道を作ろう
「うん、分かった・・・あっ、ちょっと待って」
カインは、覚えたばかりの【魔法】を思い出していた。
「ガーディ、何か地面を均す事が出来る板か、大きなヘラみたいなもの無いかな?」
カインが身振り手振りで説明をする。
「分かりました、いつも道の穴を埋めた後使っている道具を持ってきます」
ガーディが道具置き場に走って行った。
カインは、轍が出来ている道に手を付けて「・・・マッド!」と唱える。1mx1mで深さを30㎝の範囲が”泥”となった。
「よし、うまくいったかな?」
「カイン様、お待たせしました」
棒の先端に平らな板が付けられた道具を持ってきた。イメージは、アイスホッケーのスティックに地面に対して並行になる様に板がついている感じ?
「じゃあ、ガーディ道を”泥”化したから轍も簡単に均せると思うから”平ら”にしてみて」
「これをカイン様が行われたのですか? 【魔法】をこんな風に使うなんて。良く思いつきますね」
感心しながら、道具を使って轍を均していく。数分で深く出来た轍を均していった。
「これは簡単ですね。すぐ轍が消えます。でも乾くまで時間がかかりそうです」
平らになった”泥”をみてガーディがつぶやく。
「大丈夫だよ。「・・・ドライ!」」
カインが力ある言葉を唱えると”泥”だった道が平らな”土”の道に変わった。
「ほぉーこれは凄い!こんな平らな道を見たことない」
【魔法】によって乾いた土の道を触ったり、叩いたりしていた。
「この部分だけ平らでなんか変だね。どうせなら父さまが帰ってくるまでに全部平らにしちゃう?」
屋敷の門から屋敷の玄関までの道を見渡し、カインは提案した。
「やっちゃいましょうか」
ガーディがその提案に乗ってきた。それから1時間もしないうちに、屋敷の道がきれいに舗装された道へと変わった。
「ガーディありがとう。父さま気付くかな?ちょっと楽しみだね。でも、気付かないかもね」
とても優しい父親だが、馬車の中でも書類とかを読んでいる忙しい父親を思い出していた。
「ありゃ、ガーディ泥だらけだ。一緒に井戸に行ってきれいにしよう」
「はい」
二人は、やり切った清々しい笑顔で”泥”を落としに井戸に向かった。
泥を落として、ガーディと別れ書庫でいつも通りに勉強をしていると。
「カイン? 中にいるか?」
書庫の入り口からルークの声が聞こえた。
「はい、中にいます。どうされました?」
本を置いて、入り口に向かう。
「あの屋敷の道を平らにしたのはカインか?」
少し興奮気味に言ってきた。
「ガーディと二人で、轍が目立ったので平らにしてしまいましたが、ダメでした?」
カインは、ちょっとやりすぎてしまったのかと少しドキドキしながら聞き返した。
「いや、すまん。そんな事はない。屋敷の門をくぐったら振動がなくなって吃驚したくらいだ。良くやってくれた。これは、お駄賃だ」
ルークは、カインの頭をなでて銀貨1枚をくれた。
「ありがとうございます。でもガーディと二人でやったので半分こします」
カインは、ルークに褒められて人の役に立ったと嬉しくなった。
「カインは優しいな。ガーディには別に渡しておくから、それは自分で使いなさい」
カインは、再度「ありがとうございます」と言ってルークと別れた。後日、ガーディからルークから特別手当を貰ったとお礼を言われた。
それから数日後。1日中雨の日がありせっかく平らにした屋敷の道がまた、轍や水たまりのある道に戻ってしまった。
「あーあー、せっかくガーディと頑張ったのに・・・。同じ事をしてもまた雨が降ったら同じになっちゃうしなぁ。何かいい方法無いかな? 昔のヨーロッパってどうなってたんだろう?」
カインはしばらく考え込み、ある事を思い出した。
「そうだ。石畳の道にすればいいんじゃない?」
手をポンと打ってつぶやいた。




