道を作ろう5
カイン達が屋敷前の道を石畳に変えた日の夕食後、何時も通り家族でお茶を飲んでいる。
「カイン、今日は昨日に引き続きご苦労だった。まさか昨日の今日で終わらせてしまうとは思わなかったぞ」
にこやかな顔して、ルークがカインを労う。
「そうです、今朝裏の井戸の周りを見て感心していたのに、今日はそれ以上なんて。そんなに急がなくてもいいのに」
リディアは少し寂しそうに言った。
「そうよ、なんでカインはポンポン出来ちゃうのよ、ズルイわ」
不機嫌そうに口をとがらせて、アリスが言ってきた。
「いえ、色々試してたら上手く出来ちゃって、途中から夢中になってたらつい、楽しくなっちゃって」
ぽりぽりとホホをかきながらカインが答えた。
「楽しい事は、良い事だけど無理はしちゃだめですよ」
リディアが、優しく釘を刺してくる。
「そうよ、また無理をして怪我したらしょうがないからね」
アリスが乗ってきた。
「ごめんなさい、気を付けます」
カインは女性2人から責められ素直に謝った。
「カイン、まぁまだ時間はあるから次は、ゆっくり対応しよう」
最後は下を向きながらルークが言う。
「父さま、でも余りゆっくりも出来ないのも事実なので、"本通り"は、計画をちゃんと立てて行います。リディア母さまにも、アリス姉さんにも相談したい事がありますし」
カインは、女性陣も巻き込んで進める方針に切り替えた。
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部屋に戻りカインは、これからの事を考えていた。
「まずは、"本通り"を確認して、傾斜や幅、カーブの大きさなどの計測が必要かな、排水を考えると"カント"を付けた方がいいよね、そうしたら、側溝も。うーん、やる事が多いなぁ。
道路工事なんてやった事無いし、まずは現場を見てから考えよー あふぅ、おやすみなさい」
誰に言うでもなく、カインは眠りについた。
翌昼、カインはアリス、ランドルフ、ガーディと4人で街を歩いていた。当初は、3人のはずだったが、昼食時にアリスが「カインだけズルイ」と伝家の宝刀をルークに突きつけた為、ルークが折れた結果だ。父さまよ、今からそれだと嫁に出せないぞ?
ちなみにカインは、直ぐに迷子になるからとアリスと手を大人しく繋いでいるのでアリスは上機嫌だ。
しかし、なんか凄く臭う。鼻を覆う程では無いが、アジアの発展途上国にいるような、人、動物、食べ物、ゴミそしてトイレの臭いが所々で鼻についた。
カイン以外は、慣れているのか普通にしている。街がこんなに臭うのは、どぎゃんかせねば!変な方言で新たな決意をするカインだった。
「ランドルフ? "本通り"の道幅は7mくらいであってる?」
カインが屋敷から全体の半分くらい来た所で訪ねた。
「概ね、合っていますがこの先、城門に向かってカーブを曲がる度に少しづつ広くなって行き、最終的には、8mになります。城門から奥に進むに従い狭くする事により城門からの侵入者の進行を遅くする効果と城門に向かって退避する場合に退避しやすくする2つの効果があります」
「「へー」」
カインとガーディの声が重なる。
「また、城門に向かって緩やかに下っています。全長は約1㎞です」
「うーん、結構長さがあるよね。道幅があるからさすがに1日や2日じゃ終わらないし。通行止めにすると領民の生活に支障が出るだろうし…屋敷前の道と同じにはいかないね」
カインが見渡すと道に沿ってごみ箱や商店の前には軒先販売用の台などが道にはみ出ている場所が多くあった。
「やっぱり、模型を作って作戦を考えた方がいいかもな。ランドルフこの道の正確な地図か測量結果とかないかな?あとは、街の配置とか詳しい人を紹介してもらえる?」
カインは、餅は餅屋にまず聞いてみようと思った。




