辺境伯が来たぁ~
ついに、シールズ辺境伯が来る日になった。この1ヶ月おもてなしをする料理を何度食べさせられたか。カイン以外はとても喜んでいたがさすがに3日に1回出てくると食べ慣れているカインにはつらい日々だった。その成果か、かなり美味しくなったと思う。
家族総出でシールズ辺境伯を玄関まで迎えに出た。“パカパカパカ”と2台の馬車と警備の兵士達20名が屋敷の前の“石畳”の道を進んでくる。そして玄関前に停止し御者が扉を開ける。60代の壮健な白髪の老人が下りてくる。
「シールズ辺境伯様、本日は遠方よりご足労いただき大変ありがとうございます」
ルークが、深くお辞儀をし挨拶をする。それに合わせ迎えに出ていた全員がお辞儀をする。
「出迎えご苦労。ルーク、少し痩せたのではないか?」
ルークに気安く声をかけ、体をバシバシ叩きながら話しかけた。
「体調は問題ないです。お気遣いありがとうございます。さっ中へどうぞ」
ルークが促すと『うむ』とうなずきシールズ辺境伯は進み始めた。
客間へシールズ辺境伯を案内しメイドが香茶を出す。ソファーには、ルークとリディアが座りその横にアリスとカインが立っている。シールズ辺境伯は香茶を飲むと、話し始めた。
「ルーク、急な訪問で迷惑をかけたようだな。出入りの商人達がこの街の“すばらしい道”の話ばかりするものでな」
ルークは、「そんな大した事は」と謙遜しながら首を振る。
次にリディアへ目元を緩めながら話しかけた。
「リディア、元気か。だんだんとそなたは、母アイシャに似てくるの。 できれば近くアイシャに会いに来てくれぬか」
「お父様、お久しぶりでございます。お母様は、お変わりありませんか。本日はご一緒にいらっしゃるかと思っておりましたが」
「いや、当初は一緒に来る予定だったのだが、少し前に足を痛めての。泣く泣く断念したのじゃ」
「お母様は、大丈夫なのですか? 何があったのですか?」
少し驚いてリディアが尋ねた。
「いやいや、大したことではない。屋敷の庭を手入れ中に転んだだけじゃ。心配は無用じゃ」
「近い内に一度お伺いさせていただきます」
ほっと胸をなでおろしリディアがほほ笑んだ。
今度は、アリスとカインの方を見て少しはずんだ声で
「アリス大きくなったの。もうすぐ学院に入学かの?もう立派なレディじゃの、それにカインは、立派な男子になったの」
「おじい様、お久しぶりでございます。この度お会い出来る事を楽しみにしておりました」
年齢を覚えてもらっており、褒めてもらったのが嬉しかったのか満面の笑みで答えた。
「シールズ辺境伯様、お久しぶりでございます。カインは6歳になりました」
カインが、シールズ辺境伯に会った?のは、3歳なので当然記憶になく、堅苦しく挨拶をする。
「カインは、アリスの様に『おじい様』と呼んではくれないのか?寂しいの…」
急にシールズ辺境伯は、弱弱しい老人の演技をしながらつぶやく。
「お父様、ご冗談を。カインをからかうのは、おやめください。カインが困っております」
リディアがフォローをして、それをきっかけにシールズ辺境伯が笑いだし、みんなが続いて笑い始めた。
「さて、本題だが街に入ってからと屋敷までの道じゃが、素晴らしいな。見るのと聞くのではこんなに違うのかと改めて思ったのじゃ。“石畳”になった途端、振動が少なくなりスピードは上がるし、それに色が分かれており馬車が走りやすそうだった。一番は通りがきれいな事じゃな」
顎に手を当てながら、通ってきた“石畳”の話をし始めた。
「“石畳”のデザインはリディアとアリスが考えたものです。色の違いにより通行する場所を定めてから、馬車と馬車の事故が減りました。それに“石畳”にしてから領民が自主的に毎日掃除をしてくれるので衛生的になりました」
ルークが“石畳”化の利点を説明した。
「そんなにか。うーん、ぜひわが街も“石畳”にしたいもんのじゃ」
シールズ辺境伯が予想通りの言葉を述べた。
『やっぱりね、これを言う為に来たんだしね。父さまは、ちゃんと交渉できるかな?』




