勇者様からのおくりもの
『おかしい? なぜだ? アリス姉さんの為に作ろうと思っただけなのに?』
カインは、目の前にある2,000個の”そろばん”を見て思った。
カインが作った"そろばん"は、商業ギルドに持ち込んで登録された。登録すると、商業ギルドで開発者が登録され、開発した順番が分かる。最初の開発者は類似品が出回った時にロイヤリティを販売者に掛ける事が出来るらしい。そのために、サンローゼ家が作った事を表す”貴章”を追加する作業が増えたのはしょうがない。でも、結構大変だった。
誰が類似品かどうか決めるかで、揉めそうと思って質問したら、判断するのは商業の神様であるヘルメ様との事。神様の判断じゃ誰も流石に文句言わないね。
数日後には、"そろばん"の最初の開発者と認められ、ルークもリディアも凄く喜んでいた。もっとびっくりしたのは、"そろばん"を1つ金貨3枚で売ったらしく、全部で金貨6,000枚になった事だ。
この世界には、銅貨、銀貨、金貨、白金貨があり、それぞれ100枚で繰り上がる。銅貨を10円としたら、金貨1枚が10万円で、金貨6,000枚だと6億円である。そりゃ、喜ぶか。
"そろばん"は、直ぐに完売したらしく追加で1,000個程作った。これでしばらく大丈夫かな?多少は借金も返済が出来たと思うし、予算が無くてできなかったルークの悩みも少し軽くなるかな? カインが追加で作った1,000個の”そろばん”を執務室に持って行くとルークが笑顔で迎えてくれた。
「カイン、今回は本当に助かった。カインのおかげで冬までに城壁の修復や街道を見回る事が出来そうだ。カインへの取り分についてリディアと相談したんだが、カインの望む物をあげようとなった。何が欲しい?」
『道雄であれば、大人なので売り上げの半分を要求するけど、6歳のカインではお金を持っていても使えないし、そうだ』
「はい、父様。カインは今度サツマを焼いたら2本食べたいです」
現在のカインで食べられる甘い物を要求した。
ルークは、目を見開いてびっくりしていたが、しばらくすると。笑いながら
「良いぞ、カイン。良いぞ今度サツマを焼いたら2本食べて良いからな、私はカインが息子で誇らしい」
カインの頭をグリグリ撫でまわしながら言った。
「やったぁ!」
『ふふふ、これで自分で作っているサツマを一度に2本食べれるぞぉ Yes!』
そこまで、純粋ではないカインだった。
---
カインは、ルークの執務室を出て書庫に向かった。”そろばん”作りが忙しく勇者様からの贈り物を受け取っていない事を思い出したからだ。書庫に入って、魔道ランプを灯し”勇者の書”を開く。
「うーん、どこに入っているんだ? 眼鏡なんて入る所ないけどな?」
”勇者の書”持ち上げたり、裏にしたり色々探してみる。背表紙を触っていると何かに引っ掛かり引っ張った。
”コトンッ”と音がして小さい眼鏡?みたいなものが落ちていた。
「この眼鏡、大きさが10㎝くらいしかないけどどうやって使うんだろう?」
小さい眼鏡?の耳に掛けるフレームを開いて掛ける動作をすると、手の中のそれがカインにぴったりな大きさに変化した。
「すごいな、これサイズ調整?の【魔法】が付与されている? 良し掛けてみよう」
眼鏡を掛けたが、特に変わりがない。説明書とかないのか?と考えたら目の前にウィンドウが開いた。
”やあ、贈り物を受け取ってくれてありがとう。使い方を説明する。この【解析の眼鏡】は、気付いた通り【拡大と縮小】の【魔法】を掛けてある。使わない時は、小さく、使用する時はちょうど良い大きさになる。次に【解析】の使い方だが、【解析】したい物を視界に入れて『解析』と思うと目の前にあるようなウィンドウが開き【解析】結果が表示される。君の役に立つ事を願っている。”
カインが最後まで説明を読むとウィンドウが閉じた。
「これで、俺もチートの仲間入りかな?」
異世界生活がまた、楽しくなったと思うカインだった。




