物の鹿を解体している。
3人は、進んできた道を素早く戻り身を隠せる場所で集まった。
「おい、ギルドの情報より数が多くないか?」
「そうだ、上位種も混ざっていたし、かなり集落として発展しているぞ」
「これは、早めに討伐部隊を結成して当たらないとヤバいな」
3人は口々に感想を述べて現状を整理する。
「まずは、ギルドに報告だ」
弓の男が言うと2人も頷き、来た道を戻ろうとすると2頭のゴブリンが森を歩いているのを見つけた。
剣と槍の男が顔を見合って頷くと走り出す。2人が走る音を聞きつけたゴブリンが2人を見つけるが何もできずに倒される。
「いきなり行動に走るな。周辺にまだいたらどうする!?」
追いつてきた弓の男が2人を叱責する。
「ゴブリンくらい10頭いたって大丈夫だ」
「そうそう」
口々に返答をしてきた。
「その油断が、ちっ言わんこっちゃない」
弓の男が2人に向かって弓を放つ。”トス”と音がして2人の後ろに近付いていたゴブリンを仕留めた。
「な、えっ」
剣の男が弓の男と矢の刺さったゴブリンを交互に見た。
「囲まれている、急げ走るぞ!」
弓の男が走ろうとするが複数のゴブリンが現れ行く手を阻む。
「いつの間にこんなに、このくらいなら、どけっ!」
槍の男が囲んでいたゴブリンを槍の鋭い突きで一撃で倒す。
「ぐっ、なぜこんな所に!」
槍の男が弓の男の声のする方を見ると数頭のオークに攻撃されていた。剣の男の方を見るとオークとゴブリンに囲まれ苦戦している。
「やばい、固まれ、ぎゃッ」
槍の男が声をかけると肩に矢が深々と刺さっていた。
「なに、アーチャーまでいるのか?」
矢が飛んできた方向を槍の男が見ると木の上に歪んだ笑みを浮かべるゴブリンが居た。
男たちは、必死の抵抗を試みるが数を増して襲ってくるゴブリンとオークに徐々に押されてついには力尽きた。倒れている男たちを上位種のオークが見ながらゴブリン達に何やら指示をだし、ゴブリン達は男たちの装備を剥がしていった。




