道を作ろう8
排水の処理方法に目途が立ったカイン達は、話を進めるために”石畳”化のスケジュール作成を始めた。いくつかの案が出されたが、お昼前と夕方に30分くらいずつ通行止めにして行うように計画した。理由は、30分くらいであれば領民の理解も得られるだろうと。
次にカインがしたことは、リディアとアリスを会議室に連れてきて、”石畳”のデザインを相談した。カインが行うと、屋敷前の道の様に均一の並べ方になってしまう為、面白みに欠けると思ったのだ。それに、2人を味方にしておけば、後々ルークの説得が楽になるとの見込みも合わさった結果だ。
「カイン、どの様なデザインなら作れるの?」
リディアが羽ペンを持ちながらカインに質問してくる。
「基本、何でもいいですがあまり隙間が空くデザインじゃなければ大丈夫ですよ。アリス姉さまそれは”鳥”ですか?」
リディアの質問に答えながら、アリスの書いている絵について質問した。
「これの何処が、”鳥”なのよ! 狼に決まっているでしょう。カイン目が悪いんじゃないの?」
顔を真っ赤にして、描いていた絵を隠していた。
「アリス、後でゆっくり考えましょう。カイン2,3日頂戴ね」
リディアとアリスは、楽しそうにあれこれ話しながら会議室を出ていった。
リディアとアリスが”石畳”のデザインを考えている間に、ルークとランドルフと相談して側溝で集めた雨水の排水方法と処理池の作り方について決めた。
・側溝は、道の両側に直径30㎝位の土管を作り数m置きに穴を開けて雨水を集める。
・側溝を城門手前 20mくらいの所から地中に潜らせて城壁の外に伸ばす。
・地中に潜らせたまま、300m進んだ位置で処理溜池を作りスライム処理を行う。
リディアとアリスのデザインは、作業開始直前になって漸く決定した。
・右側と左側で石の色を変える。右:白っぽく 左:黒っぽく。
・基本は碁盤の目だが、100m置きに草花のデザインを入れていく。
この世界の名前が分からないが、ユリ、ヒマワリ、イチョウの葉、カエデなどとても道が華やかな感じになったと思う。後は、これを実際に作るだけだった。
それから、カインは毎日2回、30分づつ”石畳”を作成してく。段々”石畳”の道が伸びるにしたがって見物人が増えていき、最後完成直前にはかなりの人数が見学していた。子供たちの間には、カインの動作をまねをするのが流行り、カインが呪文を唱え地面に手を付く動作を一緒に行う子供が沢山いた。
”石畳”が最後城門に繋がると、大歓声が上がりお祭り騒ぎになった。終いには、城門から領主の屋敷までカインを先頭にパレードになってしまった。領民が楽しそうだったのでカインは嬉しくなった。これで少しは人の為になったかな、と思いながら屋敷までの道を進んだ。
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カインは、”本通り”の”石畳”化の終了をルークに報告に来ていた。
「カイン、この1か月半ご苦労だった。屋敷から見ていたが領民もとても喜んでいるし素晴らしいな」
「僕も不思議なのですが、なぜ皆はあんなに喜んでいるのですか?」
「それは、”本通り”は、この街の中心で馬車が多く通る。しかし雨がひとたび降ると、水溜まりや轍が出来て汚れるし、馬車は途中で轍にはまってしまうしで苦労していたんだ。
そして、カインが自ら【魔法】を使って領民の為に工事をしてくれているのが、余計嬉しいようだ」
「そうですか、僕も皆の役に立てたようで嬉しいです」
カインは、満面の笑みで答える。
「”石畳”の道なんて王都でも見た事がない。これが話題になって領外からも人が集まると活気が出るかもな」
ルークがとても嬉しそうにしていた。
「そうですね、もっと活気が出る様に、その内に領街の道を全部”石畳”にする事も考えましょうね。父さま」
最後の最後に爆弾発言をするカインだった。




