勇者様の料理2
カインは、“勇者様の書”を開き勇者様の残したレシピを説明していた。今回は人数が多いので“勇者様の書”を会議室に持ってくる許可を特別に貰った。まず始めたのは、“勇者様の書”に載っている調味料があるか、ないかの確認だった。
マヨネ(マヨネーズ)、セイユ(醤油)はあったが、ケチャップ、ウスターソース、味噌、みりんは無かった。セイユ(醤油)があったのは、とても助かる。セイユ(醤油)面倒なので醤油があるのに、なぜ味噌が無いのだろう?追及してみないと。ちなみに少量生産だが、“米”もあるらしい。しかし栽培してるのが遠方なので今回は断念した。
次に食材だが、バターはあるがヤギバターで入手はかなり困難らしい。なので牛乳もない。一番欲しかったポタト(ジャガイモ)、トテト(トマト)、オニー(オニオン)、ガリ(ガーリック)は、一般的に手に入るとの事。この微妙に似ているのは?なんだろう?
肉についても、ワイリーブル(牛肉)、オーク(豚肉)、ホーンチキン(鶏肉)と似たような物がある。これでだいぶ“勇者様の書”に書いてある料理を再現できる。あとは、どの料理がこの世界に無いかを確認するだけだ。
「ロイド料理長、今から説明する料理を知っているか答えてね。
① ポタトとハムとマヨネを和えたサラダ
② マカロニとハムとオニーとマヨネを和えたサラダ
③ おもにブル系とオーク肉をミンチにして丸めて焼く肉料理
④ オークの肉を細かいパンで包み油で煮る料理
⑤ ホーンチキンを塩、醤油で味付けて小麦粉をつけて油で煮る料理
⑥ 鳥の卵に砂糖をいれて作るオムレツ
⑦ ホーンチキンをミンチにして醤油を付けた肉料理
この中で聞いた事や食べた事のない料理はどれかな?」
カインは、話しながら羊皮紙にリストを書いていく。
ロイド料理長は、少しうなりながら答えた。
「①と⑦以外は聞いた事も食べた事もない気がします。ランドルフさんはどうかね?」
「そうですね、③はくず肉を集めて焼いた肉料理に似ていますが、“勇者様”が書き残すほどなので違いますかね?」
ランドルフは顎に手を当てて答えた。
「カイン、ロイドに言って全部作ってみたらどうだ? 実際に見て、食べてから判断でも良いんじゃないか?」
ルークが全部作ってみろと無茶ぶりをしてきた。
「わかりました。材料を揃えて作ってもらいます。ロイド料理長、材料のリストを作るので購入が必要な物を買ってきてもらえますか?」
「了解です、カイン坊ちゃま」
にっこりとロイド料理長が答える。
---
ロイド料理長が1週間をかけて何とか材料を揃えてくれて、全種類を作った。一番大変だったのが“油”とは思わなかった。サラダ油なんてこの異世界にあるわけがない。オークの脂身から“油”を作ったので少し“くせ”が出てしまったが代替品が無いので今回は諦めた。
「さあ、お召し上がりください」
食堂に運び込まれた、リストの料理を前にロイド料理長がルークとリディアに言った。
「分かった、まずは食べて見るか。それからゆっくり説明をしてくれ」
ルークが言い終わると同時位にアリスとリディアが皿に料理を取り始めた。カインは、試作時に一通り食べているので全料理がほぼ、道雄が食べていた物に近い事を知っているので安心して観察している。
「「美味しい(わ)」」
アリスとリディアの声がハモった。アリスは⑥の“卵焼き”を、リディアは②の“マカロニサラダ”を一口食べて感想を言っていた。
「この柔らかい肉は旨いな。ソースと肉汁が混ざるとより旨い」
ルークが③の“ハンバーグ”を食べながら言った。
「オーク肉のパン包みの料理も食感が“ザクザク”としてそして、肉の旨味が強く美味しいですね」
④の“とんかつ”をナイフとフォークで切りながら試食していたランドルフがつぶやく。カイン的にはソースが無いので今一つである。
屋敷にいる上位者で試食を行った結果、“マカロニサラダ”、“ハンバーグ”、“卵焼き”はシールズ辺境伯でも食べたことが無いのではないかとなり、晩餐会のメニューに決定した。
カインは一人、“米”と一緒に食べたいと思うのであった。
本日もお読みいただきありがとうございます。また、誤字のご報告大変ありがとうございます。可能な限りなくすようにいたしますが、今後もご指導、ご鞭撻の程お願いいたします




